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ネットジャーナル35

光を利用して生体内部を透視・再構成するイメージング技術の開発

――光を応用した医用技術にはどのようなものがありますか。

博士(工学)加藤 助教加藤 私たちが研究しているのは光を使った診断技術です。まず一つが「光透視」。例えば手を見る場合、可視光では表面だけしか見えません。X線を使うと中の骨などを見ることができますが、放射線被ばくなど人体への影響があります。本研究室が着目しているのは近赤外光(波長700〜1200nm)と呼ばれる光で、生体透過性が比較的高く、X線より安全で、MRIなどに比べて比較的簡易な装置で構成できる点が特長です。うまく活用すれば、体内臓器や生体機能の計測を可能にする新しい診断技術に使えると期待されています。 本研究室では、生きたラットの脳を近赤外光で透視し、刺激に対する反応を観察することに成功しています(図a)。人間の腕を透視する実験では、67ミリ(成人の肘ぐらい)の厚さまでは見えることが確認できました(図b)。

近赤外光の波長を変えるといろいろな情報が見えてくることも特徴的です。スペクトルの違いによって動脈と静脈の違いを判別したりすることができます(図c)。さらに、可視光と近赤外光を左右の目で同時に見る装置を作り、手の位置感覚をつかみながら内部の血管を観察することが両目でできるようなシステムも考案しました(動画d)。

二つ目は「光CT」です。X線CTはすでに普及していますが、それと同じように光で断層撮影する技術です。しかし、光はX線のように直進せず生体に吸収または散乱される性質があります。イメージとしては、牛乳のような白濁した溶液中にナイフを入れてもその形状をはっきり捉えることができないという状態です。これを解決するため私たちは光の伝搬や散乱の特性を解析し、断層像を再構成するアルゴリズムを独自に開発。このアルゴリズムを用いたソフトウェアで光透視3次元イメージング技術を開発しました(解説1)。

表層の部分的な断層像を撮影する技術の開発も行っています。ピコ秒からフェムト秒という短いパルス光を照射し、検出される際の時間差を測定して内部の構造をイメージングするものです(解説2)。

生体内部からの光を検知してイメージングする「蛍光イメージング」も研究しています。蛍光薬剤を体内に入れ、見たい箇所を3次元イメージングできるようにする技術です。これも私たちが独自に開発したアルゴリズムを応用しています(図e)。

今後はこれらの技術の精度をさらに上げ、医用的な用途に応じて発展させていきたいと考えています。光を使った診断や計測は、比較的簡易な装置で行うことができ、体への負担も軽減できます。このような技術は日常的な健康管理に役立つのではないかと期待されるので、実用化を目指した研究開発を進めていく予定です。

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