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再生可能エネルギーの有用性向上を目指して
実証研究が進むメガソーラーとマイクログリッド

写真:博士(工学) 原 亮一

情報科学研究科 システム情報科学専攻 
システム融合情報学講座 システム統合学研究室・准教授

博士(工学)原 亮一

プロフィール

1998年、北海道大学工学部電気工学科卒業。2000年、北海道大学大学院工学研究科修士課程修了。2003年、北海道大学大学院工学研究科博士後期課程(情報エレクトロニクス系 システム情報工学専攻)修了。2006年、横浜国立大学大学院工学研究院助手(知的構造の創生部門 電気電子と数理情報分野)、北海道大学大学院情報科学研究科助教授(システム情報科学専攻システム融合情報学講座)を経て、2007年より北海道大学大学院情報科学研究科准教授。

既存の電力システムをより効率良く利用するために

先生の研究はわが国のエネルギー問題とどのような関連性があるのでしょうか。

原 エネルギー分野は社会を支える重要なインフラの一つで、安価で安定的にエネルギーを供給する体制を整えることは非常に重要です。エネルギー分野は資源の開発から消費まであらゆる領域で盛んに研究が行われていますが、私たちは電力システムについて研究をしています。電力システムは、非常に大規模かつ複雑なシステムです。しかも、どこか一箇所で事故や故障が起これば全体に影響が及び、災害時には長期停電なども起きます。電力システムにかかる予算も大規模で、1%程度の改善でも国民経済に大きな影響を与えます。輸入資源の高騰が続く中、電気料金の上昇を抑えつつ安定した供給を維持するためには、要素技術の開発のみならず既存の電力システムをより効率的に活用するための工夫や仕組みづくりも必要なのです。

私たちの研究室では、既存の要素技術を組み合わせて効率的に発電・利用する仕組みを研究しています。特に近年は、太陽光発電や風力発電など「再生可能エネルギー(RE)」と呼ばれる電源に注目が集まっていますが、RE電源の多くは出力が天候に左右される制御性の低い電源であり、系統電源(電力会社が保有する大規模な火力発電所・水力発電所など)に影響を与えることなく適切に導入し、リスクを抑えながら効率的に活用するための検証やルール作りが急務とされています。東日本大震災以降、原子力発電が利用できない状況がつづいており、エネルギーセキュリティについて改めて考え直すべき問題点も浮き彫りにされています。私たちの研究は、それらの問題を見すえながら、有用性の高いシステムをいかに構築していくかを目指すものです。

複数の電源と蓄電池を組み合わせた電力システムの実証研究

具体的な取り組みとしてはどのようなものがありますか。

写真:博士(工学) 原 亮一

原 まずひとつは、大規模太陽光発電(メガソーラー)と蓄電池と組み合わせることで出力の安定性を向上すると同時に、系統電源との協調性をいかに図るかを検証するプロジェクトがあります。現在、電力会社では一日の電力の消費量を予測し、過不足なく供給できるよう細かく出力調整を行っています。メガソーラーは火力・水力・原子力に続く新しい電源として期待されていますが、天候により発電量に大きなバラつきが出るようでは系統電源と同じように使うことはできません。そこで、メガソーラーに蓄電池を接続し、発電量が足りない時間帯を蓄電池で補うことで出力のバラつきを抑える方法を研究しています。2006年度から2010年度にNEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が実施した「大規模太陽光発電系統安定化等実証研究」(解説1)では、稚内に5,000キロワットのメガソーラーを導入し、さらに蓄電池を併設して発電量の安定化や系統電源との協調を図るための技術を検証しました。その結果、蓄電池を使うことで出力のバラつきを90%程度抑えられることがわかりました。

さらに2012年度からは、道内2箇所のメガソーラー、3箇所の風力発電サイト(ウインドファーム)、士幌町に設置したバイオガス発電および稚内市に設置した3種類の蓄電池(NAS電池、リチウムイオン電池、ウルトラキャパシタ)を情報ネットワークで連携し組み合わせる実証実験を進めています(解説2)。稚内と伊達にあるメガソーラーと稚内・苫前・瀬棚の3箇所にある風力発電サイトの発電量をリアルタイムで計測するとともに、気象予報に基づいて発電量を予測し、バイオガス発電と蓄電池による出力安定化をねらっています。また、地理的に離れた複数地点を対象とした場合の出力変動や出力予測誤差のならし効果についても検証しています。3種類の蓄電池はそれぞれ異なった特徴を持っているので、よりシンプルな構成で,より安価なコストで目的を達成できるよう蓄電池の使い分けや効率的な使い方も検討しているところです。

