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「知の泉」から生まれる新しいアイディアが
次世代の光通信技術を創出する

写真:博士(工学) 藤澤 剛

情報科学研究科 メディアネットワーク専攻
情報通信システム学講座  情報通信フォトニクス研究室・准教授

博士(工学)藤澤 剛

プロフィール

2001年北海道大学工学部電子工学科卒、2003年同大学院工学研究科電子情報工学専攻修士課程修了。2005年同博士課程後期修了。2003年日本学術振興会特別研究員(DC1)。2006年日本電信電話株式会社NTTフォトニクス研究所勤務を経て、2014年より北海道大学大学院情報科学研究科准教授に就任。

送信、受信、伝送のリンクをトータルに研究

情報通信フォトニクス研究室ではどのような研究をしているのですか。

藤澤 光通信システム、通信用光デバイス、光デバイス設計技術などの研究開発を行っています。通信ネットワークは送信機、受信機、伝送路による「リンク」で構築されていますが、本研究室では光通信のリンクをトータルに捉え、デバイスの材料から光ファイバを用いたシステムまで、幅広く手がけているのが特徴です。

その背景としては、スマートフォンやクラウド技術の発展に伴い、ネットワークのバックボーンを支える光通信伝送容量の増大があげられます。特に要求が増えているのは短距離系の通信で、データセンターなど距離の短い通信でも光通信が使われるようになっています。短距離系の光通信では、経済性、伝送容量、低消費電力といった特性が求められ、長距離系とは異なるデバイスが必要です。
特に、非常に短い距離の光通信である光インタコネクトと呼ばれる領域では、伝送路自体も従来の光ファイバから変わりうる可能性があり、送信、受信、伝送路すべてを含めたリンクごとの最適な構成が盛んに議論されています。

また、長距離系の通信でも、主に使用されているシングルモード光ファイバの伝送容量に物理的限界が見え始めており、従来とは異なる新しい発想の伝送容量増大方法が求められています。

そういった状況では、送信機や受信機などのデバイス単体、あるいは伝送路単体で考えるのではなく、リンク全体を俯瞰する立場から考えることが重要になります。さらに、材料とデバイスの間、デバイスと伝送路の間といったように、複数の領域にまたがる部分は新しいアイディアの出やすいところでもあり、そういう部分を積極的に狙っています。

現在、研究室では発光素子・光変調器・多重化素子などのナノフォトニクスを用いた次世代光デバイスの開発から、マルチコア・マルチモードの光ファイバシステムまでをトータルに手がけ、さらに最適化設計技術を用いた光通信システム設計技術の研究開発に取り組んでおり、伸び続ける伝送容量増大の需要に応える新しい光デバイスの創出を目指しています。

最適化設計技術から生まれた次世代の光デバイス

具体的な研究テーマについてお聞かせください。

博士(工学) 藤澤 剛

藤澤 材料設計の分野では、アクティブデバイス(レーザー、変調器など)の研究を行っています。光源や変調器などの光アクティブデバイスの研究開発には、材料(量子構造)の持つ光の吸収や屈折率変化の把握が極めて重要ですが、従来の理論計算方法(フェルミの黄金則)では、実験結果から求める、フィッティングパラメータを使わなくてはなりませんでした。一部の実験結果を後付けて説明するのであればこれでも良いのですが、物性の詳細な解析、さらに最も重要なゼロ次の時点での設計には十分ではありませんでした。

そこで、より定量的な設計を可能にするため、多粒子系の量子力学を使った解析法を開発しました。これによりフィッティングパラメータを使わずに、量子構造光学特性を算出することができ、最近、この技術をⅣ族系材料(シリコン、ゲルマニウムなど)の半導体量子構造にも拡張しました(解説1)。Ⅳ族系の材料を使ったアクティブデバイスは、近年注目を集めているシリコンフォトニクスにつながる技術であり、全く新しいチップが生まれる可能性も高いと期待しています。

