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ネットジャーナル42

高磁場MRIを開発する大規模プロジェクトに参画

――現在取り組んでいるプロジェクトについて教えてください。

博士(工学)野口 聡 教授

野口 高磁場MRI用高温超伝導マグネットの開発です。日本ではすでに医療用MRIが普及していますが、現在使われているMRIは主に1.5テスラ(磁束密度の単位)の磁場強度を発生させる超伝導コイルを使用しています。磁場強度をさらに高めると生体からの信号を高い感度で捉えることができ、より高画質で精細な画像を得ることできます。こうした高磁場MRIは、従来は困難であった脳の微細構造や微小血管の描出を可能にし、がんや脳卒中、てんかん、アルツハイマー病などの早期発見、正確な診断、適切な治療に役立つと期待されています。現在、7テスラ程度の高磁場MRIがすでに開発されていますが、日本はもとより世界でも導入実績はまだ少なく医療分野での臨床応用も進んでいません。

私たちが取り組んでいるのは、7テスラよりもっと高い10テスラ級(9.4テスラ)の高磁場MRI用高温超伝導マグネットの開発(解説1)です。

現在実用化している超伝導機器は、液体ヘリウム温度(-269℃)で超伝導となる低温超伝導材料を利用しているものがほとんどですが、低温超伝導を用いた高磁場MRI用磁石は装置が巨大になってしまいます。また日本ではヘリウムを輸入に頼っており、資源枯渇が懸念されるヘリウムの使用量をいかに減らすかという問題も重要です。

本プロジェクトでは、磁石に高電流密度・高強度が特徴のREBCO線材(希土類系酸化物超電導:REBa 2 Cu 3 O 7-x)を用い、小型化・軽量化を図るとともに、ヘリウムを使用しないことを目標としています。(平成25年度より経済産業省の産業技術研究開発委託費「高温超伝導コイル基盤技術開発プログラム<高磁場コイルシステムの研究開発>」を通じて実施)

また、高温超伝導コイルを用いたスケルトン・サイクロトロン電磁石の設計研究にも取り組んでいます。サイクロトロンとは加速器の一種で、原子核の人工破壊や放射性同位体の製造などに利用されています。鉄心と常伝導コイル電磁石を組み合わせた従来のAVFサイクロトロンは磁束密度に限界があり、高エネルギー化やコンパクト化が困難であるなどの課題があります。これに対し、スケルトン・サイクロトロンはでは鉄心を極力用いず空芯化することによって磁場強度の再現性が高まり、電磁石の運転を容易にします。このプロジェクトでは安定性・信頼性に優れた小型サイクロトロンを実現するため、高温超伝導コイルを用いた空芯型のスケルトン・サイクロトロンの設計と要素開発(解説2)を目指しています。

他にもNMR(Nuclear Magnetic Resonance:核磁気共鳴)装置開発などのプロジェクトや共同研究に参画しており、基礎研究から製品化までさまざまな角度から研究開発に関わっています。新しい技術や装置を開発する研究は先が見えないこともありますが、未知の分野にチャレンジするという面白さがありますね。

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