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ネットジャーナル27

億単位の膨大な計測点群から形状の特徴を抽出・分類・認識する技術の開発

――具体的にはどのような研究が行われているのですか。

博士(工学)金井 理 教授

金井 レーザスキャナで得た情報を施設管理や改修履歴のデータとして活用するためには、解決しなければならない課題がいくつかあります。そのひとつが、1億点を優に超える膨大な計測点群から自動的に3次元モデルを生成するための形状処理技術の開発です。単なる点の集まりでしかないものを、壁や柱、パイプ、ドア、窓といった個々の物体として認識し、それらの空間的な関係性を特定する必要があるのです。現状ではこれらの作業を人間の手で行うことが多く、計測点群から3Dを書き起こすのに1〜2カ月、大型プラントなどでは半年かかる場合もあります。私たちの研究室では、このプロセスを自動で高精度に行うための形状特徴抽出と物体認識の技術を開発しています(解説2)。

工業製品のリバースエンジニアリングと大きく異なるのは、形状特徴抽出で求められた部分点群領域に対しラベル付けを行う点です。例えば、道路の両脇に立っているものの形状を抽出するだけでなく、それらを「電柱」「街灯」「標識」「ポスト」「ガードレール」などに分類する必要があるのです。これらの物体は寸法や形状にバリエーションが多く、高精度で認識するのが難しい部分でもあります。私たちは、個々の形状の特徴を属性として持たせ、さらに電柱の立っている間隔などの配置のルールを導入することで、より高い認識精度を実現しました。また化学プラントの計測点群では、配管系統のもつ形状や接続性の特徴に合わせた認識アルゴリズムを開発し、こちらも極めて高い認識精度を達成しています。また、同じ場所を何度か計測すると、GPSのドリフトの影響などでズレや誤差が生じることがあります。これについても私たちが開発したアルゴリズムで自動的に補正できるようにしました。

こうした研究開発の結果、プラントの配管に特化したもので90%以上、市街地の柱状物体(電柱、街灯、標識)の自動抽出と分類において92%以上の認識率を達成しました。これは、世界的に見ても高精度な結果であり,その成果に対し精密工学会より論文賞を頂いております。しかし、実用レベルで利用するために,企業側は100%に近い認識率を求めていますので,今後も精度を高めていくことが必要です。社会インフラの老朽化問題も切迫していますし、GIS関連企業やプラントの設備メーカーなどからは今すぐにでも使いたいという要望もあるので、それらの企業と共同研究しながら5年後をめどに実用化を目指しています。

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