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ネットジャーナル50

――それはどのような仕組みですか。

博士(理学) 雲林院 宏

表面増強ラマン分光は、2つの近接した金属ナノ粒子に光を当てると粒子間にプラズモンが局在化し、そこで散乱する振動スペクトルの特長から分子の状態を知ることができます。しかし、従来の表面増強ラマン分光では、測定したい箇所に金属ナノ粒子を配置することが難しいという問題があります。それに対し、私たちの研究チームは、均一な結晶構造を持つ銀のナノワイヤーをプラズモンの導波路とし、ナノワイヤー上で伝搬型プラズモンを励起して光エネルギーを長距離に渡って伝搬させています。これにより、レーザー集光点から10マイクロミリメートル以上離れた位置でも表面増強ラマン分光が可能になり、(1)回折限界を破ることができ、(2)対象試料を直接レーザー光で照射する必要がなくなります。そのため、導波路もしくは光による試料の損傷を最小限に抑えることができます(図1)。

また、プローブの先端に取り付けたナノワイヤーは50〜80ナノメートルという非常に細いものです。従来のプローブは細胞表面を押したり、中に差し込んだりすると細胞自体に大きなダメージを与えてしまうのですが、私たちのナノワイヤーは細胞に差し込んでもダメージを与えることはほとんどありません。実際、ルーヴァン大学で行った実験では、ナノワイヤーを10〜30分間差し込んだままにしても影響はなく、抜いた後も元の状態を保ち、正常に分化することも確認しています。細胞を生きたままの状態で観測・操作し、その後の反応も生きたまま長期間観察できるというのは、これまでにない画期的な技術だと自負しています。

ルーヴァン大学ではこうした金属ナノワイヤーのプラズモン導波を活用した表面増強ラマン分光技術の研究を行い、北海道大学ではそれらを実社会に役立てるための技術開発や応用研究を行っています。

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