2020年から日本での商用化が始まった第5世代移動通信 (5G) システムでは、基地局で送信アンテナを100素子程度用いることにより、通信の大容量化および多数端末の同時接続を実現する大規模MIMOシステムの検討がなされています。
従来のMIMOシステムは送信アンテナ素子数が比較的少ないため Zero-Forcing (ZF) 法や最小平均二乗誤差 (MMSE) 法により全アンテナを用いて各ユーザに最適なビーム形成ができるウェイトを生成していましたが、
大規模MIMOシステムにおいては使用する送信アンテナ素子数が膨大であるため、ZF法やMMSE法で送信プリコーディングを行うと計算負荷が大幅に増大することが課題となっています。
この点を踏まえ、大規模MIMOシステムでは送信に使用するアンテナ素子をユーザごとに選択するのみでウェイトを生成するルースビームフォーミング (簡易ビーム形成) という手法が検討されています。
新たな評価関数により、機械学習の効率および性能改善を達成した (図の青色実線)
簡易ビーム形成で解析的に最適ウェイトを得る方法は明らかではなく、また、総当たりで全てのアンテナ選択の組合せを評価するのは膨大な計算時間を要するため現実的ではありません。 そこで、現在は機械学習を用いた検討を行っています。
[文献]
大塚, 西村, 大鐘, 小川, 萩原, 佐藤, "差分進化を用いた簡易ビーム形成に関する検討," 信学技報, vol. 120, no. 74, RCS2020-34, pp. 67-72, 2020年6月.