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ネットジャーナル3

思考のための道具が人類を進化させる

――繋ぐことを想定していなかったさまざまな知識やサービスをその場で簡単に連携させてしまうというのは、まさにユビキタスの時代のあるべき姿と言えますね。こうした研究開発の背景にはどのようなビジョンが描かれているのでしょうか。

田中 私が志向しているのは「考えたことがその場で実現できる世界」です。現在のコンピュータでは「これとこれを組み合わせて新しいことを実験してみたい」と思ってもすぐには実行できません。プログラムを改良したり、新しいアプリケーションを開発しなければならず、ある程度の時間と労力がかかってしまうからです。新しいソフトが完成するまでは、実験も思考も一時的にストップしてしまうのです。私たちは思考がストップする時間をできるだけ短くし、考えながらツールを作る、できたツールを使ってすぐに新しいことが試せる、そこからまた新しい仮説を立てていく、そんなことが可能になる環境を実現したいと考えています。

ユビキタス知識環境では、Webだけでなく家庭にある電化製品や道路・建物といった環境そのものにも多種多様なコンピュータが組み込まれ、常に何らかの形でサービスを提供している状況が出現します。そういう状況を「パーベイシブ・コンピューティング」といいます。私は、一般の人々も自在なフェデレーションを利用できるパーベイシブ・コンピューティングの実現を目指しています。

――コンピュータの専門家ではない人々にも簡単に新しいソフトウェアやアプリケーションをつくり出せる。そんなことが可能になるとしたら、どんな社会になっていくのでしょうか。

田中 思いついた瞬間にそれが実現できる。あるいは考えるスピードと同じ早さで新しい環境をつくり出し、そこからまた次の発想が生まれてくる。これは、人類が今まで手にしたことのないまったく新しいツールと言えます。思考するための道具が進化し、人間の思考と同じスピードでアイディアを形にしていくことができれば、そこから生まれてくる情報知財もこれまでとはまったく違う新しい形態になってくるはずです。私自身も、IPやIBを使って仕事をするようになり、考え方や発想そのものが大きく変わってきました。新しい道具が人間の思考そのものを変えていくかもしれないのです。これはまさに、人類が「新しい進化の時代」を迎えたと言えるのではないでしょうか。

(2006/06/26)

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