language
注意事項
当サイトの中国語、韓国語ページは、機械的な自動翻訳サービスを使用しています。
翻訳結果は自動翻訳を行う翻訳システムに依存します。場合によっては、不正確または意図しない翻訳となる可能性があります。
翻訳サービスを利用した結果について、一切を保証することはできません。
翻訳サービスを利用される場合は、自動翻訳が100%正確ではないことを理解の上で利用してください。

3次元空間を完全に再現する計算機合成ホログラム(CGH)
社会のさまざまな場面で実用化に期待

写真:博士(工学)坂本 雄児

情報科学研究科 メディアネットワーク専攻 
情報メディア学講座  メディア創生学研究室・教授

博士(工学)坂本 雄児

プロフィール

1983年北海道大学工学部電気工学科卒業。1988年同大学大学院博士課程了、同年株式会社日立製作所中央研究所入社。1990年北海道大学工学部情報工学科助手。1994年室蘭工業大学工学部電気工学科助教授。2000年北海道大学工学研究科電子情報工学専攻助教授、その後准教授を経て2015年より教授。計算機合成ホログラム、3D画像処理、コンピュータグラフィックスに関する研究に従事。

現実と区別がつかないほど完璧な3D映像

計算機合成ホログラフィ(CGH)とはどのようなものですか。

博士(工学) 坂本 雄児 教授
図1: 現在の3D技術

坂本 まず、一般的な3D技術とホログラフィとの違いからご説明しましょう。近年、映画やゲームなどさまざまな分野で3D映像が普及し、テレビやビデオも3D対応の機種が登場しています。これらの技術は主に「視差」という人間の立体認識を利用したものです。人間は右目と左目で見える位置の違いから物体の立体構造を認識します(図1)。映画などの3D映像はこれを応用したもので、スクリーンに右目用と左目用の2種類の映像を同時に映し、特殊なメガネによって左右それぞれに異なった映像を見せています。ゲーム機などはメガネがなくても立体的に見えるものがありますが原理は同じです。スクリーンやディスプレイから飛び出しているように見える3D映像はとても人気がありますが、人によっては立体的に見えなかったり、長時間見ていると疲労や酔いが発生するなどの問題点もあります。

博士(工学) 坂本 雄児 教授
図2 ホログラフィによる立体写真

これに対しホログラフィには光の干渉が用いられています。物体に照射した光(物体光)と、記録材料に照射した光(参照光)の重なりから生じた光の干渉の模様(干渉縞)を記録したものに、記録時と同じ光を同じ位置から当てると立体像が再現されるのです(解説1)。メガネをかける必要がなく、視点を移動しても歪んだりしません。ホログラフィは3次元の光空間を完全に再現できる唯一の方式であり、原理的にはホログラフィによって映し出されたものと実物を区別することはできないと言われています(図2)。

私たちが研究している計算機合成ホログラフィ(Computer-Generated Hologram:CGH)は、ホログラフィにおける記録の過程をコンピュータ上でシミュレーションして作成するものです。光学機器などの資材が不要なうえ作業効率や安全性でも優位な点が多く、動画も表現することができる画期的な技術です。

実用化を目指した研究開発の推進

現在、どのような研究が行われていますか。

博士(工学) 坂本 雄児

坂本 計算機合成ホログラフィでは物体のデータをコンピュータに入力し、物体光・参照光の伝搬を計算して干渉縞のデータを合成、出力した映像をディスプレイなどに再生します。再生された映像は顔の向きを変えたり移動したりしても常に正確な3D映像を見ることができます。

本研究室では、3Dディスプレイのプロトタイプをいくつか開発しています。2010年から開発を進め、広い視野を持つMarkⅠ(2012年)(図3)、より小型で美しいカラー映像を実現したMarkⅡ(2013年)などがあります(図4)。この2つのタイプはいずれも装置がかなり大かがりなのですが、小型化とウェアラブルを目指して開発したMarkⅢではヘッドマウントディスプレイ(HMD)としてようやく装着可能なレベルまで達しました。今後さらに実用化へ向けた研究開発を進めているところです(図5)。

博士(工学) 坂本 雄児

ディスプレイのパターンを計算するには現在の情報処理技術では非常に時間がかかるため、フルカラーの精密な画像を出力したり、テレビやゲームのように動きのある映像をリアルタイムでホログラム化するには技術的な壁が残されています。そのため本研究室では高速に計算し、美しく表示するアルゴリズムの開発などに取り組んでいます。

最終的な目標はホログラフィ・ルームの実現

今後、計算機合成ホログラフィはどのように活用されていくのでしょうか。

坂本 皆さんがイメージしやすいのは3Dテレビミーティングではないでしょうか。離れた場所にいる人たちがCGHで一堂に会して会議を行うものです。これは将来的に大きな期待がかけられています。

私が興味を持っているのは「3Dウインドウズシステム」です。私たちはパソコンの画面上にいくつものウインドウを開いて同時に作業することがありますが、ディスプレイ自体は2次元なので各ウインドウはディスプレイ上に重なり合っている状態です。私が考えているのは、ディスプレイそのものをホログラフィで作り、各ウインドウを前後に奥行きを持たせて立体的に配置し、手でタッチして選択したり動かしたりできるようにしたものです。

それらの技術はいつ頃実現しそうですか。

博士(工学) 坂本 雄児

坂本 私たちの身近な存在としてホログラフィが活用されるにはもう少し時間がかかると思います。デバイスや計算能力、アルゴリズムの高度化など乗り越えるべき課題は多く、それら一つひとつを解決していかなくてはなりません。技術としても発展途上なので、ハード・ソフト両面で試行錯誤しているのが現状です。まったく新しい技術が登場して一気に飛躍することもあり得ますが、今は各分野の研究者がそれぞれ研究を進めているところであり、そういう面では未知の可能性が非常に多い分野なのです。

私が将来の目標として描いているのは、テーブルとイス以外はすべてホログラフィで構成された部屋です。壁紙や窓の位置、窓の外の風景、お気に入りのオブジェや絵画などもすべてホログラフィで好きなようにレイアウトできます。パソコンのディスプレイや本棚ももちろんホログラフィで表示し、触れるだけで操作できるようになっています。離れて暮らす家族や友人たちにも自由に会えるし、同じテーブルを囲んで一緒に食事をすることもできるでしょう。SF映画に出てくるようなバーチャルな世界を実際につくり出す。それが私の夢です。

解説

解説1:「ホログラフィの原理」

ホログラフィとは、光の干渉・回折を用い、物体からの光(物体光)を記録・再生する技術のことです。 写真とは違い、光の強さだけでなく光の向きも記録することができるので、物体光を完全に再現することができ、理想的な3次元表示技術と言えます。

参考文献:メディア創生学研究室ウェブサイトCGH(計算機合成ホログラム)班

図3 ホログラフィック3Dディスプレイ MarkⅠ

図

図4 ホログラフィック3Dディスプレイ Mark Ⅱ

図

図5 ホログラフィック3Dディスプレイ MarkⅢ

図