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レアアース不要の高出力モータで
日本の自動車産業に新たな競争力をもたらす

写真:博士(工学) 竹本 真紹

情報科学研究科 システム情報科学専攻・准教授

博士(工学)竹本 真紹

プロフィール

1999年東京理科大学大学院理工学研究科電気工学専攻 修士課程修了。東京工業大学、武蔵工業大学の助手・講師などを経て、2008年に現職へ就任。現在まで一貫してパワーエレクトロニクスの研究に従事。特に「回転機と磁気軸受を一体化したベアリングレスモータ」「磁気軸受」「ハイブリッド自動車用などの高出力・高効率な永久磁石同期モータ」などの電磁機械の開発に取り組む。電気学会、日本AEM学会、IEEE等所属。

モータの開発で自動車産業に貢献

竹本先生は長年モータの研究をされていますが、主にどのようなものですか。

竹本 現代社会において電気エネルギーは、水や空気と同じように無くてはならない存在です。そして、日本では、総電力消費量の内、約55%もの大きな割合をモータで消費しております。したがって、モータの性能向上は、電気エネルギーを有効活用するために欠かせない最も重要な研究テーマの一つとなっております。これまでに、様々な種類のモータの研究開発を行っておりますが,私は特にハイブリッド自動車の駆動用に使われるモータの研究に従事しています。

現在のハイブリッド自動車用モータにはレアアース(希土類元素)を材料としたネオジム磁石(解説1)が使われているのですが、近年はレアアース生産の90%以上を中国に依存しており、価格高騰や輸出規制などの問題が浮上しています。ハイブリッド自動車や電気自動車を普及させるには、安定供給とコストダウンが図れる、レアアースを使用しない安価なモータの利用が望まれているのです。そこで、2008年に新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が立ち上げた「次世代自動車用高性能蓄電システム開発プロジェクト」に参画し、フェライト磁石(解説2)を用いたハイブリッド自動車用モータの開発に取り組みました。

レアアースの代替材料から生まれた新しいコンセプトのモータ

ハイブリッド自動車用フェライト磁石モータとはどういう仕組みですか。

写真:博士(工学) 竹本 真紹

竹本 当初は、従来のネオジム磁石を使ったモータを上手く発展させることで、フェライト磁石でも十分な出力を得られるのではないかと考えました。しかし、解析を進めた結果、ネオジム磁石とフェライト磁石の特性が大きく異なることがわかりました。ネオジム磁石をフェライト磁石に置き換えるだけでは不十分で、モータの形状そのものから考え直す必要があったのです。

フェライト磁石に特化したモータ形状のコンセプト(解説3/図1)は比較的早い時期に見えてきたのですが、本当に大変なのは設計に落とし込んでいく作業です。自動車用モータというのは要求される性能がハイレベルなので、細かい部分まで綿密に詰めていかなければなりません。そして,高性能に加えて、製造や工業製品化にも耐えうる設計をいかにクリアするか、シミュレーションと解析を繰り返しながら細部を最適化していきました。

2010年9月にNEDOと共同で発表した「レアアースを使わない新構造の50kwハイブリッド自動車用フェライト磁石モータ」(写真1)の開発は、これまでの研究開発の成果としてまとめられたものです。従来のレアアースを使用するハイブリッド自動車用ネオジム磁石モータに匹敵する50kwを発生できるモータに仕上がりました。近年激しさを増す次世代自動車開発において、わが国の競争力を高めることが期待されています。

フェライト磁石モータが実用化されることでどのような変化が起きるのでしょうか。

竹本 フェライト磁石を使って工業製品化しやすいものが提案できたことは大きな成果だと思います。しかし、実はレアアースは今後も必要とされる材料なのです。レアアースを使ったネオジム磁石モータは非常に性能が高く、設計や製造技術も高度に発達しています。そのため、私たちの研究室には、レアアースを使ったネオジム磁石モータの高度化・高性能化の研究をしている学生もいます。私たちが目指しているのは、単純な「脱レアアース」ではなく、レアアースを今後も有効に使い続けるための代替手段の開発なのです。例えば、高性能が要求される高級車にはレアアースを使い、安価な小型車には代替材料を使うなど、選択の幅を広げることが重要だと考えています。

モータ1
モータ2
(写真1)レアアースを使わない新構造の50kwハイブリッド自動車用フェライト磁石モータ

世に送り出し、社会に役立つエンジニアリングを目指して

研究活動を通じて、学生にどのようなことを学んでほしいと考えていますか。

写真:博士(工学) 竹本 真紹

竹本 日々の研究活動で心がけているのは「シミュレーションだけで終わらせない」ということ。製作と実証を必ず行うようにしています。コンピュータの中ではパーフェクトなものができても、実際に作ることができなければ社会の役に立ちません。解析やシミュレーションのデータを追うだけでなく、自分たちの手を動かして試作品を作ってみることの大切さも経験してほしいと思います。

私たちエンジニアは常に新しいモノを生み出すことが求められますが、閃きに頼るだけでは新しいアイディアは生まれません。今までの経験や知見の中から次につながる何かを発見し、組み合わせ、見る角度を変えたりすることで新しい発想を引き出す。そういうモノづくりのあり方を身に付けたエンジニアを育てていきたいですね。

解説

解説1:ネオジム磁石

ネオジム磁石は「ネオジム」や「ジスプロシウム」などの希土類元素(レアアース)から作られる永久磁石で、非常に強い磁力を持つ。ハイブリッド自動車用モータの他、HDDや携帯電話、パソコンなど多くの家電製品に使われている。

解説2:フェライト磁石

北フェライト磁石は棒磁石や小型モータ、家庭やオフィスで使われるマグネット製品など一般的に普及している磁石で、価格はネオジム磁石の10分の1程度。レアアースの代替材料としての可能性が期待されている。

解説3/図1:レアアースを使わない新構造の50kwハイブリッド自動車用フェライト磁石モータ

回転子にセグメント構造を採用し、フェライト磁石と圧粉鉄心を交互に組み込むことでマグネットトルク(磁石が引き合ったり反発したりする力)とリラクタンストルク(磁石が鉄などを引きつける力)の2種類を利用してモータを回転させる。これにより従来のハイブリッド自動車用レアアースモータに匹敵する出力を実現した。

新しく開発したモータの構造
(図1)新しく開発したモータの構造