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パワーエレクトロニクス機器の設計・開発に重要な
電力変換器・制御技術の研究開発

写真:博士(工学) 小笠原 悟司

情報科学研究科 システム情報科学専攻
システム融合学講座  電気エネルギー変換研究室・教授

博士(工学)小笠原 悟司

プロフィール

1983年3月 長岡技術科学大学大学院電気電子システム工学専攻修士課程修了。同年4月より長岡技術科学大学工学部電気系助手、1992年 岡山大学工学部電気電子工学科助手、1993年 同助教授。2003年4月より宇都宮大学工学部電気電子工学科教授。2007年より北海道大学大学院情報科学研究科教授。

インバータとモータの高度化により
パワーエレクトロニクス機器の電力変換効率を向上

電気エネルギー変換研究室ではどのような研究を行っているのですか。

小笠原 当研究室では、半導体デバイスのスイッチング動作を基本に、電気エネルギーの形態(電圧・電流・周波数)を必要な形に変換したり、高速・高精度に制御する技術の研究開発を行っています。大きく分けて、パワーエレクトロニクス班とモータ班の二つがあり、パワーエレクトロニクス班では主にインバータやコンバータの研究を、モータ班ではモータそのもの技術開発を手がけているのですが、近年は二つが融合した研究領域になってきています。なぜかというと、モータの回転数をコントロールするには必ずインバータが必要であり、インバータの性能とモータの性能は常に連動しているからです。さらに、モータには多様な種類や使用目的があり、それに合わせたインバータを開発することも重要な役割となっています。

半導体デバイスのスイッチングは基本的にエネルギーを消費しません。しかし、現実的には半導体で完全なスイッチを作ることはできず、スイッチングの過程でいくらかのロスが出ます。現在、インバータをはじめとするパワーエレクトロニクス機器の電力変換効率は95%以上の高い数値を実現していますが、さらに損失を減らし変換効率を100%に近づけることはエレクトロニクス産業にとって非常に重要なテーマになります。

現在、注目しているのはデバイスの素材の進化です。従来の電力変換デバイスにはシリコンが使われているのですが、最近になってシリコンカーバイド(炭化ケイ素:SiC)やガリウムナイトライド(窒化ガリウム:GaN)といった新しい半導体材料を使ったデバイスが研究されていて、近い将来それらの素材に移行していくのではないかと言われています。

これらの新素材を使うとスイッチングの際にオンとオフの中間的な状態になる時間がより少なく(ナノ秒単位でひと桁近く短く)なり、その分損失が減ることになります。そうなると、今までのインバータをより高精度・小型化できる可能性が出てきます。私たちの研究室では、そのようなデバイスを効率よく使いこなせるような技術の研究に取り組んでいます。

ノイズ発生のメカニズムを解明し
高周波数のEMI対策に役立つ技術を開発

デバイスを使いこなす技術とはどのようなものですか。

博士(工学) 小笠原 悟司

小笠原 前述のように、新しい素材を用いたデバイスは電力変換効率が高くなり、損失を減少させることができます、しかし同時に変換時に発生するノイズが増大し、ノイズによる電磁妨害(Electro-Magnetic Interference:EMI)が発生することがあります。ノイズには、(1)周波数が低く(150キロヘルツ〜30メガヘルツ程度)、電力ケーブルを伝わる電導性ノイズと、(2)周波数が高く(30メガヘルツ以上)、電波となって放出される放射性ノイズがあり、スイッチングスピードが速くなるほど周波数は高くなります。

従来は、スイッチングのスピードがさほど速くなかったので電波となって放射されるノイズが問題視されることはほとんどありませんでしたが、SiCやGaNなどの素材を使ったデバイスではノイズの周波数が10倍程度高くなるため、放射性ノイズの影響が大きくなると考えられます。本研究室では、EMI対策に使われる機器のアクティブフィルターの一方式として出力コモンモード電圧を抑制し、漏れ電流を低減するアクティブコモンノイズキャンセラ(ACC)の性能向上に関する研究などを行っています(解説1)。技術的にはまだ課題が残されていますが、実験では100メガヘルツまでの周波数にも対応できることが分かっており、有効な手法であると期待しています。

また、業務用エアコンなど比較的大きな機器の場合、インバータのノイズが室内機・室外機の筐体に共鳴して発生する放射性EMIについての検証も行いました(解説2)。こうした現象の発生メカニズムを解明することも、パワーエレクトロニクス開発に不可欠なテーマになると思います。

企業との共同研究で設計・開発に必要な知見を蓄積
高度な実験環境で学生の教育にも貢献

ノイズ発生のメカニズムやEMI対策技術の研究にはどのようなことが期待されているのでしょうか。

博士(工学)小笠原 悟司

小笠原 今までの半導体デバイスでは数メガヘルツ程度のノイズについて考えれば良かったのですが、新しい素材が出てきたことで100メガヘルツの放射性ノイズが発生する可能性があることが分かってきました。実際にそれが使われた場合にどのようなことが起きるかをシミュレーションし、ノイズ発生のメカニズムをモデリングすることは、設計や開発の段階で非常に重要な要素になります。私たちは、その中でもメカニズムの解明や科学的な裏付け・検証といった学術的な面をしっかり押さえる役割を担っていると思います。

産業界に近い領域ですが、一般の人の目に触れるものではなく、どちらかというと目立たない分野です。パワーエレクトロニクス機器から発生するノイズを研究している機関は国内でもあまり多くありません。しかし、電気機器メーカーなど企業との共同研究が多く、企業の研究施設を活用できる点では学生にとって良い教育環境を提供できます。実機を使って実験ができると、シミュレーションをする場合にもその経験が活かせます。研究を続けながら随時論文の執筆・発表できる機会もあり、研究者としての成長にも貢献できると思います。

解説

解説1:SVPWMインバータに適応可能な改良型アクティブコモンノイズキャンセラの実験的検証

ケーブルからの放射ノイズを抑制可能なアクティブコモンフィルタの実験的検証術

(論文リンク)

解説2:パワーエレクトロニクス機器が発生する放射性EMIの一考察

(論文リンク)