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ネットジャーナル22

会話や表情を感知し、空気を読むロボット

――ロボット分野ではどのような研究がありますか。

博士(情報科学) 小野 哲雄 教授

小野 「空気を読むロボット」というのがあります(解説2)。私たちはコミュニケーションにおいて常に空気を読んでいます。例えば、友だちを見かけたとき、その人が誰かと熱心に話をしていたら、いきなり割り込むことはしませんよね。会話が途切れるタイミングを待ったり、その場では声をかけなかったりします。それと同じことをロボットにさせようというものです。人間の対話の活性度を感知する機能をロボットに実装し、発話量や発言の重なりで活性度を測り、高いときは「会話が弾んでいるから邪魔しないようにしよう」と判断します。

実社会では、二人とも黙っているから活性度が低いとは限りません。深く考え込んでいるのかもしれないからです。逆に口論をしているような時には割って入った方がいい場合もある。現段階ではロボットにそこまで人間心理を読み取ることはできません。そもそも人間の脳の仕組みや思考・行動のメカニズムも完全には解明されておらず、人間のように考え行動するロボットを作ることは、人間そのものを探究することにつながります。そこには情報科学だけでなく脳科学や認知科学、学習科学など多様な分野の融合が必要です。

これまでの人工知能研究は一般的な賢さを追求してきました。人間と同じような賢さです。しかし、人間の脳と同じレベルの人工知能を作るにはまだまだ時間がかかるのではないでしょうか? ではどうするか? 私たちは、今使えそうな技術は、用途を絞る形で社会に埋め込んでいくというアプローチを考えています。完璧ではないけれど人間社会に参加させ、実際に使うことで課題や問題点を発見し、少しずつ精度を高めていく。先述のSiriも音声認識のレベルやコミュニケーションの点では至らない部分も多いのですが、情報検索という限られた用途では使えます。お掃除ロボットのルンバも同様です。時には不具合も起こしますが、部屋をきれいにするという点では十分役立っている。これは、エージェントやロボットが実社会に溶け込んでいる実例といえるでしょう。人間だって完璧に空気が読めるわけでないし、失敗からインスピレーションを得ることもあります。ロボットにも少しぐらい不適合があってもいいのではないでしょうか。完全無欠のロボットが一方的に人間を支援するのではなく、互いに補完し合い、時には人間の創造性を刺激する。そんな関係を築くことが本当の共生ではないかと思います。

(2013/08/01)

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