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ネットジャーナル2

――フォトニック結晶ファイバは、従来の光ファイバに比べて、どのような利点があるのでしょうか。

小柴 まず一つは、クラッド層にある空孔のおかげで、曲げに強いという点です。従来の光ファイバは、曲げ半径が20ミリメートル以下になると曲げ損失が急激に増大します。そこで配線の際の曲げ半径の限度が30ミリメートル程度に設定されています。しかし、フォトニック結晶ファイバは曲げ損失が少なく、ほぼ直角に曲げることが可能です(図1/極低曲げ損失グラフ)。したがって、高密度配線や屋内での引き回し・配線が容易になります。

図1/極低曲げ損失グラフ
図1/極低曲げ損失グラフ

二つ目は、単一モードで伝送できる波長領域が従来型より、はるかに広いという点です。従来のファイバは、波長が1.3~1.7マイクロメートルの近赤外領域の目には見えない光を使用していますが、フォトニック結晶ファイバでは、可視光の領域である0.4マイクロメートルくらいまで利用することができます。利用できる帯域が広がれば、まさしく周波数資源の有効利用にもつながります。その他にも非線形性を柔軟に制御できる、高い偏波保持性を実現できるなどの利点があり、素性のよいガラスを素材としていることで、揺らぎのない精密な加工ができます。

こうした特性はフォトニック結晶光回路にも大きなメリットをもたらします。冒頭でもお話ししたように、現在使われている光ファイバは波長分割多重によって1本のファイバに波長の異なる光を多重化して伝送しています。しかし、多重数が多くなると、伝送の入口と出口で光を合分波している光合分波器のサイズが大きくなってしまうという問題があります。これを解決すると考えられているのがフォトニック結晶光回路です。フォトニック結晶を使えば、光の通り道を直角に曲げても光はそのまま損失することなく伝搬するので、従来の集積回路と同程度のサイズの光回路を構成することができます。これは将来の超高集積光回路のプラットフォームとして使えるのではないかと考えられています。

誕生から10年、社会に役立つ技術への展開を

――次世代光ネットワークの主役として期待の高まるフォトニック結晶技術ですが、製品化・実用化の面では、どのような展開が予想されるのでしょうか。

小柴教授

小柴 フォトニック結晶のコンセプトが誕生してから約15年、最初のフォトニック結晶ファイバが誕生してから約10年になります。光通信技術は国の政策の一つでもあり、ナノフォトニクスの分野も産学官が率先して基礎研究を行ってきました。これからは実際に世の中に役立つ製品をつくり出す時期になってきていると思います。すでに、NTTでは全反射タイプであるホーリーファイバの実用化を進め、アクセス系でのサービス開始を目指した準備が進められています。私たちの研究室でも、フォトニック結晶ファイバの実用化を目指した研究フェーズへ移行しつつあります。ファイバだけでなく、フォトニック結晶光回路の開発にも取り組み、波長分割多重に耐えうる超小型光回路の研究開発を進めています。また、フォトニック結晶ファイバは通信以外の分野でも応用の可能性が広がっています。こうした応用分野の広がりも視野に入れつつ、社会に役立つ技術として結実させたいと考えています。

(2006/03/31)

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