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新しい映像と音声がメディア表現を変える
驚きの先にある感動で夢のある未来社会を

写真:工学博士 山本 強

情報科学研究科 メディアネットワーク専攻 
情報メディア学講座 情報メディア環境学研究室・教授

工学博士山本 強

プロフィール

1976年 北海道大学工学部電子工学科卒、同年同大学院修士課程入学。1978年 同修了、同年富士通株式会社入社。1980年 同社退社、同年北海道大学大学院工学研究科博士後期課程入学。1982年同中退、同年北海道大学工学部電気工学科講師。1986年同助教授。1989年北海道大学大型計算機センター(現情報基盤センター)助教授。1996年同教授。1999年 北海道大学大学院工学研究科教授、2004年4月情報科学研究科教授、2005年4月から2011年3月まで情報基盤センター長併任、2012年4月から産学連携本部副本部長兼任、現在に至る。研究活動はコンピュータグラフィックス、記号処理、情報ネットワーク、医用画像処理、超音波応用など。ACM SIGGRAPH, IEEE, 電子情報通信学会、映像メディア学会各会員。

誰も見たことがない映像やビジュアルをつくる

先生の研究のコンセプトはどのようなものですか。

山本 私の研究室ではCG、画像・映像処理、大量データの可視化、音声など幅広い分野で新しい映像をつくる技術を研究しています。キーワードは「誰も見たことがない映像、誰も見たことがないビジュアルをつくる」。

その一例が、複数のカメラで撮影した映像を合成して360度にわたる左右、上下の見回しが可能な全周ステレオ撮影システム(解説1)です。さらに、雲や稲妻、炎、煙、水どの自然現象を自動生成するコンピュータグラフィックスの研究や、鏡面反射・光跡など光学現象の表現、非写実的レンダリングなどにも取り組み、新しい技術の開発とそれを使った新しいメディア表現を提案しています。

映像だけでなく音についても関心を持っています。目と耳は人間の知覚の双璧で、多くのメディアが映像と音を同時に発信しています。映像のみならず、音についても新しい技術や手法を創り出すことができれば、メディアの使い方を大きく変えられるのではないかと考えています。

研究室の研究テーマはCGや映像関係が多いのですが、今回は、最近修士の学生さんが取り組んでいるちょっと変わった研究テーマを紹介しましょう。元来、音というものは空間内に拡散するのが前提で、広範囲に同じ情報を伝えやすい反面、聞く人を限定することができず、また、複数の音源があると干渉しやすいという特徴があります。私たちが取り組んでいるのは超音波パラメトリックスピーカと呼ばれる方式で、音が拡散せず、スピーカを向けた人にだけ聞こえる技術です。指向性スピーカと超音波画像合成の原理を組み合わせることで、音の伝達範囲を極めて狭くすることができ、場合によっては右耳と左耳に違う音を聞かせることも可能になります。

音声メディアの使い方を大きく変える超指向性スピーカ

超指向性スピーカとはどのようなものですか。

写真:博士(工学) 山本 強

山本 超指向性スピーカは超音波の直進性を利用して、狭い範囲にのみ音情報を伝えることができるスピーカです。以前から注目されている技術で、博物館・美術館の音声ナビゲーションなどで実用化されているものもあります。私たちは、超音波パラメトリックスピーカとSSB方式を応用したマルチビーム合成技術を組み合わせ、さらなる指向性の向上を目指しています(解説2)。

パラメトリックスピーカは超音波を使います。超音波自体は人間の耳には聞こえませんが、超音波の伝えるエネルギーが空気中で可聴音に変換され、音声を聞くことができます(図A)。通常、私たちは音源(=スピーカ)のある場所から音が伝わってくると認識しますが、パラメトリックスピーカの場合は、音源が離れたところにあっても耳元で音が鳴っているように感じます。

