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ヴォイス2・ERATO湊離散構造処理系プロジェクト
湊真一教授インタビュー

アルゴリズムの大規模プロジェクトの先駆者として

写真:金子 俊一 教授

情報科学研究科 情報理工学専攻 アルゴリズム研究室・教授
博士(工学) 湊 真一

数える対象が少し増えるだけで組合せの数が膨大になる「組合せ爆発」。この問題に立ち向かう強力な手法を開発したとして注目を集めているのが湊真一教授率いる離散構造処理系プロジェクトです。2009年にJSTの戦略的創造研究推進事業(ERATO)の採択を受け、国内外の研究者との共同研究から多彩な研究成果が生まれています。

クヌース博士の著書がきっかけとなりERATOプロジェクト採択へ

――ERATO湊離散構造処理系プロジェクトではどのような研究を行っているのですか。

離散構造とは、離散数学および計算機科学の基礎となる数学的構造のことで、集合・論理・証明・グラフ・順列・組合せ・確率などを扱います。 具体的にはハードウェア・ソフトウェアの設計、大規模システム故障解析、制約充足問題、データマイニングと知識発見、機械学習と自動分類、バイオインフォマティクス、ウェブ情報解析などさまざまな分野で必要とされている技術です。

私は、1990年代から大規模な組合せデータの処理アルゴリズムの研究に携わり、1993年に二分決定グラフ(BDD:Binary Decision Diagram)を一部改良した「ゼロサプレス型BDD(ZDD)」を考案しました。この理論が、アルゴリズム研究の第一人者であるD. E. クヌース博士の著書『The Art of Computer Programming Vol. 4-1』の中で数十ページにわたって詳しく紹介され、日本人初の快挙として注目を集めました。それがきっかけとなり、JSTの戦略的創造研究推進事業(ERATO)の採択を受け、ERATO湊離散構造処理系プロジェクトがスタートしたのです。

――ERATOプロジェクトで目指したことは何ですか。

図:湊離散構造処理系プロジェクトが対象とする研究領域
図:湊離散構造処理系プロジェクトが対象とする研究領域

本プロジェクトは図(※)に示される研究領域を対象としています。図上部の枝分かれしたピンクの部分は実際に社会で役立つ応用技術(エンジニアリング)、下部の黄色の部分は基礎的な計算理論(サイエンス)の領域です。その間をつなぐのがERATOプロジェクトの主たるテーマで、私たちは「技法」という意味での「アート」と呼んでいます。

サイエンス、アート、エンジニアリングの3つの領域の研究者が分野の枠を超えて議論できる場として、各種のセミナーやワークショップ、シンポジウム等を多数開催しました。過去4年間のセミナー開催総数は147回に及び、会場はメインの北大ERATOオフィスだけでなく、東京地区・大阪地区のサテライト拠点、インターネットを経由した臨時拠点なども設置し、活発な交流が行われました。ERATOセミナー会員は280名を超え、テーマに応じて毎回15〜40名の会員がいずれかの会場に出向いて参加しています。さらに北海道で毎年2回開催したワークショップには、若手・中堅の著名な研究者が50~60人も集まり、非常に熱い議論が交わされました。

また、国内外の優秀な人材を採用することができたのも大きな成果でした。電力網設計や生命科学などさまざまな分野の研究者が集まり、斬新で画期的な成果を上げています。アルゴリズムの研究者だけでなく、異分野・異業種の専門家たちと出会い、コラボレーションする場を創ることが本プロジェクトの目標のひとつだったので、多彩な人的ネットワークが築けたことは大きな成果となりました。

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