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ネットジャーナル56

モード間結合を考慮可能な光伝送シミュレーション技術

――光ファイバシステムの分野ではどのような研究成果がありますか。

博士(工学) 藤澤 剛

藤澤 これもモード分割多重技術の話になるのですが、光ファイバにおける伝送シミュレーション技術を開発しています。モード分割多重では、異なる光のモードに別々の情報チャネルを割り当て、モード同士を完全に分けて伝送し、受信側でも個別に受信します。しかし現実には伝送路の中で各モードごとに混ざりあってしまう現象(クロストーク)が起きるため、それを解きほぐす受信技術が必要となることが多いです。

 

数年前に米国のベル研究所が、これを逆手に取り、むしろ伝送路の中でモードをごちゃまぜにしてしまうやり方(強結合)を提案しました。強結合ファイバを用いたモード分割多重伝送では、モードを切り離すことに意味はなく、むしろ適度に混ぜ合わせることが望ましいのです。我々の研究室では、こうした強結合伝送の伝送シミュレーション技術を開発しました(解説4)。

こうした、伝送シミュレーション技術から逆に、そのシステムに適したデバイス構成を考えることもできるようになります。例えば、この強結合伝送ではファイバ内でモードが強く結合するので、モードを合分波する際に、異なるモードを低クロストークで分けることなく、混ぜてしまっても良い、ということになります。そのようなコンセプトのもと、モードをまぜあわせて合分波するスクランブル型モード合分波器を提案、実証しました。

この技術(多数のモードの相互作用の取り扱い)には多粒子系の量子力学と類似する一面があり、実際にこのシミュレーション技術を開発するにあたっては、そこで用いられる数学的技術が非常に役に立ちました。材料からシステムまで幅広く研究して、ある分野での知識を別の分野で役立てたり、知識をごちゃまぜにすることで新しいアイデアを創出することは、私が研究活動の中で最も重視している点です。

開発した独自設計技術を駆使して、「知の泉」から知恵を汲み上げ、次世代の光通信システムを構築するための技術を創出する。光通信だけでなく、今後、世の中に普及していくであろう光センシングデバイスなども、この技術を応用しながら研究し、世の中が「光」であふれるような技術を生み出していきたいと思います。

(2018/3/01)

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