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ネットジャーナル43

条件に縛られず判別可能な一般標本化定理で
サンプリングデータ処理のプロセスを大幅に効率化

写真:博士(工学)野口 聡 准教授

情報科学研究科 情報理工学専攻
数理科学講座  情報数理学研究室・准教授
博士(工学) 田中 章

プロフィール

1994年3月、北海道大学工学部情報工学科卒。1996年3月、同大学院工学研究科情報工学専攻修士課程、2000年9月、同システム情報工学専攻博士後期課程修了。1996年〜1998年、松下通信工業株式会社勤務。 2000年より同大学院工学研究科助手。以後、同情報科学研究科助手、助教を経て2011年より准教授。電子情報通信学会、日本音響学会、米国音響学会、IEEE会員。

 

一般化の決め手となった再生核ヒルベルト空間論

――情報数理学研究室ではどのようなことを研究しているのですか。

田中 コンピュータに関する現象を扱っていますが、中でも工学的対象を数理的な手法によって解析し、その構造とメカニズムを解明することをテーマとしています。他の工学と比べて数学が重要な役割を果たす場面が多く、数学を活用するというよりは新しい数学的な定理を証明することが主な仕事です。

具体的には、デジタル信号処理に重要な「標本化定理」に関する研究です。標本化定理とは、もともとは通信の分野で使われたもので、理論自体は1900年代初頭に生まれています。

音声や音響などのアナログ信号をデジタル信号に変換する際、連続したアナログ信号をある一定の間隔でサンプリング(標本化)します。これを再構築することで元の音声を表現するのですが、どのくらいの間隔(周波数)でサンプリングすればよいかを示すのが標本化定理です。現在よく使われている標本化定理(シャノンの定理)は、信号に含まれる最大周波数の2倍の周波数でサンプリングすれば、元の信号を完全に再構成できるとされていています。しかし、シャノンの定理は帯域制限された信号の場合にのみ使える定理であり、発展が効きませんでした。

私が取り組んでいる研究では、帯域制限という条件に縛られず、より広範な信号を対象とした一般標本化定理の構築を目指したものです。決め手となったのは「再生核ヒルベルト空間論」で、これを取り入れることにより、個々の関数に依存せず、標本点と再生核からのみ標本化定理が成立するかどうかを判別することができるようになりました(解説1)。2010年に、この式に関する論文を発表しています(解説2)。

再生核ヒルベルト空間論を取り入れた標本化定理は、サンプリングしたデータの蓄積や伝送を高効率化できると考えられます。信号の特性を把握し、それに合わせた標本化定理を導出できれば、従来のように2倍の周波数でなくてもサンプリングが可能になるかもしれません。最近は通信速度も上がっていますし、ストレージの容量も大きいので、デジタルデータが多少大きくてもかまわないという考えもあるかもしれませんが、なるべく少ないサンプルで表現できるのであれば、その方が効率はいいはずです。

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