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オンチップ光ネットワークのためのモード合分波器

インターネットやAIの普及に伴い、サーバやネットワーク機器を集約するデータセンター内では、大規模集積回路チップ内での光通信容量の拡大が求められています。このような背景から、通信容量を拡大する技術として、空間分割多重技術の一つであるモード分割多重 (Mode Division Multiplexing: MDM) 技術に注目が集まっています。MDM技術では、異なる固有モードが互いに直交し、干渉しないという性質を利用して信号の多重化を行います。図に示す山1つの光をモード0、山2つの光をモード1と呼びます。図に示す動作例では、異なるモードを合分波するモード合分波器を用いて、モード0とモード1を導波路bで同時に伝搬させることが可能です。
また、10mm2程度の設置面積であるチップ内で構築される通信システムでは、導波路の集積性が重要な課題です。本研究室ではこの課題に対応するため、様々な導波路設計技術を駆使し、小型化の実現に取り組んでいます。図に示す構造では、伝搬過程での意図しないモード同士の影響を回避するように、導波路形状を最適化する高速疑似断熱力学法を用いてデバイス長の短縮を達成しています。
長周期ファイバグレーティングを用いたMDL等化技術

データ通信量の爆発的な増加に対応するための光ファイバ通信技術の1つとして、一本の光ファイバで複数の光信号を同時に伝送する「モード分割多重伝送」が注目されています。この技術では、光の伝わり方の違い(モード)を利用して、複数の情報を独立して送ることが可能です。しかし、高次のモードほど光信号が減衰しやすく、モードごとの信号強度のばらつき(モード依存損失(Mode Dependent Loss: MDL))が信号処理を複雑にし、通信性能を制限する要因となっていました。
この課題を解決するため、本研究室では長周期ファイバグレーティング(Long Period Fiber Grating: LPFG)を用いたMDL等化デバイスを開発しています。LPFGは光ファイバのコア部分に周期的な屈折率変化(グレーティング)を形成することで、情報を伝える「コアモード」と損失の大きい「クラッドモード」が互いに変換し合うモード結合が生じるため、損失を制御することが可能です。ここでは、上図に示すようなMDL等価の具体例について説明します:①信号強度が異なる2つのコアモード(LP01: 100%、LP11: 50%)を入力します。②グレーティング部でLP01コアモードの一部をクラッドモードと結合させることで、LP01コアモードの信号強度を低下させます。③その結果、出力端では2つのコアモード(LP01、LP11)の信号強度が等しく(50%)なります。
こうした技術により、柔軟かつ高品質なモード分割多重伝送が可能となり、将来の高速大容量通信網の実現に貢献することが期待されています。
波面整合法による2×2 MMIカプラの最適化

データ通信トラフィックの増加に対応する光ネットワークの高速大容量化の手段として、光の位相・偏波の性質を用いるディジタルコヒーレント光通信があります。ディジタルコヒーレント光通信の受信機の構成要素として、多値変調された光信号を復調する光 90°ハイブリッドが必要です。ディジタルコヒーレント光通信の高速大容量化には、光90°ハイブリッドの性能向上が重要となります。
マルチモード干渉 (Multimode Interference: MMI) カプラは光の分岐・結合を行うデバイスであり、90°ハイブリッドの重要な構成要素として用いられます。MMIカプラの性能は90°ハイブリッド全体の性能に直結しますが、一般的にMMIカプラは小型化するほど性能が劣化する傾向にあります。そこで、所望の出力に近づくよう導波路の外形を微調整することで構造最適化を行う波面整合法を用いて、高性能な小型MMIカプラを実現する研究を行っています。
モード分割多重伝送のためのマルチモード接続器

近年、インターネットやモバイルサービスの発展にともない、インターネットトラフィックが増加し続けています。このようなインターネットトラフィックの急激な増加に対応するために伝送容量の拡大が求められています。現在利用されている長距離光通信システムは、単一コア中を単一モードで伝搬する、シングルモードファイバを伝送路として使用し、波長分割多重(Wavelength Division Multiplexing: WDM)伝送方式により伝送容量を拡大しています。しかし、WDM技術による大容量化にも限界があり、さらなる伝送容量拡大のための技術として、モード分割多重(Mode Division Multiplexing: MDM)伝送が注目されています。
MDM伝送において、モードを合波した後、光ファイバに接続する必要がありますが、高次モードの接続は光導波路においてパワーが集中する2つの山の間隔がファイバに比べて狭く、パワーが強い部分が一致しないため、高い結合効率で接続することができません。そこで、基本モードに加えて高次モードも適切に接続するためのデバイスを研究しています。
アナログRoFシステムのための光マルチビームフォーマ

2030年頃に実現が期待されている第6世代移動通信システム (6G) では、ミリ波やサブテラヘルツ波といった100 GHzを超える電波の利用が予想されています。このような高周波数帯のビームフォーミングを可能とするシステムを現行のマイクロ波帯と同様の回路構成で構築することは、信号帯域幅にわたる時間遅延精度や挿入損失、電磁干渉の問題、物理的なサイズ・重量、消費電力の大きさといった観点で大きな限界があります。
これらの課題に対応するため、光行列演算回路を用いてアナログRoF信号の光位相を制御することにより、光領域でビームフォーミングを行う手法を提案しています。光技術を用いたビームフォーミングシステムは、利用可能な帯域幅がはるかに広く、回路サイズ、消費電力を著しく削減することができるため、従来手法に対する実現可能な代用技術として期待が高まっています。
異種結合型マルチコアファイバ

