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ネットジャーナル2

光の屈折率を制御するナノサイズの周期構造

―― フォトニック結晶とはどのようなものですか。

写真:工学博士 小柴 正則

小柴 フォトニック結晶は、私たちの日常生活の中でも目にすることができます。例えば、蝶(写真1)の翅やオパールという宝石の、あのきれいな色は、いわゆるブラッグ反射によって、ある特定の波長の光が特定の方向に強く回折あるいは反射されることによって発現するものです。このように、特定の波長の光だけを反射・透過する周期構造を持つものをフォトニック結晶と呼びます。1次元的な周期構造のものはすでに実用化され、誘電体多層膜フィルタなどに利用されていますが、私たちが研究しているのは2次元、3次元の周期構造を持つフォトニック結晶で、これを利用すると、新しい光ファイバや光回路をつくることができます。中でも、フォトニック結晶ファイバは最も実用化が近い技術として研究開発が進んでいます。

蝶の写真
写真1

従来の光ファイバは直径約125マイクロメートル(1マイクロメートルは千分の一ミリメートル)のガラス繊維で、中心部に光を通すコアと呼ばれる部分があり、その周囲に屈折率の異なるクラッド層があります。フォトニック結晶ファイバも基本は同じですが、クラッド領域に複数の空孔が規則的に並んでいます。この空孔が光の波長に応じた周期構造になっていて、空孔の大きさや配列をうまく調整することで光の屈折率を制御することができます。フォトニック結晶ファイバには、コアがガラス製の全反射タイプと、コアが空洞になっているバンドギャップタイプの二種類があり(写真2)、従来のファイバにはない特性をいくつも持っています。

フォトニック結晶ファイバの写真
写真2

光の損失・分散を自在に操るフォトニック結晶ファイバ

―― 具体的にどのような特性を持つのでしょうか。

小柴 最も大きな特徴は、光の損失を極めて小さくでき、また、高速伝送の妨げになる分散を自在にコントロールできるという点です。普通の光ファイバでは伝送できない波長の光を通すことができたり、曲げによる損失をほぼゼロに抑えることができます。バンドギャップタイプのものは、コアが空洞になっていますが、空気中では光の屈折率が小さくなります。光は屈折率の大きなところに閉じこめられる性質があるので、本来ならコア部に光は閉じこめられないはずですが、周囲のクラッド層がフォトニック結晶になっているため、ブラッグ反射の原理で光は外で出ることができません。しかも、地上で光の損失が最も小さいのは空気なので、コア部を通る光はほとんど損失することなく伝搬していきます。つまり、フォトニックバンドギャップファイバは、人類が手にするであろう究極の低損失伝送路になりうるということです。

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