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実世界のさまざまな場面で役立つ
ロバストな画像照合技術の開発

写真:工学博士 金子 俊一

情報科学研究科 システム情報科学専攻・教授

工学博士金子 俊一

プロフィール

1978年北海道大学工学部精密工学科卒業、80年同大学院工学研究科情報工学専攻修了。
80年4月より東京農工大学工学部数理情報工学科に助手として就任、91工学博士号取得、92年同助教授となる。96年より北大工学部助教授に就任、2004年より同教授となる。現在、画像パタン計測・ロバスト画像照合・視覚フィードバック制御・ロバストセンシングなどの分野で研究開発に従事。90年度精密工学会論文賞、98年度精密工学会賞、2000年度小田原記念論文賞各受賞。電子情報通信学会、精密工学会、情報処理学会、計測制御学会、IEEEなどの学会に所属。

産業界での活用が期待される堅固な画像照合技術

金子先生の研究室は、情報科学研究科の中でも規模の大きな研究室のひとつで、企業との共同研究も数多く取り組まれていますね。

金子 私たちの研究室ではロボティクス・メカトロニクスに役立つ画像照合技術などを含むシステム情報科学を研究開発しています。画像照合とは絵合わせのようなもので、ロボットに搭載したカメラで指定されたものを見つけたり、他の映像と比較して同じものかどうかを識別したりする技術です。画像照合技術は生産ラインにおける組立工程や目視検査、道路・駐車場などの画像監視、汎用の画像計測システムなど幅広い分野で活用され、適用範囲の拡大とともに画像認識技術の改良・向上が求められています。私たちの研究室でも、産業応用を前提とした実社会に役立つ技術の開発を目指しています。

画像照合において重要なファクターとなるのが、「明度」と「遮蔽」です。例えば、CC(Correlation coefficient:正規化相関)と呼ばれる手法は、さまざまな分野で活用されている一般的な画像照合技術ですが、対象物の状態や位置・姿勢・大きさの変化、照明変動、遮蔽などの不良条件があると識別できなくなる場合があります。私たちが独自開発したISC(Increment sign Correlation:増分符号相関)では、局所的な明度変化や遮蔽があっても高いロバスト性(頑丈さ・堅固さ)を持った画像照合を実現しています。(図1)(解説1

図1-A
(図1)-A
図1-B
(図1)-B

なぜロバスト性が大切かというと、これからの時代に求められるロボットは、社会のさまざまな場所・場面で人間の代わりに働くことが期待されているからです。無人の工場で精密な製品を作るロボットはすでに実用化されていますが、これからは掃除ロボットや介護ロボット、災害救助ロボットなどのように、同じ空間に人間とロボットが共存するケースが増えてくるでしょう。そんな時、ロボットが人や物の存在をきちんと把握し、明るい場所・暗い場所、粉塵や煙りが舞う劣悪な環境など、どのような条件下であってもターゲットを的確に捉え、正しく動作する「強さ」が必要になるのです。

実験室の中で実現される精度や信頼性よりも、実世界で確実に動作する堅固さを追求する。それは、まさに産業界への応用を目指した方向性と言えますね。

工業・農業・サービス業など多彩な分野への展開

産業応用への展開は、現在どのように進められているのですか。

金子 企業との共同研究は多数行っています。対象物の種類や用途・目的などによってさまざまな手法が必要であり、その中のいくつかを並行して研究しています。基本的には学生とともに研究室独自に開発した手法を評価していただき、共同開発のオファーを受けています。応用分野もじつに多彩で、車載カメラによる車両周辺監視システム、農業用トラクタの速度計測、セキュリティやアメニティの調査・分析、ダニの計測までじつにさまざまです。

その中のひとつが、方向符号照合(OCM:Orientation Code Matching)と呼ばれる手法です。これは、対象物が移動する過程で明度や方向が変化しても、対象物を正しく追跡できるものです。たとえば(図2)では、移動している対象物が照明の当たらない箇所を通過したり向きを変えたりしても、誤認することなく追跡することができます。OCMは、東芝が開発している車載用画像処理LSIVisconti TM(※トレードマーク)を用いた車両周辺監視システムに採用されています。(解説2