その他にはどのような研究成果がありますか。

藤澤 デバイスの分野では、最適化アルゴリズムを利用した光デバイスの開発に取り組んでいます。モード分割多重技術では、1本のファイバで、複数の異なるモードを伝送するために、異なるモードを一つに合波したり、分波するモード合分波器が必要となります。このモード合分波器を実現する光回路を考えるうえで、コアの形状によって透過率や損失の分布が変わってくるのですが、どの形状が最も効率的なのかを設計の段階で抽出するのは非常に困難です。

私たちは、波面整合(WFM)法による自動最適設計技術を開発しました(解説2)。自動最適設計技術によって導き出されたコアの形状は、通常では考えつかない奇妙な形のものがあります。人間の発想を超えた斬新なデザインを得ることで、さらにそこから新しいアイディアが生まれます。そのように、人間の手では到達することのできないものをいかにして創出するかということが、私の研究テーマのひとつでもあります。

また、ボード間またはチップ間・チップ内通信に使われる導波路の開発も進めています。こちらでは、クロソイド曲線(曲率が連続的に変化する曲線)を取り入れた超低損失小型曲げ導波路の開発と回路光学特性の評価を行いました(解説3)。90度のカーブの中に挿入するクロソイド曲線の割合に最適値が存在することを発見し、そこでは曲げ損失が通常円弧の場合に比べて10分の1になることを理論的に予測し、実証しました。

モード間結合を考慮可能な光伝送シミュレーション技術

光ファイバシステムの分野ではどのような研究成果がありますか。

博士(工学) 藤澤 剛

藤澤 これもモード分割多重技術の話になるのですが、光ファイバにおける伝送シミュレーション技術を開発しています。モード分割多重では、異なる光のモードに別々の情報チャネルを割り当て、モード同士を完全に分けて伝送し、受信側でも個別に受信します。しかし現実には伝送路の中で各モードごとに混ざりあってしまう現象(クロストーク)が起きるため、それを解きほぐす受信技術が必要となることが多いです。

数年前に米国のベル研究所が、これを逆手に取り、むしろ伝送路の中でモードをごちゃまぜにしてしまうやり方(強結合)を提案しました。強結合ファイバを用いたモード分割多重伝送では、モードを切り離すことに意味はなく、むしろ適度に混ぜ合わせることが望ましいのです。我々の研究室では、こうした強結合伝送の伝送シミュレーション技術を開発しました(解説4)。

こうした、伝送シミュレーション技術から逆に、そのシステムに適したデバイス構成を考えることもできるようになります。例えば、この強結合伝送ではファイバ内でモードが強く結合するので、モードを合分波する際に、異なるモードを低クロストークで分けることなく、混ぜてしまっても良い、ということになります。そのようなコンセプトのもと、モードをまぜあわせて合分波するスクランブル型モード合分波器を提案、実証しました。

この技術(多数のモードの相互作用の取り扱い)には多粒子系の量子力学と類似する一面があり、実際にこのシミュレーション技術を開発するにあたっては、そこで用いられる数学的技術が非常に役に立ちました。材料からシステムまで幅広く研究して、ある分野での知識を別の分野で役立てたり、知識をごちゃまぜにすることで新しいアイデアを創出することは、私が研究活動の中で最も重視している点です。

開発した独自設計技術を駆使して、「知の泉」から知恵を汲み上げ、次世代の光通信システムを構築するための技術を創出する。光通信だけでなく、今後、世の中に普及していくであろう光センシングデバイスなども、この技術を応用しながら研究し、世の中が「光」であふれるような技術を生み出していきたいと思います。

解説

解説1:多粒子系の量子力学に基づく、半導体量子構造光学物性算出技術の開発

従来必要であったフィッティングパラメータを必要としない量子構造光学特性算出技術を開発。Ge/SiGe量子井戸の吸収スペクトルに関して、報告されている実験結果と理論値と一致する結果を得た。

図
関連文献・発表

T. Fujisawa, and K. Saitoh, “Material gain analysis of GeSn/SiGeSn quantum wells for mid-infrared Si-based light sources based on many-body theory,” IEEE Journal of Quantum Electronics, vol.51, no.5, pp.7100108, May 2015, DOI: 10.1109/JQE.2015.2410283.

