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ネットジャーナル18

解説

解説1:電子のスピン

「スピン角運動量」のことを略してスピンという。電子のスピンは電子の自転に相当する物理量として説明されることが多いが、電子は素粒子であり、大きさを持っていないので、古典力学的な自転は存在しない。すなわち、古典力学では説明できない物理量であり、原子のような微視的な世界での粒子の運動の法則である量子力学によって初めて理解される物理量である。スピン角運動量はスピン磁気モーメントを伴う。また、物質の強磁性は電子のスピンと深く関わっている。

電子のスピン角運動量 (スピン)
電子のスピン角運動量 (スピン)

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解説2:ハーフメタル

伝導に寄与する電子について、そのスピンの向きが100%揃った強磁性体をハーフメタルと呼ぶ。本研究では、その多くがハーフメタルと理論的に指摘されており、かつ、強磁性転移温度が1000度K程度と室温よりもはるかに大きく、室温で強磁性体として用いすることのできるホイスラー合金に着目して、研究を進めている。具体的には、ホイスラー合金とMgOトンネルバリアの単結晶でエピタキシャルの構造(原子が一層ずつ、格子位置を合わせて、積み重なった層構造)を用いた強磁性トンネル接合デバイスを製作し、そのスピンに依存したトンネル特性を解明するとともに、優れたデバイス特性の実証を進めている。ホイスラー合金とMgOトンネルバリアの単結晶エピタキシャル構造をスピン源とする、半導体へのスピン注入の研究も進めている。

ハーフメタル
ハーフメタル

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解説3:強磁性トンネル接合デバイス

強磁性トンネル接合(MTJ)では、絶縁層を挟む強磁性電極の一方の磁化を固定しておき、他の一方の磁化の向きを制御信号によって(あるいはスピン偏極した電子を流すことによって)2通りに変え、電極間の磁化の相対的な関係を「平行」、「反平行」の2通りに設定する。これがメモリの書き込み動作に相当する。また、一定電流を流して両電極間の電圧を取り出すと、磁化平行の時は電圧が小さく、磁化反平行の時は電圧が大きくなる。これがメモリの読み出し動作に相当する。スピン偏極度の大きな強磁性電極を用いるほど、”0”と”1”の読み出し信号の差が大きくなる。また、電源オフの状態でもスピンの向きを保つことができるため、不揮発のメモリを実現することができる。

強磁性トンネル接合デバイス
強磁性トンネル接合デバイス

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解説4:MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)

現在、ほとんどのパソコンには、HDD(ハードディスクドライブ)と半導体トランジスタを用いたDRAM・SRAMと呼ばれるメモリが使われている。HDDは電源をオフにしても記録が消えない不揮発性のメモリで、現行のパソコンでは電源を入れた後、ハードディスクから必要なファイルをDRAMにコピーするのに時間が掛かっている。DRAMとSRAMは高速動作のメモリであるが、電源をオフにすると内容が消えてしまう揮発性のメモリである。強磁性トンネル接合デバイスを使ったMRAMは、DRAMとHDD/フラッシュメモリの役割の統合を可能にすると考えられ、実際にDRAM並みのメモリ容量を持ったMRAMの実用化が進められている。

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図A: ホイスラー合金を用いた単結晶エピタキシャル構造の強磁性トンネル接合

図A: ホイスラー合金を用いた単結晶エピタキシャル構造の強磁性トンネル接合
図A: ホイスラー合金を用いた単結晶エピタキシャル構造の強磁性トンネル接合

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図B. ホイスラー合金を用いたMTJのデバイス特性

図B. ホイスラー合金を用いたMTJのデバイス特性
図B. ホイスラー合金を用いたMTJのデバイス特性

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