もうひとつのコア技術であるマルチビーム合成法は、30年ほど前に研究されていた超音波映像技術の原理を利用しています。メインローブ幅の広いビームと狭いビームを合成し、結果的に指向性の強い狭ビームをつくり出す技術です。一般的なパラメトリックスピーカでは、狭ビームを発信するには多数の超音波振動子を密に敷き詰める必要がありましたが、マルチビーム合成を利用することで従来手法よりも少ない振動子で効率的に狭ビームを生成することができます。本研究では、スピーカの開口部の幅、波長、振動子アレイの列幅の構成を工夫することで、振動子を密に配置することなく狭ビームを形成することに成功しました(図B)。

音をスポッティングし、一人ひとりに違う情報を届けることができれば、音のメディアの使い方がガラッと変わるのではないでしょうか。例えば、特定の場所に近づいたときだけ聞こえるアナウンスや、ポスターやショーウインドウの前を通るときだけ聞こえる音楽・メッセージなど、公共機関や街頭広告での利用が効果的だと思います。

実社会の中で、今必要とされている技術を見つけ出す感性を養う

情報科学は、社会にどのように役立てるべきだとお考えですか。

写真:博士(工学) 山本 強

山本 私は、20年ほど前から医学部と共同で医用画像診断システムの開発を行っており、2002年には大学発ベンチャーの(株)メディカルイメージラボの設立に参画しました。10年以上にわたり会社経営に携わってきて感じるのは、現実社会の問題は大学の中だけにいては分からないことが多いということです。

知識や技術を学ぶだけでなく、それを目の前にある問題にどう適用するか、そこからどんな解決策を見つけ出すかという感性を磨くことが大切です。ビジネスや行政といった世界にも触れ、情報を共有し、お互いを知る。そういう経験をする場を提供することも大学の役割ではないかと考えます。

コンピュータや情報処理技術の急速な性能向上により、過去の研究成果や理論が再発見される時代になってきました。原理は分かっていても実現できなかったものが、今は形にできるようになっています。私たちが研究室で実際に作ってみた超指向性スピーカのように、理論だけでなく、実際にモノを作ってみる(実装する)ことも情報科学を学ぶ学生にとっては重要な経験だと思います。

これからの時代、私たち研究者は社会に役立つ道具をたくさん持ち、それを柔軟に使いこなす能力が求められるでしょう。私のモチベーションの源は「人をビックリさせたい」という思いです。そしてビックリの先にある感動でビジネスや社会を変えたい。エネルギー問題や高齢化社会についても、従来のベクトルとはまったく異なる発想で問題解決に挑む研究者が現れるべきではないかと思っています。

解説

解説1:全周動画像収録・伝送・再生システム

実写画像をもとに仮想空間を構築する方法の一つとして、パノラマ画像を用いる方法があり、その実例として QuickTimeVR や私たちが開発した PanoVi などが挙げられる。本システムではこれをステレオ画像へと拡張し、立体表示かつ360度にわたる左右への見回しが可能な仮想空間を実現する。特に本システムでは Concentric Mosaics とよばれる手法を用いることにより、従来のステレオパノラマ画像による手法に比べ、左右への見回しをおこなった際の視差を正確に再現できるという特長がある。

全周動画像収録・伝送・再生システム
全周動画像収録・伝送・再生システム

解説2:マルチビームSSB合成方式による超指向性パラメトリックスピーカに関する研究

従来のパラメトリックスピーカは、超音波ビームの可聴領域を狭めるには多数の振動子を密に敷き詰める必要があったが、マルチビーム合成を組み合わせることで振動子を密に配置することなく指向性ビームを形成することが可能になった。また、パラメトリック音の変調方式にはいくつか種類があるが、本研究では(SSB)変調を用いることでマルチチビーム合成を可能とし、自己復調後の音の歪を抑えている。

マルチビームSSB合成方式による超指向性パラメトリックスピーカに関する研究
マルチビームSSB合成方式による超指向性パラメトリックスピーカに関する研究
マルチビームSSB合成方式による超指向性パラメトリックスピーカに関する研究
マルチビームSSB合成方式による超指向性パラメトリックスピーカに関する研究
マルチビームSSB合成方式による超指向性パラメトリックスピーカに関する研究
マルチビームSSB合成方式による超指向性パラメトリックスピーカに関する研究

図A:音の発生原理

図A:音の発生原理

図B:システム構成

図B:システム構成
図B:システム構成