HOME > 研究活動・産学官連携 > ネットジャーナル > ネットジャーナル48

ネットジャーナル49

人間の目と同じように明暗のバランスを補正する画像処理システム

――機械学習にはどのような可能性があるのでしょうか。

博士(工学)池辺 将之

池辺 「感性」をも含む知的情報処理システムがあげられます。私たち人間が見たものの明暗をバランスよく捉えるように、画面の各部分の輝度を補正する画像処理システムの研究です。デジタルカメラで風景の写真を撮った場合、カメラに搭載されているCCDやCMOSなどのイメージセンサでは、一度に捉えることのできる光の範囲DR(Dynamic Range:ダイナミックレンジ)が狭いため、画像に白とびや黒つぶれが生じてしまいます(写真2)。この現象を補正するために画像処理を行うのですが、現在の技術では単一の輝度特性を用いた変換(グローバルな画像補正手法)を行うのが一般的です。グローバルな補正では、暗い部分を引き上げる補正関数を画像全体もしくはある程度広い範囲に適用するため、逆に輝度が高くなりすぎる部分がでてしまいます(白とびの状態)。

 

私たちの研究では、大局(グローバル)、局所(ローカル)ごとの特徴に合わせた2次元輝度補正する手法を提案しています(解説2)。この手法の画期的な部分は、画素の一つ一つに対して適切な輝度補正関数を設定し、暗い部分の輝度を上げる補正と明るい部分の輝度を下げる補正を同時に行うことにあります(写真2)。

さらに画像補正に必要な演算回数を減らし、処理を高速化するアルゴリズムも開発しています。これにより、200万画素の処理を0.3秒でソフト処理することが可能になりました。

冒頭でもお話しましたが、これらの研究は、各種センサによる測定、アナログからデジタルへの変換、デジタル信号の処理、人が見たり聞いたりして楽しむための出力までの一連の流れをすべて網羅しており、それぞれにプロセスでデバイスや回路、アルゴリズムなどの高度化・効率化・省電力化を目指しています。狭い領域に絞った研究テーマもあるため、研究内容はバラエティに富み多様な側面を持っていますが、私がそれらの技術を使って実現したいのは、人間の感情に訴えかける人工知能(AI)の開発です。前述の画像処理技術を例にとると、人工知能が使う人の好みや個性を学習したり、その日の気分を読み取るなどして最適な処理結果を自動的に導き出し、生活をサポートする。そのようなことができるようになれば、人工知能に対して「ありがとう」という感情が自然に生まれるかもしれません。そのような人工知能の実現を目指したいと考えています。

(2016/08/01)

ページの先頭へ