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「やわらかいハードウェア」で高速かつ低電力を実現
情報処理方式を革新する画期的な技術の開発・提案

写真:博士(工学)本村 真人

情報科学研究科 情報エレクトロニクス専攻 
集積システム講座 集積アーキテクチャ研究室・教授

博士(工学)本村 真人

プロフィール

1985年、京都大学理学部卒。1987年、同大学院理学研究科修士課程修了、日本電気株式会社(NEC)に入社。1991年、アメリカ・MIT客員研究員。1996年、博士論文(京都大学・工学)。以後、2011年までNECでシステムLSIの研究開発等に従事。2011年4月、北海道大学大学院情報科学研究科教授に就任。電子情報通信学会(IEICE)等所属。2011年、「動的再構成プロセッサの研究開発とその画像処理機器応用」で電子情報通信学会業績賞を受賞。

ソフトウェアのように柔軟な「やわらかいハードウェア」の開発

先生の研究テーマである「ソフトウェアとハードウェアの境界領域での研究」とはどのようなものですか。

本村 主にLSI(大規模集積回路)の設計・開発に関するものですが、単に回路設計するだけではなく、ハードウェア上で直接プログラムを実行させる技術の研究開発を行っています。
LSIはコンピュータをはじめ各種デジタル機器の中枢処理エンジンとして広く使われています。モバイル機器や環境に埋め込まれたセンサなど身近にあるフィジカルな世界から、ビッグデータを処理するデータセンターやクラウドコンピューティングといったサイバーの世界まで、LSIは社会の隅々に浸透し、さまざまな分野で活用されています。特に近年は、蓄積・活用されるデータ量が急速に増大し、膨大なデータをいかに高速に処理し、有益に活用するかが大きな課題となっています。また、データ量の増大とともに消費電力も増える一方となり、エネルギー問題と相まって社会問題化しています。これからの社会の発展を支えていくためには、サイバーの世界でもフィジカルの世界でも「高速かつ低電力」の実現が急務なのです。

そのために今後ますます重要になってくるのが「ソフトウェアのハードウェア化」と呼ばれるものです。これが可能になれば、処理速度が速くなるうえ同じ処理を一桁あるいは二桁少ない電力で実行することができるようになります。

ソフトウェアのハードウェア化というのはどのように行うのですか。

本村 簡単に言うと、汎用ハードウェア(プロセッサ)をソフトウェアに合わせてカスタマイズすることです。従来ソフトウェアで実行していた処理をハードウェア上で行えるよう、LSIに専用回路をあらかじめ作っておくのです。これにより処理時間と消費電力の大幅な削減が可能になります。

しかし、そこにはひとつ問題があります。限られた用途にしか使えないLSIは開発コストが高くなってしまうのです。そこで、ある程度汎用性を持ちながら、ソフトウェア的な処理拡張・書き換えが可能なハードウェア技術が注目されています。カスタム化しつつソフトウェアのように可変できるハードウェアという意味で「やわらかいハードウェア」と呼ばれるものです。

MemcachedをFPGA化するフロントエンドコンピューティング

具体的な研究事例を教えてください。

写真:博士(工学)本村 教授

本村 まず、大規模分散処理環境におけるMemcachedの加速技術があげられます。Memcachedは、FacebookやTwitterなどのビッグデータサービスの根幹をなす分散キャッシュサーバです。本研究では、FPGAをサーバに活用し、バックエンドのCPU上のソフトウェアが担当してきた計算機能と記憶機能の一部をネットワークインタフェース部(フロントエンド)のFPGAで代替実行するアーキテクチャを開発しました(解説1)。

写真:博士(工学)本村 教授

Memcached処理をFPGA化する研究は既に行われていますが、バックエンド(サーバ本体)からフロントエンドに処理とデータをキャッシングし、両者が協調して対処するという方式は本研究が初めて提唱するものです。この考え方を一般化して他のサーバ処理にも適用することを狙っており、インターネット経由で送られてくるデータの一部をフロントエンドのみで処理することから「フロントエンドコンピューティング」、または瞬時にデータを判別・分類・加工することから「反射型情報処理アーキテクチャ」などと呼んでいます。

プロセッサの電力消費を劇的に削減する限定的動的再構成アクセラレータ

他にはどのような研究成果がありますか。

写真:博士(工学)本村 教授

本村 もう一つは、プロセッサそのものの低電力化を実現する技術開発です。汎用のプロセッサを使うことで生じる無駄や非効率を解消し、消費電力の削減を目指すものです。前述したように、ハードウェアをあらかじめカスタム化すれば処理の負荷は減るものの、カスタム化しすぎると用途が限定されてしまうというジレンマがあります。これに対し、プログラムの実行中に回路構成を書き換えることができる「動的再構成(ダイナミックリコンフィギュラル)ハードウェア」という技術がありますが、回路を切り替える際に充放電電流が生じるため、消費電力をいかに抑えるかが重要になってきます。

本研究では、データに依存せず固定的に処理できる部分と、データの流れに応じて回路を動的に再構成する部分をあらかじめ切り分け、動的再構成する部分を限定することで柔軟性と電力効率の両立を実現する「限定的動的再構成アクセラレータ」を開発しました(解説2)。試作LSIでの評価では、従来の7割以上の消費電力の削減を達成することができ、今後の応用展開に期待が持てます。

エネルギー問題や環境問題が取りざたされている中、非常にインパクトのある技術ですが、実用化の予定などはありますか。

本村 Memcachedについては、試作機で評価できるレベルまで達しています。今後は国際会議などで積極的にアピールし、企業との連携を図っていこうと考えています。プロセッサの限定的動的再構成アーキテクチャについては、アーキテクチャと並行してソフトウェアをつくる環境も整えていかなくてはならないので、もう少し時間がかかると思います。現在、そのあたりの進め方を模索しているところです。

2020年にはムーアの法則の終焉によって情報機器の性能向上・電力低減の面で大きな壁が立ちはだかると言われており、その後の社会の発展には情報処理方式の技術革新が必要になると考えられます。私たちの研究は、その技術革新の方向性を指し示す技術のひとつとして、今後ますます重要になってくるだろうと考えています。

解説

解説1:フロントエンドMemcachedコンピューティング

Memcachedサーバの処理時間の大半は、所望のデータがメインメモリにあるか否かを与えられたkeyから判定し、あればそのvalueを返す単純動作(get 動作)に費やされる。この get 処理をフロントエンドにキャッシングすることで、Memcachedの更なる高スループット化・低レイテンシ化・低電力化が可能になる。

図1

解説2:組み込みプロセッサの低電力化に向けた限定的動的再構成アクセラレータの設計と評価

ALU以外の機能で消費電力の大半を占める命令フェッチ/デコード、レジスタファイルアクセス、パイプラインレジスタ等の冗長な電力の削減を目指す技術。アクセラレータを①ALUとスイッチの配列(STAtic ALU array) ②スイッチとレジスタの配列(DYNamic operand forwarding matrix)の2部構成にし、DYNの回路構成のみを動的に切り替えることで柔軟性と電力効率の両立を実現している。

図
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