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ネットジャーナル30

次世代脳神経インタフェースの医療分野への応用展開に期待

――次世代脳神経インタフェース技術は今後どのような分野で活用できるとお考えですか。

博士(工学)西川 淳 教授西川 現在は64チャンネルの電極を用いていますが、実は1万点、10万点という規模の電極で刺激/記録する装置も技術的には十分に実現可能です。実際には配線・制御等の問題がありますが、64チャンネルのLSIチップが5ミリ角程度のサイズですから、それを多数並べることで簡単に電極の数を増やすことができます。1万点の時空間パターンでニューロンをリアルタイムに刺激/記録できれば画期的な研究成果が生まれるでしょう。そういう意味でも、私たちの研究はかなり先進的だと言えます。

膨大な数の刺激/計測点を持つマイクロデバイスが実現できると、失われた脳の機能補償や機能拡張などが可能となることが期待されます(解説4)。聴覚に限らず視覚野や運動野、さらにはより高次の脳機能を司る前頭前野などの連合野などにも適用できるはずです。多数のニューロンの活動を計測し、それに何らかの処理を行い、複雑な時空間パターンを持った電気刺激系列を脳に返すことができるわけですから、特定の脳領域の入出力関係を模倣することも不可能ではないと考えています。もし特定の脳領域を損傷してしまっても、こうしたマイクロデバイスを埋め込んで周辺の脳領域と適切に接続すれば、その脳領域の機能を補うことができます。また、健常者に対しても、様々な脳領域に接続して適切な処理を行えば、本来の能力を越える機能をデバイスにより獲得することも可能かもしれません。SFの世界に登場するような技術が、もう少しで手の届くところまで来ていると思います。こういった話は、夢のような話ではありますが、将来的には、医学や脳科学の様々な研究者にこの技術を提供したり、共同研究を行うことを通して、少しずつ実現して行きたいと考えています。

また、神経活動を制御する方法論の面では工学分野で長年培われてきた制御工学を取り入れることができるのではないかと考えています。制御工学では、想定外の状況やノイズなどがあっても安定した挙動を実現する制御則を導出する方法論が整備されています。従来の制御工学では、線形なシステムにしか適用できなかったのですが、近年の非線形制御理論の発達により、より複雑な非線形システムにも適用できるようになってきました。脳は典型的な非線形システムですので、これをうまく活用し、どんな状況でも安定して動作する制御則を導出できれば、ロバストで精緻なデバイスが可能になり、実際に医療分野に応用する場合もより効率的に研究が進められるのではないかと期待しています。神経科学の基礎研究やデバイス開発に加え、制御理論を応用した神経活動の精緻な制御法の確立も、今後研究を深めていきたい分野のひとつです。

(2014/06/23)

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