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ネットジャーナル44

排除から有効活用への大胆な転換
生物に学ぶ「ゆらぎ」の利用法

写真:博士(工学)葛西 誠也 教授

情報科学研究科 情報エレクトロニクス専攻
量子情報エレクトロニクス講座  量子知能デバイス研究室・教授
博士(工学) 葛西 誠也

プロフィール

1992年北海道大学工学部電気工学科卒業。1994年同大学院工学研究科電気工学専攻修士課程修了、1997年同博士課程修了。1997年〜1999年NEC 光・超高周波デバイス研究所勤務。1999年北海道大学大学院工学研究科助手、2001年〜2004年北海道大学大学院工学研究科および量子集積エレクトロニクス研究センター助教授、2004年北海道大学大学院情報科学研究科および量子集積エレクトロニクス研究センター准教授、2014年より現職。この間2007年〜2011年JST さきがけ「革新的次世代デバイスを目指す材料とプロセス」研究者(兼任)、2009年〜2010年マレーシア工科大学客員教授。IEEE、応用物理学会、電子情報通信学会、日本化学会所属。

 

邪魔だと思われていた「ゆらぎ」を逆に利用する

――量子知能デバイス研究室で取り組んでいるテーマはどのようなものですか。

葛西 研究室の主な研究テーマは、情報やエネルギーに関わる生物の機能や特徴を半導体電子デバイスを通して再現し、電子工学的に使えるようにすることです。キーワードとなるのは「ゆらぎ」。これまであらゆる電子機器は雑音、ふらつき、ばらつきといったゆらぎを排除することに力を注いできました。しかし、昨今はゆらぎの影響がますます大きくなり排除しきれなくなってきています。例えばハイブリッドカーでは、モーターを駆動するために大電流・大電圧を頻繁にON/OFFするのですが、このときに大きな電磁雑音が車内で発生します。この雑音が車内のさまざまな電子回路に影響をおよぼします。近年開発が進められている自動運転技術などはさまざまな操作を緻密に電子制御するため、こうしたシステムに悪影響を与えるような雑音はやっかいな問題になります。

また、コンピュータやスマートフォンに搭載されているマイクロプロセッサもゆらぎに大変苦慮しています。一度の充電で長時間使えるようにするにはプロセッサの駆動電圧を下げる必要がありますが、電圧を下げると内部信号が小さくなるため相対的に雑音の影響が大きくなりエラーを起こします。エラーを起こさないようにするには電圧を大きくしなければならず、消費電力を減らすことが難しいのです。

私たちの研究室では、こうしたゆらぎと共存したり逆に利用したりすることを目指しています。そのお手本となるのが生物です。生物はゆらぎが大きい自然環境のなかで生き延びるために長い歳月をかけてさまざまな能力を獲得しています。例えばザリガニが水中で敵を察知するような能力もゆらぎを利用しています。こうした能力の原理を学び、電子的に再現し工学的に使えるようにするのが研究テーマです。生物のシステムの基本要素をさぐり、その特性(しばしば単純な非線形関数)をナノデバイスで再現し、これを組み合わせることで生物の機能を実現することに取り組んでいます。

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