村尾覚志さん

村尾覚志さん

2009年度・情報通信フォトニクス研究室卒業

三菱電機株式会社 情報技術総合研究所

Q1研究室に在籍中、学んで良かったこと、今のお仕事に役立っていると感じることは何ですか?

 研究室在籍中には、フォトニックバンドギャップファイバ(PBGF)と呼ばれる新しい光ファイバに関する研究を行っていました。PBGFは、極低損失伝送や、低遅延、新規波長帯開拓の可能性など、現在、世界的な注目を集めている光ファイバです。研究を進めるにあたり、物理、光エレクトロニクス、電磁波工学の他、光通信工学や有限要素法と呼ばれる高精度数値計算手法を基礎として、幅広い知識を習得することができました。
 博士後期課程を修了後、現在は、三菱電機(株)の情報技術総合研究所において、光通信用の光信号を送受信する最先端モジュールの研究開発に携わっています。仕事でも、光通信に関わっていることから、研究室で学んだほとんどの知識が役立っています。特に、研究室では、実際の光通信への応用を意識して研究を進めてきたことから、就職後、スムーズに研究開発業務に入ることができたと感じています。実は、仕事では、研究室在籍時には経験したことが無かった、モノづくりをしています。たまたまかもしれませんが、私の職場では、実験系の研究室出身の人が多いです。ただ、モノづくりに必要な製図、実装・組み立て、実験、プロジェクト管理の技術は、就職してからでも十分に習得可能です。一方で、研究室在籍時に身に付けた数値計算・プログラミングのスキルは、モノづくりと両方をこなせる人は多くはないため、とても貴重だと感じています。実際、近年の光モジュールは、構成が複雑化し、組み立てが非常に難しくなってきているのですが、それを容易にする、光軸調芯に基づいたアルゴリズムを考案し、実用化に大きく貢献することもできました。また、研究室在籍中には、国内外の学会発表の機会も多く得ることができ(特に海外については、北米に3回、欧州に1回行くことができました)、プレゼンテーションのスキルも身に付けることができた点は、非常に良かったと感じています。

Q2なぜこの専攻や、この研究室を選んだのでしょうか?

 技術進展の著しい情報通信分野に興味を持っていましたが、情報科学研究科には、この点で魅力的な専攻・研究室がたくさんあります。私は、もともと、デバイス中の物理現象とシミュレーション技術に興味を持っていたこと、そして原理に立ち返って、これまでに無いアイディアを導入することで、新しいデバイスを創生することにも強い興味を持っていました。情報通信フォトニクス研究室は、この点に力を入れている研究室であること、そして何より、世界の第一線で活躍している研究室であることが選択の決め手となりました。また、見学の際、活気があり、アットホームな良い雰囲気を感じたことも大きかったと思います。実際に研究室に所属してみて、先生や先輩に気軽に質問、またディスカッションできる土壌があったこと、そして、研究遂行能力を身に付けるための最適な環境が整っていたことから、非常に有意義な研究室生活を過ごすことができました。最終的に、論文発表の他、光通信分野で注目度の高い国際会議に数度発表することができ、研究の醍醐味を知ることができました。

Q3今後の目標・後輩へのメッセージ

 私が仕事で携わっている光通信分野では、伝送速度の高速化の社会的な要求が益々高まってきています。一方で、低消費電力や小型といった高性能化の他、低コスト化も両立しなければならず、これは容易なことではありません。数年先には、全く新しいアイディアの導入による技術的パラダイムシフトが必要となるかもしれません。難しいことですが、忍耐強く挑み、世界で活躍する研究者を目指していきたいと思います。
 研究課題に立ち向かうことは、大変なことだと思われるかもしれません。もちろん、研究には幅広い知識、そして深い洞察力が必要になり、常に自己研鑚し努力し続けることが必要であることは言うまでもありません。しかし、それだけに、非常にやりがいのある仕事だと私は感じています。研究とは、まだ誰も成し得ていない、未知なる挑戦です。是非、社会が注目している分野の第一線での活躍、皆さんも目指してみてはいかがでしょうか。