近年のインターネット上のデータ通信量増加に伴い、従来の光ファイバを超える伝送容量を持つ新たな長距離伝送用光ファイバが求められています。そこで注目されている伝送媒体の1つが、結合型マルチコアファイバ (Coupled Multi-Core Fiber: CMCF) です。CMCFは、光の伝送経路であるコアを密に複数配置することで、伝送容量の拡大を可能にした次世代の光ファイバです。CMCFは、結合の伴わないMCFとは異なり、コアの構造や配置方法によって光信号間の伝搬遅延差が大きく異なります。特に、光信号間の伝搬遅延差が大きいほど、光受信器側での信号復元処理コストが増加してしまう問題があります。
そこで本研究室では、光信号間の伝搬遅延差が小さくなるような、異なる種類のコア構造 (異種コア) を用いたCMCFの研究を行っています。異種コア構造を適切に設計することにより、コアが密に配置されていても光信号間の伝搬遅延差をゼロに近づけられることが知られています。このような2コアファイバ配置を応用して、さらにコア数を増やした場合でも光信号間の伝搬遅延差を低減できるCMCFを提案しています。
コヒーレント光通信のための偏波回転合波器

近年の生成AIやデータセンターの急速な発展に伴う爆発的なデータ需要に対応するため、大容量かつ低消費電力な光トランシーバの実現が喫緊の課題となっています。この課題を解決するために、我々はシリコンフォトニクスに基づくオンチップコヒーレントトランシーバのためのパッシブデバイスについて検討を行っています。コヒーレント通信は光の「位相」と「偏波」の情報を利用して伝送容量を拡大する技術であり、特に「偏波」の利用においては、直交するTE0モード(電界がx軸方向に振動)とTM0モード(電界がy軸方向に振動)の光を多重または分離する役割を担う偏波回転合波器(Polarization Splitter-Rotator: PSR)が必須です。
PSRは、2つの入力導波路と1つの出力導波路から構成されており、上からTE0モードを入力するとTE0モードとして、下からTE0モードを入力するとTM0モードとして出力します。
この偏波の回転および合分波のためには、2段階のエッチング*を用いて導波路の上下方向に非対称性を導入する必要があります。一方で、そのような複数の工程を要する場合では、作製誤差による透過特性の劣化が懸念され、特にその劣化は高次モード(TE1モード)が伝搬する箇所で生じやすいです。そこで、透過特性の改善を目的として、該当箇所で導波路不連続がない構造(オールリブ構造)を採用しました。また、強い波長依存性が課題であったTE0-TE1結合器の構造に最適化を施すことで、動作帯域をCバンド(波長1530–1565 nm)からS+C+Lバンド(波長1460–1625 nm)まで拡大することに成功しました。本研究は理論設計のみならず、デバイスの試作と実験評価も行い、さらなる高性能化と実用化に向けて研究を進めています。
*: 材料を削り、導波路を形成する工程
超大容量伝送のための弱結合型数モードマルチコアファイバ

近年のインターネット上のデータ通信量増加に伴い、従来の光ファイバを超える伝送容量を持つ新たな長距離伝送用光ファイバが求められています。そこで注目されている伝送媒体の1つが、複数の独立したコアと多モード伝搬を組み合わせた「弱結合型数モードマルチコアファイバ(Few-Mode Weakly-Coupled Multicore Fiber: FM-WC-MCF)」です。FM-WC-MCFは、各コアが独立した伝送路として機能しながら、各コア内で複数のモード(LP₀₁, LP₁₁α, LP₁₁ᵦ)を同時に伝送することで、同一の外径でありながら従来のシングルモードファイバ(1チャネル)から、4コア×3モード= 12チャネルへの容量拡大を可能にしています。
しかし、こうした多チャネル・長距離伝送においては、図左側のようにコア間クロストーク(Crosstalk: XT)、クラッドへの漏洩損失、コア内のモード間遅延差(Differential Mode Delay: DMD)といった伝送品質を左右する物理的課題が顕在化します。特に、DMDが大きい場合、受信側での信号復元処理が複雑化し、システム全体の通信効率を大きく制約する要因となります。
そこで本研究では、これらの課題を根本的に解決するため、図右側に示すような「階段型3モード4コアファイバ」を設計・提案しています。標準外径(125 μm)のクラッド内に4つの独立コアを等間隔で配置し、各コアには階段状に最適化した屈折率プロファイルを導入しました。この設計により、各コア内で3つの伝搬モードが安定して利用でき、DMDも大幅に抑制されます。さらに、ファイバ全体に共通ディプレスト層を施したクラッド構造を採用することで、コア間クロストークと漏洩損失の同時低減を達成しています。
逆設計手法によるMMIカプラの最適化

データ通信トラフィックの急増に伴い、より高速かつ大容量な光通信技術が求められています。その有力な手段のひとつが、光の位相や偏波状態に伝送情報を対応させるデジタルコヒーレント光通信です。この伝送方式では、多値変調された光信号を電気信号に復調するための光90°ハイブリッド回路が不可欠です。
光90°ハイブリッドを構成する要素として、マルチモード干渉 (Multimode Interference: MMI) カプラは光信号の分岐・合波を担う重要なデバイスです。一般に、MMIカプラは小型化するほど特性劣化が生じやすいという課題があります。そこで本研究では、設定した性能指標を最大化するパラメータを最適化アルゴリズムにより自動的に探索する逆設計手法を適用し、高性能かつ小型なMMIカプラを設計することで,小型かつ高性能な光90°ハイブリッドの実現を目指しています。
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