電子常磁性共鳴スペクトロスコピー&イメージング / 平田 拓 教授

生命科学研究に用いる磁気共鳴スペクトロスコピー&イメージング技術に関する研究を行っています。主に、比較的周波数の低い(300MHz-1.2GHz)電子常磁性共鳴(EPR)分光システムを研究対象としています。具体的には

  • 機能的EPRイメージング法の研究
  • EPR分光を用いた分子イメージング手法および画像再構成法に関する研究
  • EPR分光およびイメージング法の生命科学への応用

が主なテーマです。現在は、日本学術振興会の科学研究費補助金により研究を推進しています。

進行中のプロジェクト

日本学術振興会・科学研究費補助金・基盤研究A、「定量的がん研究のためのマルチパラメータ電子スピン共鳴イメージング法に関する研究」(研究代表者:平田拓、26249057、2014/4〜2018/3)

【概要】本研究の目的は、がん腫瘍組織内で定量的に酸素分圧およびpHを可視化する電子スピン共鳴イメージング法を開発し、がん研究に有用な計測技術を構築することです。 計測技術の開発に加え、マウスをつかった腫瘍モデルを用いた実証試験を目指します。

終了したプロジェクト

日本学術振興会 最先端・次世代研究開発支援プログラム(ライフ・イノベーション)「キラリティー磁気共鳴分子イメージング」(研究者:平田拓、LR002、2011/2〜2014/3)

【概要】
(1)研究の背景
 薬として働く分子には、物理化学的な特性が同じでも分子を構成する原子のつながり方が鏡で見たように反転しているものがあります。これをキラルな分子と呼び、この特徴をキラリティーと言います。キラルな分子は、見掛けが同じでも一方は体に作用し、もう一方は作用しないことがあります。これまで、体の中でキラルな分子を見分けることは困難でした。

(2)研究の目標
見掛けが同じキラルな分子を、体の中で区別して見えるようにする方法と装置を開発します。

(3)研究の特色
 区別が難しいキラルな分子に、振る舞いが異なる電子を目印として付けることに研究の特色があります。目印の電子が電波を吸収することを利用して、キラルな分子を区別します。異なる目印が付いた分子が、体の中に入った時どのように広がり、消えていくのかを絵で見ることができるようになります。

(4)将来的に期待される効果や応用分野
 薬として使われる分子にはキラルな分子が多くあります。そのため、特定の分子に目印を付けて体の中での振る舞いを見ることは、薬の開発においてとても役立ちます。薬として使われるキラルな分子の体の中での広がり方や消え方の差を、目で見て知ることができるようになります。このような技術は、生物や医学の研究、薬の研究に応用できます。

キラルなニトロキシルラジカル(HMP)を同時にイメージングした実験(Y. Miyake et al., Anal. Chem. 2013:85;985-990).

日本学術振興会・科学研究費補助金・基盤研究B、「脳科学研究のための機能的電子スピン共鳴イメージング法の研究」(研究代表者:平田拓、21360193、2009/4〜2012/3)

*最先端・次世代研究開発支援プログラムの重複受給制限により、2011/3で終了

【概要】本研究の目的は、脳科学研究に用いる実験小動物(マウス及びラット)の頭部を対象とした機能的電子スピン共鳴イメージング法を開発し、生体組織のpHと酸素分圧pO2を可視化するイメージング技術を開拓することです。

科学技術振興機構・先端計測分析技術- 機器開発事業(要素技術プログラム)、「高速電子常磁性共鳴イメージング法の開発」(研究代表者:平田拓、2008/10〜2012/3)

*最先端・次世代研究開発支援プログラムの重複受給制限により、2011/3で終了

【概要】本課題では、不対電子を持つ分子(フリーラジカル)を特異的に画像化する電子常磁性共鳴(EPR)イメージング法を、これまでの10倍高速化する要素技術の開発を目指します。均一分布プロジェクション法と高速磁場掃引により、EPRイメージングの高速化を実現します。高速なEPRイメージングを実現すると、短時間で消滅するフリーラジカル分子の生体内での振る舞いを明らかにすることが可能になり、フリーラジカル分子が関与する疾病や生命現象の解明に貢献することができます。

フリーラジカル分子がアスコルビン酸で消えていく様子を三次元で可視化した実験例 (H. Sato-Akaba, et al., Rev. Sci. Instrum. 2008:79;123701)

日本学術振興会・科学研究費補助金・挑戦的萌芽研究、「スーパーレゾリューション電子常磁性共鳴イメージング法の開発」(研究代表者:平田拓、20656065、2008/4〜2011/3)

【概要】電子常磁性共鳴イメージング法の解像度を格段に改善するスーパーレゾリューション法の開発を行いました。解像度の飛躍的改善により、生体中のフリーラジカル分子の高解像度での可視化が可能になります。電子常磁性共鳴イメージングの画像処理法の新しい展開を目指しました。

マウスの頭部の三次元イメージングで解像度を改善した結果 (Y. Ikebata et al., Magn. Reson. Med. 2009:62;788-795).

