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ネットジャーナル30

聴覚皮質における神経活動の3次元時空間パターンの計測

――複数の電極を持ったデバイスとはどのようなものですか。

博士(工学)西川 淳 教授

西川 私たちが現在作成しているのは、微細加工技術を活用した横幅3ミリほどの櫛形電極で、これを複数積層することで多点積層櫛形電極を作成します。今回は、4段に積層した64チャンネルの多点電極を試作しました(解説1)。大阪府立産業技術総合研究所、北海道大学情報科学研究科ナノエレクトロニクス研究室(末岡和久教授)、及び京都大学ナノテクノロジーハブ拠点の協力を得て、高度な微細加工を実現することができました。

こうした多点電極を用いて、ラットの聴覚皮質における神経活動の計測を行いました(解説2)。本研究では、音の特定の周波数やタイミングが変化する音を聞かせた時のニューロン応答を複数の電極で同時に計測することで、音の特徴とニューロン応答との関係を推定します。このようにして推定した関係性のモデルを用いると、それまでに聞かせたことのない様々な音に対するニューロンの応答を予測することができるようになります。後は、音に応じて電気刺激を行い、モデルの予測する神経応答を人工的に生成することにより、デバイスによる電気刺激から音を「聞く」ことができるはずです。脳内におけるニューロンの周波数応答特性の研究は20年前から既に行われていますが、近年では時間方向のパターンも考慮にいれた研究が主流になっており、より複雑な音を感じさせることのできる人工聴覚デバイスの開発へと繋がると考えています。

私たちの研究のもう一つの特徴は、多チャンネルで信号増幅(計測)を行い、その計測結果に基づいて何らかの処理を行い、多チャンネルで時空間パターンを持った電気刺激を行うことのできるLSIチップを開発しているという点です(解説3)。㈱エイアールテックの協力を得て、64チャンネルの計測/刺激用LSIチップを5 mm 角の大きさで実現することができました。これをベースにして、聴覚皮質の神経活動をリアルタイムで計測し、その都度計算して刺激を調整する次世代脳神経インタフェースを構築したいと考えています。

このように本研究では、(1)多点電極による多数のニューロン活動の同時計測技術、(2)聴覚皮質神経活動の基礎研究、(3)リアルタイムで計測・処理・刺激ができるLSIチップの開発を同時に行っており、こうした統合的アプローチは世界的に見てもほとんど例がありません。

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