小規模電力ネットワークを形成する直流マイクログリッドの実証研究

他にはどのようなものがありますか。

写真:博士(工学) 原 亮一

原 もうひとつは、「直流マイクログリッドのエネルギーマネジメントシステムの実証研究」(解説3)です。マイクログリッドとは小規模電力系統という意味で、エネルギー供給源と消費施設をもつ小規模なエネルギー・ ネットワークのことです。具体的には、敷地内にRE電源や小型の発電機、蓄電池を配置し、発電・輸送・消費のサイクルを同敷地内で自前でまかなうものです。このようなアイデアはすでに他所でも検討されていますが、今回のプロジェクトで最も特徴的なのは、建物への電力供給を直流で行うことにあります。電力会社から供給されている電気は交流ですが、太陽光発電や蓄電池は直流で動作します。また、家電機器・オフィス機器についても、交流の電気を直流に変換して使用するものも多くあります。したがってマイクログリッドのように電源と家電・オフィス機器が同じ建物内にあるのなら、直流でダイレクトにつないだほうが変換の手間もなく、変換時に発生する損失も少なくなると考えられます。本プロジェクトでは照明やパソコンなどの電子機器も直流で受けることができるような特別仕様のものを用意し、直流で供給することでどの程度の損失改善効果があるかを検証する予定です。

再生可能エネルギーは現時点では導入コストが高く、経済性・信頼性・環境性などさまざまな側面からの検討が必要です。電気を作る側や使う側がそれぞれ何を優先し、どれだけのコストをかけて、どんなシステムを選択するのか、その議論のベースとなるデータも足りません。私たちの研究がこれからのエネルギー問題を考える上での一つの手がかりとなり、より良いインフラの構築に役立つことを期待しています。

解説

解説1:NEDO「大規模太陽光発電系統安定化等実証研究」

2006年度から2010年度にかけて、北海道稚内市に5,000kWのメガソーラー施設を建設し、大規模PV(photovoltaics、Solar Photovoltaics:太陽光発電)の系統連系の影響評価と系統安定化技術の開発、数時間オーダの出力制御技術の開発、高調波抑制技術の開発、シミュレーションツールの作成、大規模PV発電所建設の手引書の作成などを目的とした実証研究を行った。日射量予測に基づき出力計画を作成、系統電源と協調的な運転を行う。計画地とPV出力の差分はNAS電池で吸収し、数時間単位で出力を制御する。これにより、出力変動の90%以上を吸収することが実証できた。

稚内メガソーラ発電所
写真:稚内メガソーラ発電所

解説2:風力発電等分散型エネルギーの広域運用システム –蓄電池・バイオガス発電の協調制御-

環境省の2012年度「地球温暖化対策技術開発・実証研究事業」に採択されたプロジェクト。稚内、伊達のメガソーラーと、道内3箇所(稚内、苫前、瀬棚)のウインドファームをオンラインで結び、出力変動や出力予測誤差のならし効果を考慮した蓄電池等による効率的な出力安定化技術の開発を目指す。出力安定化のための設備としてウルトラ・キャパシタ、リチウムイオン電池、NAS電池の3種類を組み合わせて協調的に補償することを検討している。

図:風力発電等分散型エネルギーの広域運用システム
図:風力発電等分散型エネルギーの広域運用システム

解説3:直流マイクログリッドのエネルギーマネジメントシステムの実証研究

家電機器・オフィス機器・工場内の電力機器などに対して,自前の小規模分散型電源から自立的に電力を供給可能なシステムをマイクログリッドと呼ぶ。本実証研究では既存の電力システムが採用している交流ではなく,太陽光発電,蓄電池,電気自動車,照明,パソコンなどと相性の良い直流を主とした電力供給方式の確立,ならびに発電予測・需要予測に基づく蓄電池・電気自動車の充放電スケジュールを最適化するエネルギーマネジメントシステム(EMS)を開発している。

図:直流マイクログリッドのエネルギーマネジメントシステム
図:直流マイクログリッドのエネルギーマネジメントシステム