language
注意事項
当サイトの中国語、韓国語ページは、機械的な自動翻訳サービスを使用しています。
翻訳結果は自動翻訳を行う翻訳システムに依存します。場合によっては、不正確または意図しない翻訳となる可能性があります。
翻訳サービスを利用した結果について、一切を保証することはできません。
翻訳サービスを利用される場合は、自動翻訳が100%正確ではないことを理解の上で利用してください。

人間が直面する危険を減らし、安全性を高める
実用化への期待高まるロボット技術の研究

写真:博士(工学)近野 敦

情報科学研究科 システム情報科学専攻 
システム融合学講座 知能ロボットシステム研究室・教授

博士(工学)近野 敦

プロフィール

1988年、東北大学 工学部 精密工学科卒。1993年、東北大学 大学院工学研究科 精密工学専攻博士後期課程修了、同年東北大学工学部助手。1995年、東京大学大学院工学系研究科助手。1998年、東北大学大学院工学研究科助教授。2007年04月、同准教授。2012年、北海道大学大学院情報科学研究科の教授に就任。研究分野は知覚情報処理・知能ロボティクス、知能機械学・機械システム。IEEE、日本ロボット学会、計測自動制御学会、日本機械学会 日本航空宇宙学会等に所属。

モデリング・動力学解析・システム統合をベースとしたロボット開発

知能ロボットシステム研究室ではどのような研究をおこなっているのですか。

近野 メインとなっているのは、①ヒューマノイドロボット ②無人航空機 ③脳外科手術シミュレータの3つです。それぞれ独立しているように見えますが、ベースの部分では、設計などに必要な「モデリング技術」、物の動きを解析する「動力学解析」、それらの要素をまとめる「システム統合技術」が共通しています。

ロボット研究にはさまざまなアプローチがあり、数理的なことを中心にやる人や、シミュレーション技術を追求する人もいますが、私たちの研究室では、実際に物を動かすための一つひとつの技術とそれを統合するシステム統合技術が重要だと考えています。

また、2011年に東日本大震災が起きたとき、私は東北大学で准教授をしていました。震災の経験は、ヒューマノイドロボットや無人航空機の災害対策への応用を強く意識するきっかけになっています。人間が入っていけない危険な場所での調査やがれき処理、救助活動などを想定し、複数のヒューマノイドロボットが協調して物を運ぶシステムや、屋外・屋内を問わず活動できる無人航空機などの研究にも取り組んでいます。

実用化が望まれる画期的な研究成果

ヒューマノイドロボットの特長的なところは何ですか。

写真:博士(工学)近野 敦

近野 ヒューマノイドロボットでは「インパクト動作」をキーワードに研究を行っています。人間の代わりに過酷な作業を行うことが期待されているヒューマノイドロボットですが、その能力はいまだ十分とは言えません。なぜなら、ロボットの発揮できる力は人間と比べて小さいからです。人間の筋肉は非常によくできていて、軽くても大きな力が出せます。しかし、ロボットに人間の筋肉と同じ重さのモーターを装備しても、人間の半分〜10分の1程度の力しか出せません。逆に言えば、人間と同じだけの力をロボットに出させようとすると人間の2倍〜10倍くらいの重さになってしまうのです。

この問題を解決するために考案したのが「インパクト動作」です。ロボットの足、腕、胴などを運動連鎖させ、蓄積・伝達される運動量を力積として作用させます。勢いをつけることで小さなロボットでも瞬時に力を出すことができ、物を動かしたり叩いたりすることができます(解説1)。2005〜2006年に行った愛・地球博,国際ロボット展,こども未来博などの展覧会等でのロボットデモンストレーションでは国内外から高い評価を得ました。

また、複数のヒューマノイドロボットによる協調作業では、一般的な リーダー・フォロワー型の連携ではなく、互いが対等な立場で協調しあう形にしています(解説2)。シミュレーションでは4台の二足歩行ロボットが協調してひとつの重量物を運ぶシステムが実現しています。今後は、実際のロボットを使った本格的な実験を行う予定です。

無人航空機の研究ではどのような技術開発が行われていますか。

写真:博士(工学)近野 敦

近野 最も特徴的なのは「テールシッター型」と呼ばれる垂直離着陸型航空機を採用している点です。これは、長距離・高速飛行が可能な固定翼機(飛行機)と、空中でホバリングできる回転翼機(ヘリコプター)の長所を併せ持つ形態です。機体の尾翼にカメラを搭載し、目的地までは水平に高速で飛行。目的地上空で機体の向きを変えて垂直でホバリングし、GPSで自分の位置を確認しながら設定した範囲内の地上の様子を撮影します(解説3)。

この技術の優れた点は、機体が垂直になった際の反トルク(機体がプロペラと逆方向に回転すること)の防止に翼のエルロンを使っているところにあります。ヘリコプターなどでは反トルクの相殺に二重反転式ローターを用いますが、私たちの試作機ではエルロンを使うので機体の軽量化が可能となります。

3つめの脳外科手術シミュレータはどのような内容ですか。

近野 バーチャルリアリティ技術を応用したもので、力覚提示装置(ハプティックデバイス)を用いてコンピュータの中に作られた仮想的な物体に操作すると本物に触っているかのような感触が返ってくるシミュレータの開発を目指した研究です。脳は他の臓器に比べダメージを受けやすく、手術器具で脳をかき分けたり、組織を切断したりする際の力加減が非常に重要とされています。脳外科医がその技術を習得するには、動物の脳やプラスティックの模型などを使ってトレーニングするのですが、リアルな感触を体験することは難しいのが現状です。本研究では、動物の脳を用いて粘弾性パラメータ の同定を行い、コンピュータ内に脳のモデルを構築。脳腫瘍摘出手術などのシミュレーションシステムの開発に取り組んでいます(解説4)。

この技術が実用化されれば、医師のトレーニングのみならず手術計画の立案・検証、遠隔手術・ロボット手術などの実現に貢献できるのではないかと期待しています。

さまざまな分野での実用化を目指して

先生の研究が将来的に目指していることはどんなことですか。

写真:博士(工学)近野 敦

近野 ロボット開発というと漫画やアニメの世界のロボットを想像すると思いますが、それ以外にもロボット技術はすでに身近なさまざまな場面で実用化されています。例えば、前方に障害物を検知すると自動的にブレーキが作動する「ぶつからない車」などもロボット技術の応用の一例です。これらの技術は何を目的としているかというと、私たち人間の身の回りにある「危険」を減らし、「安全性」を高めることです。私たちが研究している3つのテーマも、まさにそのための技術であり、災害や医療をはじめ社会のさまざまな分野で実用化されることを目指しています。

解説

解説1:インパクト動作

解説2:複数台のヒューマノイドロボットによる協調搬送

解説3:テールシッタ型無人航空機

解説4:脳外科手術シミュレータ