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電磁界数値解析をベースに画期的な技術開発
国家プロジェクトから教育目的まで多彩な活動

写真:博士(工学)野口 聡

情報科学研究科 システム情報科学専攻
システム融合学講座  電磁工学研究室・准教授

博士(工学)野口 聡

プロフィール

1994年3月早稲田大学理工学部電気工学科卒業。1996年3月早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了。1997年4月から日本学術振興会特別研究員DC2、1998年5月からMassachusetts Institute of Technology、Visiting Scientist、1999年3月早稲田大学大学院理工学研究科博士後期課程修了、博士(工学)。1999年4月広島大学大学院工学研究科助手を経て、2004年4月より北海道大学大学院情報科学研究科准教授。IEEE(米国電気電子学会)、電気学会、低温工学・超電導学会、シミュレーション学会、日本AEM学会、ICS(International Compumag Society)所属。

電磁界数値解析をベースに多彩な分野へ

先生の主な研究テーマとこれまでの経歴をお聞かせください。

野口 早稲田大学工学部電気工学科で学んでいた頃は超伝導の研究をしていました。その後、広島大学で電磁界数値解析の研究に携わり、幅広い分野での研究・開発に関わってきました。行く先々で培った知識や技術をベースに応用範囲を広げてきた感じです。ですから研究テーマも多岐にわたり、新しい電磁エネルギーシステムの開発や既存システムの高効率化、新型風力発電機の開発とそれに伴う電力システムの構築、サイクロン型加速器の設計・開発、磁気分離システムの設計・開発など、エネルギー分野から医療、電気機器開発まで非常に幅広くなっています。

近年、電磁界解析技術はコンピュータの進化とともに飛躍的な発展を遂げ、数多くの解析ソフトウェアが市販されています。しかし、対象物や研究内容によっては市販のものでは対応しきれず、独自の工夫が必要な場合もあります。私が携わっているプロジェクトもそのようなケースが多く、電磁界数値解析の高精度化・高速化、解析用自動メッシュ生成技術の開発、電磁界数値解析結果の可視化といった研究にもつながっています。

また、私の研究にはアナリシス(Analysis)とシンセシス(Synthesis)の技術が重要な役割を担っています。アナリシスとは電気機器などの設計において実体から機能や属性、性能を明らかにする作業を指します。シンセシスはその逆に、求められる機能・属性・性能からそれを実現する作業です。私が関わっているプロジェクトの多くは5〜10年後の将来を見すえた新しい技術の開発・創出を目指したものであり、基礎研究から各種パーツの設計・開発、最終的な製品化までを視野にいれた国家プロジェクト級の研究です。莫大な予算をかけて進められるプロジェクトであり、慎重かつ迅速に研究を行うには部分的・全体的なアナリシスとシンセシスを何度も繰り返すことが重要なのです。

高磁場MRIを開発する大規模プロジェクトに参画

現在取り組んでいるプロジェクトについて教えてください。

博士(工学)野口 聡

野口 高磁場MRI用高温超伝導マグネットの開発です。日本ではすでに医療用MRIが普及していますが、現在使われているMRIは主に1.5テスラ(磁束密度の単位)の磁場強度を発生させる超伝導コイルを使用しています。磁場強度をさらに高めると生体からの信号を高い感度で捉えることができ、より高画質で精細な画像を得ることできます。こうした高磁場MRIは、従来は困難であった脳の微細構造や微小血管の描出を可能にし、がんや脳卒中、てんかん、アルツハイマー病などの早期発見、正確な診断、適切な治療に役立つと期待されています。現在、7テスラ程度の高磁場MRIがすでに開発されていますが、日本はもとより世界でも導入実績はまだ少なく医療分野での臨床応用も進んでいません。

私たちが取り組んでいるのは、7テスラよりもっと高い10テスラ級(9.4テスラ)の高磁場MRI用高温超伝導マグネットの開発(解説1)です。

現在実用化している超伝導機器は、液体ヘリウム温度(-269℃)で超伝導となる低温超伝導材料を利用しているものがほとんどですが、低温超伝導を用いた高磁場MRI用磁石は装置が巨大になってしまいます。また日本ではヘリウムを輸入に頼っており、資源枯渇が懸念されるヘリウムの使用量をいかに減らすかという問題も重要です。

本プロジェクトでは、磁石に高電流密度・高強度が特徴のREBCO線材(希土類系酸化物超電導:REBa 2 Cu 3 O 7-x)を用い、小型化・軽量化を図るとともに、ヘリウムを使用しないことを目標としています。(平成25年度より経済産業省の産業技術研究開発委託費「高温超伝導コイル基盤技術開発プログラム<高磁場コイルシステムの研究開発>」を通じて実施)

また、高温超伝導コイルを用いたスケルトン・サイクロトロン電磁石の設計研究にも取り組んでいます。サイクロトロンとは加速器の一種で、原子核の人工破壊や放射性同位体の製造などに利用されています。鉄心と常伝導コイル電磁石を組み合わせた従来のAVFサイクロトロンは磁束密度に限界があり、高エネルギー化やコンパクト化が困難であるなどの課題があります。これに対し、スケルトン・サイクロトロンはでは鉄心を極力用いず空芯化することによって磁場強度の再現性が高まり、電磁石の運転を容易にします。このプロジェクトでは安定性・信頼性に優れた小型サイクロトロンを実現するため、高温超伝導コイルを用いた空芯型のスケルトン・サイクロトロンの設計と要素開発(解説2)を目指しています。

他にもNMR(Nuclear Magnetic Resonance:核磁気共鳴)装置開発などのプロジェクトや共同研究に参画しており、基礎研究から製品化までさまざまな角度から研究開発に関わっています。新しい技術や装置を開発する研究は先が見えないこともありますが、未知の分野にチャレンジするという面白さがありますね。

電磁界数値解析の面白さを学生に伝えたい

学生や若手研究者に期待することはありますか。

博士(工学)野口 聡

野口 電磁気は私たちの生活のあらゆる面で使われている非常に身近な技術なのですが、目に見えず体感することができません。複雑で高度な数式を扱うため工学系の学生にも敬遠されがちなのが悩みの種です。そこで、15年ほど前から電磁気を可視化する研究も続けています。その一つが拡張現実(AR)を利用した3次元磁場可視化手法の開発です(解説3)。磁石に見立てたマーカーを手に持ち、ウェブカメラで撮影した映像をもとに磁場の分布をコンピュータで計算し、ヘッドマウントディスプレイに投影します。磁場の様子をリアルタイムに観察することができるので電磁気を身近に感じられます。こうしたツールを用いて学生の興味を喚起し、この分野に進んでくれる学生が一人でも増えることを期待しています。

解説

解説1:高磁場MRI用高温超伝導マグネットの開発

参考文献:Project Overview of HTS Magnet for Ultra-high-field MRI System

解説2:高温超伝導コイルを用いたスケルトン・サイクロトロン電磁石の設計研究

参考文献:PDFはこちら

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解説3:拡張現実感技術を利用した3次元磁場可視化手法の一検討

参考文献:Real Time Simulation Method of Magnetic Field for Visualization System With Augmented Reality Technology