現代社会において電気エネルギーは,水や空気のように無くてはならないものとなっています。パワーエレクトロニクス技術は,電力用半導体デバイスのスイッチング動作を基本に,この電気エネルギーの形態,すなわち電圧・電流・周波数を必要な形に変換するだけでなく,高速・高精度に制御する技術です。パワーエレクトロニクス技術は省エネルギーのキーテクノロジーであるばかりか,今や総合パワーマネージメント技術に発展しようとしています。電気エネルギー変換研究室では,電気エネルギーの発生・伝達・利用の各段階に広く応用されている電力変換・制御技術について研究しています。また,電力変換器のEMI/EMCについても研究しています。


次世代半導体デバイスを用いたインバータ

航空機システムモータ用の対抗試験装置

研究事例

サムネイルから研究ポスターのpdfを見ることができます

PWMインバータ用ハイブリッドコモンモード電圧キャンセラ(ACC)


概要
 インバータが発生する電磁ノイズの逆位相の電圧を加算することで電磁ノイズを打ち消す,アクティブコモンノイズキャンセラ(ACC)を研究しています。従来のACCは,ACCの回路内部で発生する歪電圧が原因となり,電磁ノイズの正確なキャンセルが行えず,電磁ノイズ減衰性能はノイズ電圧振幅を10分の1にする程度が限界でした。そこで,キャンセルしきれなかった電磁ノイズ(残留電磁ノイズ)を再び検出し,フィードバック制御により残留電磁ノイズを減少させる,フィードバック制御併用ACCを提案しました。フィードバックする電圧を小振幅の残留電磁ノイズのみに絞ることで,安価・高性能・小型なオペアンプのみでフィードバック回路を構成できます。フィードバック回路は非常に小型であり,わずかな追加コストとサイズでACCの電磁ノイズ減衰性能を大幅に向上できます。

次世代半導体デバイス実装技術に関する研究


概要
 近年、SiCやGaNなどの次世代パワー半導体デバイスの高速動作・低損失特性が注目され、その普及が急がれています。一方、実装技術やノイズ対策など解決すべき問題が多く、未だ一部の用途でしか、導入されていないのが現状です。本研究では、パワーデバイスの実装において問題となっている、回路の寄生成分による影響とその低減手法について取り組んでいます。  また、次世代パワーデバイスの高速動作特性を活かした応用技術についても検討しています。本研究成果では、SiCデバイスの採用と寄生成分低減によって、高周波インバータの高効率化を実現するだけでなく、従来以上の高周波駆動によって、モータ鉄損を抑制し、駆動システムの更なる高効率化を達成しました。

マトリックスコンバータに関する研究


概要
電気自動車の充電器や産業用工作機は絶縁型AC/DC電源を必要とする。従来の電源はAC/DC/高周波AC/DCの3段階の電力変換によってDC電力を得る。高周波AC部には絶縁変圧器が設置される。これに対して,本研究ではマトリックスコンバータを用いた絶縁型AC/DC電源を提案する。この電源はAC/高周波AC/DCの2段階の電力変換を行うため,変換段数の減少による高効率化と小型化を実現できる。

プレーナトランスに関する研究


概要
電気自動車に使用されるDC-DCコンバータは小型・軽量・大容量であることが求められる。近年はコンバータ回路に共振用のインダクタとコンデンサを追加して,ソフトスイッチングによる高効率動作を実現するLLC方式の利用が進んでいる。また,コンバータに使用されるトランスの漏れインダクタンスを大きくすることで共振用インダクタの機能を代用し,部品手数を削減することができる。しかし,漏れインダクタンスが大きい構造のトランスは渦電流損失が大きいという欠点を持つ。本研究で提案しているトランスの巻線構造は,渦電流損失を低減することで高効率化と小型化の両立が可能である。

13.56MHz出力を実現する周波数逓倍回路に用いるトランスに関する研究


概要
13.56MHzの高周波電力を出力するスイッチング電源は、半導体加工用のプラズマ発生源や非接触給電への応用が期待されている。しかし、高周波化に伴い、スイッチング損やトランスの鉄損が増大するため、変換効率が悪くなる問題がある。そこで本研究では、多相インバータの電圧波形をトランスで合成することで、出力周波数をスイッチング周波数の整数倍の周波数にすることが可能な、周波数逓倍回路を用いる。これにより、スイッチング周波数やトランスの動作周波数を13.56MHzより低くすることができる。 周波数逓倍回路に用いるトランスは、漏れインダクタンスや寄生容量などの寄生成分を設計段階で調整できることが必要である。提案したトランスは、巻線ガイドを用いることで漏れインダクタンスと寄生容量を調整することが可能である。

周波数逓倍回路のトランス二次側周波数に起因する鉄損評価


概要
半導体の製造にはプラズマ発生装置が必要で、これには高周波スイッチング電源が使用されています。近年、この電源の益々の高効率化が求められています。そこで、当研究室では電源の更なる高効率化のために、周波数逓倍回路と呼ばれるトランス回路を研究しています。この回路は、スイッチング周波数を低減することで、全体として低損失(=高効率)を実現できる一方で、いくつかの検証すべき課題があります。その1つに、負荷に出力する高周波電流が、トランスを介してインバータ側にも流れることによる鉄損の変化があります。本研究では、トランスのインバータ側に、トランスに磁気変化を発生させる励磁電流に加えて、その逓倍の周波数の電流が流れる状況を模擬しています。これにより、高周波電流による鉄損への影響を明らかにしています。