日本学術振興会・科学研究費補助金・基盤研究B、「完全一体型ESR・MRI融合装置による機能イメージングの研究」(研究代表者:藤井博匡教授・札幌医科大学、研究分担者:伊藤康一教授・徳島文理大学、平田拓・北海道大学、黄田育宏助教・北海道大学、19390322、2007/4〜2010/3)

【概要】本研究プロジェクトでは、機能イメージングを可能にするために、測定物体を一切移動させない、完全一体型ESR/MRI融合装置を開発しました。本装置を用いて、活性酸素フリーラジカルの生理機能を可視化する機能イメージングの応用研究を目指しました。

プロトンのMRI画像とフリーラジカル分子のEPR画像を取得してマルチモーダルイメージングを実現した例 (Y. Kawada et al., J. Magn. Reson. 2007:184;29-38)

NIH/NIAID grant U19 AI067733-01 (Subcontract between the University of Rochester and Yamagata University)(Subcontract PI: H. Hirata, 2006/3/1〜2010/7/31)

【概要】本研究プロジェクトは、米国NIH/NIAIDのバイオディフェンス研究プログラムの一環で、ロチェスター大学のCenter for Biophysical Assessment and Risk Management Following Radiation(ディレクター P. Okunieff教授)とのサブコントラクトによるものです。本プロジェクトでは、歯のin vivo EPR分光用のマイクロ波共振器の開発を行いました。放射線被爆線量を測定するための技術開発の一環です。ダートマス大学医学部EPRセンターと共同で開発を行いました。

日本学術振興会・科学研究費補助金・基盤研究B、「脳科学研究のための電子スピン共鳴イメージング法の研究」(研究代表者:平田拓、18360194、2006/4〜2009/3)

【概要】本研究プロジェクトでは、マウス等の小動物を用いて電子スピン共鳴イメージングをおこなうための計測装置の開発と、疾病に関係した機能的イメージングを行うための研究を行いました。これまでに開発した650MHz-EPRイメージング装置を用いて、新しいイメージング技術の開発を目指しました。

連続波EPRイメージングで、初めて3次元イメージングを経由せずに直接取得した動物のスライス画像(b)と、それを重ね合わせて作った三次元画像(c). (H. Sato-Akaba et al., Magn. Reson. Med. 2008:59;885-890)

NEDO技術開発機構・産業技術研究助成事業「がん腫瘍内酸素濃度非侵襲測定装置の開発」(研究代表者・平田拓、04A06006、2004/7〜2007/6)

【概要】本プロジェクトの目的は、がん腫瘍内の酸素濃度を非侵襲的に計測する装置を開発しました。電子スピン共鳴(ESR)スペクトラムが酸素濃度に依存するような試薬を投与し,腫瘍内の酸素濃度測定を行ないます。ESRは磁気共鳴計測法の一種であり、磁界中でマイクロ波の吸収を計測する分光法です。使用するマイクロ波は1.1GHz、磁束密度は40mTです。汎用の分析化学用ESR分光装置は臨床応用を想定していないため、ヒト腫瘍内の測定に焦点を絞った臨床応用が可能な分光装置の開発を目指しました。腫瘍内の酸素濃度はがんの放射線治療の効果を左右する重要な要因です。放射線治療に先立ち、事前に腫瘍内の酸素濃度を非侵襲的に測定することが可能になれば、不要な被爆を減らし、効果的にがん治療を行なうことが可能となります。

腫瘍の成長にともなって、腫瘍内の酸素分圧が低下していく様子を測定した例 (H. Fujii et al., Radiothr. & Oncol. 2008:86;354-360)

日本学術振興会・科学研究費補助金・基盤研究B、「高分解能磁気共鳴画像解析装置による分子イメージングの研究」(研究代表者:藤井博匡教授・札幌医科大学、研究分担者:伊藤康一教授・徳島文理大学、平田拓・山形大学、17390335、2005/4〜2007/3)

【概要】本研究プロジェクトでは、磁気共鳴イメージング装置(NMRとEPRイメージング)を用いて、分子イメージングを行うための研究を行いました。山形大学では、NMRとEPRイメージングに使うマイクロ波共振器を開発しました。これまでに、0.5T-NMR(21MHz)と23mT-EPR(650MHz)の両方に用いることとができる共振器を開発しました。