人工関節 / 西村 生哉 助教

これが人工股関節だ

全人工股関節置換術(THA)は変形性股関節症、慢性関節リウマチ、大体骨頭壊死等の症例を対象に行われています。THAが行われるようになって30数年がたち、現在では非常に有効で広く用いられる手術方法となりました。現在では、1年間あたり日本で4万例、アメリカでは20万例行われています。しかし、平均寿命の延長や比較的若い年齢の患者さんへの手術も増えた為、再置換を余儀なくされる症例数も確実に増加しています。現在では概ね15年ほどの耐用年数があるとされていますが、まだまだディバイスとしても未完成の部分があるとされ広く研究が進んでいます。

人工股関節に関する研究テーマ

人工関節はまだまだ不完全なディバイスです。我々の研究室では、日本人の身体に適した新しい人工股関節を開発するために以下のテーマで研究をおこなっています。

  • 摺動面の表面改質
     人工股関節の骨頭とカップは体重の数倍という高荷重を受けながら摺動します。しかし一般の機械と違い、摺動面に油をさすことはできません。そのため摺動面は徐々に摩耗します。摩耗粉は生体にとって異物となり、炎症反応を引き起こし、人工関節のゆるみ(loosening)の原因となります。我々は摺動面に「機能性表面構造」を持たせることによって、摺動面の摩耗を大幅に減少させることに成功しています。
  • セメントレス人工関節の表面改質
     人工関節と骨との接合。なかなか難しい問題です。我々は骨セメントを用いないで人工関節と骨とを接合させる「セメントレス人工関節」のために、新しいポーラス表面の開発やポーラスの表面改質をおこなっています。
  • 有限要素法による応力解析
     現在、人工関節はそのほとんどをアメリカからの輸入品に頼っています。アメリカ製品は当然、アメリカ人向けに開発されたものです。我々は日本人の体格に適した人工関節を開発すべく、人工関節の形状を根本から見直しています。有限要素法を用いて応力集中のない新しい人工関節を開発しています。
  • 犬用セメントレス人工股関節の開発