(図2)OCM
(図2)SSD

もうひとつご紹介したいのが、M-ICPと呼ばれるもので、これは3次元画像データを照合しマッチングさせる技術です。(図3)は、コーヒーメーカーを3次元センサで計測したデータを2つ用意し、それぞれの形を認識して重ね合わせようとしているものですが、じつは2つのデータにはいくつかの違いがあります。従来使われているマッチング技術(ICP)では対象物の相違点をきちんと把握することができず、完全に重ね合わせることができないのですが、私たちが開発したM-ICPではM推定というアルゴリズムを利用して2つを完全に重ね合わせることができます。2つの画像の違いを認識し、さらにその差異部分をコンピュータ自身が推測して補うというものです。これは工業製品の品質検査などへの展開が考えられ、プレス加工したものを3次元センサで計測し、見本のデータと照合して傷や不良箇所がないかをチェックすることができるようなシステムに応用できると期待されています。

(図3)M-Icp
(図3)Icp
写真:工学博士 金子 俊一

こうしたシステムは画像照合技術だけで実現するものではなく、人や物を識別するカメラやセンサの技術、ロボットを動かす技術など、他の領域と協力して開発しなくてはなりません。その点、本研究室はロボティクス・メカトロニクス、ヒューマンセンシングなどの研究室が一体となった研究体制を整えており、お互いの得意分野を融合した研究を進めることができます。これも、本研究室の優位性のひとつであると思っています。

「学生は共同研究者」をモットーに論文優先の研究体制を築く

企業との共同研究において特に重視されていることは何ですか。

金子 産業応用というと、一般的には企業や業界からの要請があって研究が行われるケースが多く見られますが、本研究室では優れた技術を学生と教員が協力して独自に開発し、それを論文として発表することを第一に考えています。研究会や発表会を通じて企業の方々に我々の成果を知ってもらい、そこから共同研究に着手するというスタンスを堅持しているのです。なぜなら、大学における研究活動は、学生の教育・育成が最も優先されるべきであると考えているからです。

企業や社会からの要請に応える以前に、学生を育てることを重視しているわけですね。

写真:工学博士 金子 俊一

金子 学生は、私たちの教育対象であると同時に共同研究者でもあります。ですから、企業との共同研究にも必ず学生が参加し、そこから得た資金は研究室を運営するために使われています。つまり、今いる学生は先輩たちの作った技術で面倒をみてもらっていることになる。だから、今の学生たちも後輩に何を残すのか、後輩たちのために何をするべきなのかを考えながら研究に打ち込んでいます。学生主体の研究で優れた人材を育成し、その成果を論文という形にして一般社会へ還元する。そこから企業との共同研究が生まれ、世界レベルの先端技術で日本の産業界をサポートしていく。それが我々研究者の役割であり、国立大学の使命であると考えています。

また、本研究室では「透明性」を非常に重視しています。予算や研究内容はもちろんのこと、教員や学生がどんな論文をいくつ発表しているか、どんな企業とどんな共同研究を行っているかなど、成果についても広く情報を公開していきたいと思っています。大学の研究室が透明性を保ち、すべての情報が見えるようになれば、学内外の連携もスムーズになり、お互い切磋琢磨する機会も増えるでしょう。結果的には、それが技術開発のレベルアップにもつながるのではないかと期待しています。

解説

解説1:「明度と遮蔽」

画像照合技術の実応用における不良条件で、最も大きな影響力を持つものが「明度」と「遮蔽」である。一般的な画像照合技術であるCCは、2つのデジタル画像の画素を比較し、明度の一致度が最も高い部分を「同じ画像」として識別する。したがって、フラッシュをたいたり太陽の位置が変わるなどの不良条件があると、同じ対象物でも画像の明度が異なり照合できなくなる場合がある。図1-A(人形)では、画像処理ロボットに右下の画像(人形の頭部)と同じものを探索・照合させる実験を行っているが、対象となる画像はカメラのフラッシュにより人形の顔が見本より暗くなっている。CC、SSDではこの明度の違いを把握することができず、見本とは異なる部分を指し示している。本研究科で開発したISC(Increment sign Correlation:増分符号相関)は明度の違いを読み取り、ほぼ正確な位置を特定することができる。また、図1-B(百人一首の札)では、重なり合った札によって見えない部分(遮蔽された部分)があるが、これもISCでは正しい札を識別することができる。

解説2:「方向符号照合により画像の照合」

スナック菓子の容器がカメラに近づくと、影になる部分ができる。SSDでは影の部分を認識できず追跡し続けることができないが、OCM(OCM:Orientation Code Matching)では追跡が可能である。これは、方向符号照合と呼ばれる手法で、画素近傍におけるコントラストの向きの情報を用いている。これにより、局所的な明度変化に対するロバスト性を確保することができる。