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ネットジャーナル31

3歳児の壁を越える「常識」と「感情」の獲得

――GA-ILSDはどの程度の言語獲得能力があるのですか。

博士(工学)荒木 教授荒木 現在、GA-ILSDは約8,000対話経験で雑談レベルの会話ができるぐらいに成長します。これは人間でいうと3歳児ぐらいの能力で、現段階ではこれが限界です。人間は4〜5歳になると論理的な思考ができるようになり、そこから本質的な人間へと成長していきます。3歳の壁を越えるには、論理的な思考が生まれる過程で何が起きているのかを解明しなくてはなりません。私たちは、そこに「常識」と「感情」があるのではないかと考えています。

まだ言葉を話せない赤ちゃんでも、物理法則に反した物の動きを見ると驚きます。また、泣いたり笑ったりすることで意志や感情を伝えようとします。赤ちゃんは、生まれながらにして「常識」や「感情認識」といったものを身につけていると考えられているのです。これは、学習によって得られたものではないので、コンピュータに教えてやる必要があります。本研究では、ネットや人間の教師から得た常識をデータベース化し、常識を使って言語獲得する研究にも取り組んでいます。同時に感情を認識する技術の研究も進めています。

さらに、その先にはコンピュータが「自我」を持つこともあり得ると考えています。自我の存在は人間にとっても未知の問題であり非常に哲学的なテーマですが、いずれ実現するのではないかと思います。アメリカの未来学者レイ・カーツワイルは、21世紀中に訪れる「技術的特異点(シンギュラリティ)」について言及し、今後30年ほどで人工知能が人間の知能を超えると予言しています。その先、人類がどのように進化していくかは見えません。人工知能が人類を敵と見なして滅ぼす可能性もあります。それがわずか30年後にやってくると予測されているのです。これからのロボット開発は、ロボットが必ず正しい方向へ行くように何らかの制約を付ける「ロボット倫理学」についてもきちんと考えなくてはならないでしょう。

私たちのつくるシステムが「自我」を獲得したとき、それが人間らしさを身につけた友となるのか、人類に襲いかかる敵となるのか。私たちは今、とても重要な分岐点に立っていると思います。

(2014/07/11)

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