
Q1 博士後期課程への進学を決めたきっかけ・動機は何でしょうか。
私は、修士修了後、まずはメーカーの技術職に就きました。研究は好きでしたが、「本当に博士後期課程でやっていけるだろうか」という不安と、「社会人として働く経験を積んでおきたい」という思いがあったためです。実際に企業で働くなかで、 より専門的・先進的なテーマに挑戦したいという気持ちが強まりました。企業では既定の枠組みや開発スケジュールに縛られ、自由度やスピードに限界を感じたことが大きな理由です。博士号を取得すれば専門性を客観的に示せるため、再び企業に戻った際にも自分の志向に合った仕事へ参画しやすくなると考え、進学を決意しました。
Q2 博士後期課程に進んでよかったことは何でしょうか。
朝から晩まで研究に没頭できることです。前職では会議や書類業務が多く、技術的に成長できる時間が限られていました。現在は毎日、新しい課題を自分で設定し、解決策を考え、手を動かせる環境に充実感を覚えています。企業では分業で進めるような業務も、研究では自分で一貫して取り組める点も研究の醍醐味です。博士課程に進学しなければ一生触れなかったであろう知識やスキルを学べることに、大きな価値を感じています。
Q3 就職や経済的な面で不安はありましたか?
就職面では全く不安はなく、一度社会人を経験したことで、博士号はむしろキャリアアップになると実感しています。企業での同期にも博士後期課程修了者がいましたし、博士号を持っていることが不利になることは全くないと思います。一度離職することは大きな決断でもありましたが、仕事がどういうものかを知ることで、むしろいつでも企業に戻れると感じました。
経済面での不安は、通常の博士後期課程進学者よりも大きいかもしれません。税金や保険などは前年度の収入によって額が決まるので、初年度の負担はやや厳しいです。研究室でRAに採用していただいているので、奨学金と合わせて生活しています。今後どうなるかは今も不安です。
Q4 後輩にメッセージをお願いします。
企業に就職すると、研究に対して熱い気持ちを持っている人は意外と少ないことに気が付きます。研究や”考えること”自体が好きで迷っているなら、いつか博士後期課程に進学することになるのではないでしょうか。私のように仕事を辞めてしまう人は珍しく感じるかもしれませんが、実際には少なくありません。就活を十分して内定をいただいてから博士後期課程に進学することを決めた知人もいますし、社会人博士として働きながら研究をする知人もいます。大学には皆さんが思っているより様々な選択肢があるので、急がず、悩みすぎないことも大切だと思います。自分に合ったタイミングで決断することが、より良い研究生活につながると思います。
令和7年8月