卒業論文紹介 of 電気制御システムコース



飽くなき向上心

【氏名】

  • ut_chino01.jpg茅野真治君(電気制御システムコース2期生,2010年3月卒業)

【研究テーマ】

  • 脱レアアースを実現するフェライト磁石アキシャルギャップモータに関する研究

【研究の概要】

  • 近年,環境問題への関心の高まりから,ハイブリッド自動車(HEV)や電気自動車(EV)の普及が拡大しています。実際に市販されているHEVやEVに用いられている永久磁石同期モータには,レアアースを原材料とする希土類磁石が使用されています。しかし,レアアースには価格高騰や輸出規制強化による供給の不安定化などの問題があり,レアアースを使用しない永久磁石同期モータの開発が強く望まれています。
  • 本研究では,希土類磁石の代替として,フェライト磁石を使用した実車サイズのHEV駆動用アキシャルギャップモータの開発に取り組んでいます。実際に市販されている希土類磁石を使用したHEV駆動用モータと同体積で同等の出力50kWを達成することを目標としています。
  • フェライト磁石は,希土類磁石の約1/10の性能であり,マグネットトルクが大幅に減少してしまうという問題があります。さらに,HEV駆動用途においては,大電流を通電する必要があり,弱め界磁磁束に対するフェライト磁石の不可逆減磁が非常に進行しやすいといった問題もあります。これらの問題を解決するために提案するモータでは,一般的にHEV駆動用モータの形状は扁平であることから,ラジアルギャップ型に比べ空間を有効活用でき,高トルク化が期待できるアキシャルギャップ型のモータ構造を採用しました。さらに,マグネットトルクの減少を補うために,リラクタンストルクを有効に発生でき,かつ,不可逆減磁にも耐久力のあるロータセグメント構造という新たな回転子構造を提案しました。
  • 提案するモータの設計と解析を繰り返し行った結果,目標の最大出力50kWを達成できるモータを設計することができました。修士課程に進学後,研究を継続して行い,設計したモータの試作機を実際に製作しました。そして,試作機を実験したところ,最大出力51.5kWを達成し,目標を上回る非常に良い結果が得られ,新聞やテレビで研究成果を取り上げてもらいました。今後は,定出力範囲での50kWを保つことと効率向上を目標に研究に励んでいく予定です。

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【苦労した点,楽しかった点】

  • やるべきことが非常に多く,立ち止まっている時間もなく,余裕がありませんでした。しかし,がむしゃらに走り続ける中で,一歩,また一歩と目標に近づいていることが感じられました。また,今まで誰もやっていないことに挑戦し,成果が表れたときには,辛かったが頑張ってやって良かったと実感しました。また,学会発表に行ったとき,地方の美味しいものを食べられるのも魅力的です。

【研究活動記】

  • 3月に研究テーマが決定し,まず,長期・中期・短期目標を決めました。最終目標だけでは,漠然としているので,短期的な目標を常に設定していました。最初,参考書を用いてモータに関する勉強と,解析ソフトとCADソフトの使い方を覚えていきました。夏休み前までは,2次元解析を行っていました。しかし,院試後,3次元解析をすることになり,再びソフトの使い方を覚えることになりました。使っているソフトは同じであるものの,設定の仕方などが異なり,別のソフトを使っている気分でした。その後は,ひたすらモータの設計と解析,考察を繰り返し行って目標を達成することができました。卒論執筆において,1年間行ってきた研究をまとめることで,研究の理解度がさらに高まりました。修士1年では,解析や設計,試験設備のセットアップ,実験を行いました。

【卒業研究を終えてみて】

  • 大学生活の中で,一番時が経つのが早く感じました。それほどまで,毎日が充実していた生活でした。また,常に良い結果が得られるわけではありません。結果が出ないときに,悩み,もがき苦しんだ経験は,修士になっても活きており,今後の人生においても必ず役に立つと思っています。

【後輩達へ一言】

  • 研究室では,課題に対するアプローチの仕方やプレゼンの仕方など,非常に多くのことが学べます。研究室配属は,大学生活での大きな分岐点になると思います。自分に合った研究室,自分のやりたいことができる研究室を選ぶことが重要です。

【プライベート】

  • 研究というと忙しいというイメージがあると思いますが,時間は作ることができます。バイト・飲み会・サークル活動などを修士になっても続けています。オンとオフの切り替えが大事です。よく学び,よく遊ぶことが大切です。