T. Fujisawa, and K. Saitoh, “Quantum-confined Stark effect analysis of GeSn/SiGeSn quantum wells for mid-infrared Si-based electroabsorption devices based on many-body theory,” IEEE Journal of Quantum Electronics, vol.51, no.11, pp.8400207, Nov. 2015, DOI: 10.1109/JQE.2015.2488363.

(招待講演) T. Fujisawa, and K. Saitoh, “Material analysis of GeSn/SiGeSn quantum wells based on many-body theory,” 2017 IEEE Photonics Society Summer Topicals Meeting Series, TuA1.1, Puerto Rico, USA, 2017.

解説2:最適化アルゴリズムを利用した新規光デバイスの創出

モード分割多重伝送2モード合波器の、波面整合(WFM)法による自動最適設計技術を開発。最適化アルゴリズムにより大幅に特性改善され、最適なコア形状を算出することが可能になった。

図
関連文献・発表

Y. Yamashita, T. Fujisawa, S. Makino, N. Hanzawa, T. Sakamoto, T. Matsui, K. Tsujikawa, F. Yamamoto, K. Nakajima, and K. Saitoh, “Design and fabrication of broadband PLC-based 2-mode multi/demultiplexer using wavefront matching method,” IEEE/OSA Journal of Lightwave Technology, vol. 35, no. 11, pp. 2252-2258, June 2017, DOI: 10.1109/JLT.2016.2641461.

S. Makino, T. Fujisawa, and K. Saitoh, “Wavefront matching method based on full-vector finite-element beam propagation method for polarization control devices,” IEEE/OSA Journal of Lightwave Technology, vol. 35, no. 14, pp. 2840-2845, July 2017.

(招待講演) T. Fujisawa, T. Sakamoto, T. Matsui, K. Tsujikawa, K. Nakajima, and K. Saitoh, “PLC-based mode controlling devices for mode-division-multiplexing,” 23rd Optoelectronics and Communications Conference (OECC2018), ICC Jedu, Korea, 2018.

解説3:シリコンフォトニクスを用いた超小型光回路の創出

通常の曲げ導波路では、直線の導波路と曲率一定の曲げ導波路を接続すると接続損失が生じるが、クロソイド曲線を挟むことで、直線と曲線の滑らかな接続を実現。導波路の損失を、設置面積を保ったまま従来の10分1に低減した。

図
関連文献・発表

T. Fujisawa, S. Makino, T. Sato, and K. Saitoh, “Low-loss, compact, and fabrication-tolerant Si-wire 90° waveguide bend using clothoid and normal curves for large scale photonic integrated circuits,” Optics Express, vol.25, no.8, pp. 9150-9159, Apr. 2017, DOI: 10.1364/OE.25.009150.

解説4:新規光ファイバにおける光伝送シミュレーション技術

マルチモードファイバ中でのモード間結合を考慮可能な光伝送シミュレーション技術を開発。材料、デバイス設計技術と合わせて、光通信のリンク性能を総合的に研究している。

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関連文献・発表

T. Fujisawa, and K. Saitoh, “A group delay spread analysis of strongly coupled 3-core fibers: A effect of bending and twisting,” Optics Express, vol.24, no.9, pp.9583-9591, May 2016, DOI: 10.1364/OE.24.009583.

T. Fujisawa, and K. Saitoh, “Group delay spread analysis of coupled-multicore fibers: A comparison between weak and tight bending conditions,” Optics Communications, vol.393, pp. 232-237, June 2017, DOI: 10.1016/j.optcom.2017.02.064.*

(招待講演) K. Saitoh, T. Fujisawa, and T. Sato, "Design and analysis of weakly- and strongly-coupled multicore fibers", Advanced Photonics Congress, NeTu2B.5, New Orleans, USA, 2017.