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ネットジャーナル37

現代版火の見櫓を実現する災害用係留型情報気球「InfoBalloon」

――被災地への情報伝達システムとはどのようなものですか。

博士(工学)本村 教授

小野里 私は大阪大学在職中の1995年、阪神・淡路大震災を神戸市東灘区で経験しました。地震の直後から多くの報道機関などのヘリコプターが飛来しましたが、家が倒壊したり停電している被災者はその映像を見ることはできません。それどころかヘリコプターの音ががれきの中から助けを求める人の声をかき消し、救助活動に支障が出ることさえありました。電話やインターネットも通信回線の断絶や停電などで使えず、被災地内での有効な情報手段は避難所の掲示や張り紙でした。最も情報を必要としている被災者が、最も情報を得られない状況に置かれていたのです。これは、2011年に起きた東日本大震災の時もほとんど改善されておらず、被災者の多くが情報から疎外されていました。

この経験から、被災者が必要とする情報は被災地で被災者みずからが獲得し、共有するしかないと考えました。そのヒントとなったのが、かつて集落(地域共同体)の中心部に設けられていた「火の見櫓(ひのみやぐら)」です。火の見櫓は、火事などの災害が起きると半鐘を打ち鳴らして非常事態を地域住民に知らせ、高い場所から見渡して周囲の状況を把握することができます。昭和の初期までは各地で有効に活用されていましたが、市街地に高層ビルが建ち並ぶ現代ではほとんど使われなくなりました。

それに代わる現代版火の見櫓として考案したのがInfoBalloon(インフォバルーン)(解説1)です。InfoBalloonは、ヘリウムガスを入れた気球を地上にロープでつなぎ止めて使用する係留型の気球で、①扁平構造の気球本体部、②平行3本ロープによる係留部、③地上からの高圧直流による電力供給の3点が大きな特徴です。この研究で重要だったのは、余計なものをできるだけ削ぎ落としていくことでした。最少の仕組みで安定した動作が確保できなければいざというとき役に立ちません。コスト・信頼性・使いやすさすべての面においてシンプルかつロバストであることが不可欠なのです。

1997年に初期型のInfoBalloonを開発して以来、毎年改良を続けていますが、その度によりシンプルになっています。2006〜2014年にかけて、せたな町や北大構内でフィールド実験を行い、係留方式の検討や風向風速に対する気球挙動の計測などを行いました(動画1)。

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