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ネットジャーナル17

ユーザに負担をかけず必要なレベルで認証を行うソフト認証

――具体的にはどのような研究内容なのでしょうか。

工藤 今注目しているのは個人の認証、つまり「この人は誰か?」という問題です。個人を特定する方法はいくつかあり、暗証番号やパスワード、IDカード、最近では指紋や静脈、光彩などのバイオメトリクス認証(生体認証)などが普及しています。バイオメトリクス認証は高精度ではありますが万能ではなく、一度登録すると変更が利かないため情報の扱いには厳重な注意が必要です。

また、認証の目的によっても扱い方が異なってきます。バイオメトリクス認証はセキュリティの確保が目的なので個人を厳密に特定しますが、家庭内や施設内に限定したサービス用であれば、それほど厳密な認証は必要ありません。例えば、家の中でテレビに座っている人を特定し、その人の好みに合った番組を勧めるなどパーソナライズされたサービスを提供する場合です。家庭以外にも図書館などの公共施設、介護やデイサービス施設など、場所や場面、必要度に応じて多様な認証方法を使い分けることが必要になってくると考えられます。

では、パスワードやIDカード、バイオメトリクス認証以外で、個人を特定するための材料として使えるものは何か? 私たちが着目したのは、日常生活の中で知らず知らずのうちにやってしまう仕草や行動、癖などです。しかも、カメラを使わずにセンサーを使って確実に個人を特定する手法を研究しています。そのひとつが、天井に取り付けた赤外線センサーで人の移動を感知・追跡する技術の開発です(解説1)。研究室に出入りする学生を対象にした実験では、2〜3人の学生が4〜5時間室内にいる状態で、ほぼ正確に一人ひとりを追跡・特定できました。

もうひとつは、圧力センサーによる認証(解説2)です。椅子に圧力センサーを取り付け、座る人のクセを読み取ることで認証を行います。座り方には意外と個性が出るもので、被験者がリラックスした状態であれば98%の精度で認証できることがわかりました。座り方の特徴を捉えることで個人認証する技術はおそらく世界初だと思います。

私たちがこだわったのは「カメラを使わない」という点です。防犯カメラなどは得られる情報も多く個人の特定も比較的容易です。しかし、家庭内にまでカメラを持ち込むとユーザに不快感を与える可能性があり、プライバシーの侵害やデータ漏洩などの懸念も生じます。センサーのデータであればその場にいる人間を特定するには十分に機能し、万が一外部に漏れても悪用される危険度は低いので安心です。バイオメトリクス認証のような精度の高いハードな認証に対し、ユーザのプライバシーを尊重しつつ個人を認証する方法として、これらを「ソフト認証」と呼んでいます。

写真:博士(工学)工藤 峰一 教授

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