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ネットジャーナル40

創薬開発にも貢献する霊長類ゲノムプロジェクト

――他にはどのような研究が行われていますか。

博士(理学) 長田 直樹 准教授

長田 他にあげられるのは霊長類のゲノムプロジェクトです。霊長類には私たちヒトに近い類人猿(チンパンジー、ゴリラ、オランウータン、テナガザル)と、もう少し系統関係が遠い旧世界ザル(主にアジア・アフリカ大陸に生息)、新世界ザル(主に中央・南アメリカ大陸に生息)などに分かれます。本研究では、旧世界ザルであるアカゲザル、カニクイザル、アフリカミドリザルなどのゲノム配列解読(解説3)に取り組んでいます。

これらのサルは遺伝的多様性が大きく、同じ島に生息する同じ種のサルでもDNAレベルで0.3〜0.4%ほどの個体差があります。このようなサルとヒトとの遺伝的多様性の違いを説明するのには、前述の太田先生のほぼ中立説が非常に有効で、進化の過程でゲノムの違いがどのように起こり、どのように種の中に広まっていったかを解明する手がかりとなっています。

旧世界ザルは前臨床試験の対象として、医薬品の研究開発にも利用されているのですが、サルの産地によって治験の結果に違いが出ることがあります。こうした違いもゲノムを解析することでメカニズムを解明し、副作用や効果のより良い予測につなげることができるのではないかと考えています。

――今後、ゲノムの解読によりどのようなことが解明できるのでしょうか。

長田 進化というと、数百万年から数億年前という過去の出来事のように思えますが、現在の生物の形態や生態は過去の歴史の結果として存在しています。また、現存する集団の遺伝的多様性は、今まさに起こっている進化の過程を反映しているともいえます.遺伝のメカニズムには分からないことがまだたくさんありますが、それが進化の歴史の結果であることは確かです。ゲノムを解読することでその歴史を明らかにし、それが起こった原因を推定することは、この研究の目的のひとつでもあります。

近い将来、さらに発展した第3世代シークエンサーが登場し、ヒトやサルだけでなくさまざまな野生生物のゲノムが特定されると予想されています。動物や植物の遺伝子型と生態との関わりが解明されれば、進化の謎に迫ることができるのではないかと思います。また、ビッグデータの解析が現在盛んに行われていることに象徴されるように、将来的には、大規模なゲノムデータや環境データから生物の表現型を予測し、その情報を用いた研究が可能になるのではないかと考えています。北海道大学は生態学の研究も盛んですので、それらの研究者と協力しながら、謎の解明に取り組んでいきたいですね。

(2015/06/17)

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