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幅広い帯域、多様な電波の有効活用を目指し
UWBの実用化時代に備えたアンテナ技術の開発

写真:博士(工学)山本 学

情報科学研究科 メディアネットワーク専攻 
情報通信システム講座 ワイヤレス情報通信研究室・准教授

博士(工学)山本 学

プロフィール

1993年北海道大学工学部電子工学科卒。1998年同大大学院博士課程了。同年北海道大学大学院工学研究科電子情報工学専攻助手、2000年同助教授、2004年北海道大学大学院情報科学研究科助教授、2007年同准教授、現在に至る。主な研究分野は平面アンテナ、ミリ波アンテナ・導波路、携帯端末アンテナ等の研究。平成9年度電子情報通信学会学術奨励賞。平成18年度電子情報通信学会通信ソサエティ優秀論文賞受賞。電子情報通信学会、IEEE会員。

さらなる高速化・大容量化・高品質化が求められる次世代無線通信システム

携帯電話やノートパソコンが普及した現代、次世代の高速無線ネットワークにはどのような技術革新が求められているのでしょうか。

山本 高品質な映像や音声などの大容量データを高速伝送するための無線システムは、携帯電話やノートパソコンなどの普及により急激にユーザ数が増えています。現在、日本国内で普及しているW-CDMAやCDMA2000といった携帯電話向けの高速無線通信規格は第3世代と呼ばれていますが、これらの方式に変わるものとしてLTE(Long Term Evolution)と呼ばれる新しい通信規格を利用した携帯電話サービスが登場し、第4世代(3.9世代とも)と呼ばれています。しかし、携帯電話をはじめとする主な移動体通信に使われている周波数帯(300M〜30GHz)は現在最も利用が集中している帯域で、さらなる高速化・大容量化・高品質化を目指すには、より多くの周波数・電波を活用することが求められます。

次世代高速無線システムで今注目されているのが、MIMO(Multiple-Input-Multiple-Output)(解説1)やUWB(Ultra Wide Band)技術です(解説2)。MIMOは、複数のアンテナを使って送受信することで伝送時間を短縮する技術で、すでに一部で実用化されています。UWBは、7〜10GHzという幅広い周波数の帯域で送受信する技術ですが、通信システムや送受信機器などについてはまだ研究段階です。

本研究室では、MIMOやUWB技術を用いた場合にも対応可能なアンテナ技術の開発をはじめ、電波環境評価、医療器へのEMI(電子機器が発する通信用の電波や高周波の電磁波ノイズが周囲の電子機器や人体に与える影響)評価試験、電波吸収材料・擬似人体の開発などを行っています。

MIMOやUWB技術に対応した新しい小型アンテナの開発

具体的にはどのようなことを研究しているのですか。

写真:博士(工学)山本 学

山本 MIMO技術を利用した無線装置では、送受信側ともに複数のアンテナを用いる必要があることに加えて、アンテナ間の距離を可能な限り離す必要があります。このような制約があるMIMO用アンテナに関する研究は発展途上なのが現状です。また、次世代の高速無線システムでは、携帯電話やノートパソコンなどの小型携帯端末がメインの構成機器となることが予想され、これらの小型機器に実装可能なMIMO用小型アンテナ技術の開発が課題となっています。

UWB技術では、従来の無線伝送方式に比べて非常に広い範囲にわたる周波数の電波(7〜10GHz)を扱います。一般的なアンテナは、限られた範囲の電波を送受信することしかできませんので、UWBの電波を送受信できるような特殊なアンテナが必要です。さらに、将来MIMO技術とUWB技術が併用された場合にも対応可能な、小型高性能アンテナ技術を開拓することも大きな課題のひとつです。

電波の出入り口となるアンテナには多種多様な形状・構造のものがありますが、本研究室では平面構造のアンテナに着目し、MIMOやUWBへの応用が可能なアンテナ構成法の開発を進めてきました。平面構造のアンテナに着目した理由は、携帯電話やノートパソコンに内蔵するなど、小型化が求められる場合に有利だと考えたからです。

本研究室で開発したUWB用の小型アンテナは「葉状ボウタイアンテナ」(解説3)といい、テフロンの薄い板に銅箔を張ったものです。葉状とはその名の通り木の葉の形をしており、これが低い周波数から高い周波数まで幅広い電波を送受信するのに最適だと判断しました。さらに、このアンテナをMIMOとUWB技術併用された場合に応用するための技術的課題を洗い出すとともに、それらをクリアするための検討・開発を進めているところです。

UWB無線の普及に備えた研究開発の継続

今後はどのような展開が予定されているのですか。

写真:博士(工学)山本 学

山本 UWB技術はまだ実用化研究の段階にあり普及には至っていませんので、今回開発したアンテナも実用化はされていませんが、UWBの利用が本格化した際には、直ちに実用に対応できる状況です。MIMOとUWBの併用も、実用化に向けた研究・標準化が進められており、将来の実用化に向けてさらなる研究開発を続けていきます。また、一般的なUWBよりもさらに周波数の高いミリ波(24〜29GHz)の活用にも大きな期待が寄せられており、本研究室ではミリ波用アンテナの研究も行っています。

私は高速無線通信用アンテナ技術の研究者なので、通信システムそのものや携帯端末機器などの専門家ではありませんが、次世代高速無線ネットワークの実現にはこれらの分野を融合した研究開発も必要だと思います。近年は半導体チップにアンテナを載せ、一体化して小型化する研究も行われていますし、半導体の研究者や研究機関と協力し合うことで新しい可能性を切り拓くこともできるのではないかと考えています。

解説

解説1:MIMO(マイモ)

Multiple-Input-Multiple-Output(複数の入口と出口を持つシステム)の略称で、信号を送り出す側(送信側)と信号を受ける側(受信側)に複数のアンテナを持つシステム。送信データをあらかじめ複数の信号(ストリーム)に分割し、複数の送受信アンテナを用いて同じ周波数帯域で同時転送することで、大容量のデータを移動通信環境でも高速に無線伝送できる。最近では無線LANなどで実際に使われている。

図1:MIMO技術の概念図
図1:MIMO技術の概念図

解説2:UWB

Ultra Wide Band(超広帯域)の略。一般的な無線通信システムでは、限られた範囲の周波数の電波を利用するが、UWB技術では周波数が広い範囲にわたる電波を幅の狭い(1ナノ秒以下)パルス状の電波(インパルス信号)による通信を行う。これにより大容量のデータを高速に伝送できる技術として注目されている。また、UWB技術は、高速データ伝送に加え、センサやレーダなどの検知システムへの応用も可能と考えられている。

図2:UWB
図2:UWB

解説3:葉状ボウタイアンテナ

テフロンの簿版に木の葉状のアンテナ素子を配置。他の構造のアンテナと同様に平面構造のアンテナは限られた範囲の電波だけしか送受信できないが、アンテナ素子の形状を工夫することで、UWB無線に応用可能な平面アンテナの開発に成功した。

写真1:葉状ボウタイアンテナ
写真1:葉状ボウタイアンテナ