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ヴォイス1・就職企画室インタビュー第2回

キャリアビジョンは固定のものではない

キャリア教育は就職活動中だけに限った教育ではない

――一時期教育に対しての世論に、当番など当たり前の役割を果たしても必ず褒めるといった教育の風潮を批判するものがありました。大学生になって、家族以外に親身になって怒ってくれる人がいたという経験をして社会に出ていくというのは大事だと思います。

金子 叱るから良いということでもないと思いますけど、僕の研究室は厳しいですよ。厳しいけれども、実際、博士後期課程に進学している学生は20人くらいいますから、もう研究室から逃れたい、進学したくないと思うような厳しさではないと思いますよ。僕が言うよりも、学生に聞いてもらうのが一番良いでしょうね。僕の研究室は、修士課程から入学してくる学生の半分は外部からです。外部からの学生は僕とつきあうのは初めてですから、最初は研究指導もスローですけど、だんだん厳しさが出てきます。だけど、僕はそういう厳しさに直面した学生に、この2年間なり5年間なりは俺に預けろよ、と言っています。たとえそれが自分の今までの研究のやり方と多少違っていても従いなさいと言っています。僕の研究室は共同研究も多いから、研究テーマも全て僕たちが与えます。学生が持ってきたテーマは一切ない。だから、学生が入学前にやりたいと何となく思い描いていたものとは違うかもしれないですね。だけど学生が持つそういう違和感は僕たちもわかっているので、僕はすべての学生に、「研究室にいる間は僕のやり方に任せなさい、そのかわりに必ず幸せにしてやるから」と言っています。そして、博士後期課程を修了した後の出口もきちんと面倒見てあげるから博士後期課程に進学しなさい、と学生に約束してあげる。約束してあげないと、学生は大変ですよね。厳しいだけ厳しいのに自分の将来は自分でやれと言われたら、学生は「何のために先生にこんなに叱られなければいけないんだろう?」と思いますよね。僕は学生に、そういう厳しい訓練を経た後に自分がレベルアップしていくという実感を持ってもらうのが一番だと思っていますから、研究指導をしているその場で学生に「ほら、今この知識仕入れただろ?この瞬間、君のレベルは3センチ、ふっと上がったんだぞ」ということをよく言います。これは就職企画室の活動にも通じてきますね。その場で教えてあげるというのは大事なんです。だから、産業技術フォーラムのように、その場で、企業の人、先輩から、自分についての反応をすぐに見られるという機会は大事ですよね。人と会う、face to faceというのは大事だと思っています。

――受験勉強の数学が大好きで数学科に入学したけれども、大学の学問としての数学に肌に合わなくて悩む学生もいると聞いたことがあります。他学部の学生や今年度から総合入試で入学した1年生が就活ライブチャンネルを見に来て、「自分はこういう業界にも向いてるんだ」という新たな発見もあるのではないでしょうか。

写真:金子 俊一 教授

金子 もちろんあると思いますよ。やはり、将来なりたいものを目がけて努力しなければいけない。僕は研究室に入ってきた学生が研究テーマを考え始める時に「君は将来何になりたいの?」と必ず聞きます。学生が電機メーカーに行きたいのか、自動車メーカーに行きたいのかによって、研究のやり方は少しずつ違ってくるはずだと思います。だから、僕ら教員はその努力をサポートしてあげるように、僕らの指導できる研究テーマがいろいろある中から、学位取得のための論文のテーマの選定や、研究の指導方法を学生が将来何になりたいかによって少しずつ変えるかもしれない。その分学生は、何のためにこれから厳しい指導が始まるのかという意識を高めてくれると良いですね。修士だと2年間、博士後期課程まで行くと5年間か6年間、学生は僕と付き合うわけですよ。その付き合いの中にある厳しいものに耐えていかなければならない。耐えるにはやはり、ご褒美としての「ニンジン」が必要ですよね。小学生の時はお母さんがニンジンをぶら下げてくれたかもしれないけど、大人になったらニンジンを自分でぶら下げる能力がないといけないですね。世の中に楽しいことはたくさんあるんだから、それを自分で探せるかどうかです。ニンジンを自分でぶら下げるためには、自分についてよく知っていく必要があるから、就職ライブチャンネルに1年生でも、他学部からでも参加していただくのは結構ですよ。

先ほど、A社に行けなくてB社に入って自分を満足させられるかという話をしましたけど、ニンジンをぶら下げる能力とはその力ですね。10年先にニンジンをぶら下げるのはなかなか難しい、それは僕もできない。だけど、3年先にぶら下げることはできるかもしれない。3年先に、たとえば、A社に入りたかったら、とりあえずそこがハードルになるでしょう?10年先はわからなくてもいいわけです。その3年先のニンジンを見て、今は自分のテーマでどこまで上がったらいいの?ということを見なければいけない。僕はそういう指導もしていますよ。ただ、間違えてはいけないのは、就職のためだけに僕らがあるわけではないですからね。僕が一番大事なのは人材育成だと思っているから、誤解を恐れないで言うならば、研究内容はその次なんです。研究が第一だという先生もいるけれど、僕が思うに、僕らの仕事は学生の人材育成が第一なんです。それは就職のためだけではない。特に国立大学法人は、日本の国家というものを考えて、教員一人ひとり、そういう位置付けの中で人材育成をどうしたら良いかというものを考えなければいけないですね。特に教授の先生、研究室運営の責任者は、そういうことを考えないといけない。だから将来、学生が研究室を出て行って技術者として実社会に入るときに、学生が技術者として日本を支える気持ちを持つように、そういう気持ちは大事なんだぞ、と指導していかなければならない。就職企画室に関しても、就職のためだけの存在ではないと思いますよ。就職のためだけに大学生活があるわけではないですから、もう少し広い意味で、大学生活の中のひとつが就職活動。学生はそんなふうにとらえて大学生活を送ると良いかもしれないですね。

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