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生体内組織の深部を高分解能で観察
光・脳科学、光・細胞生理学の新しい研究領域を開拓

写真:博士(理学)根本 知己

情報科学研究科 生命人間情報科学専攻
先端生命機能工学講座  脳機能工学研究室・教授

博士(理学)根本 知己

プロフィール

1991年東京大学理学部物理学科卒。1996年東京工業大学大学院理工学研究科応用物理学修了。1996年04月〜1998年11月理化学研究所、1998年12月〜1999年11月東京大学医学部(学術振興会研究員)、1999年12月〜2005年12月生理学研究所(助手)、2001年12月〜2005年03月JST(さきがけ研究員(兼任))、2004年01月〜2005年12月総合研究大学院大学生命科学研究科生理科学専攻(助手(併任))、2006年01月〜2008年03月生理学研究所(助教授)、2006年04月〜2009年08月総合研究大学院大学生命科学研究科生理科学専攻(助教授(併任))、2008年04月〜2009年08月生理学研究所(准教授(職名変更))、2009年09〜2010年03月生理学研究所(教授(兼任))、2009年09月より北海道大学 電子科学研究所(教授)。

【関連リンク】

新しいレーザー・光技術を活用したin vivoな観察

電子科学研究所で取り組んでいるテーマはどのようなものですか。

根本 私たちの研究には大きく二つの目標があります。まずひとつは新しいバイオイメージング技術を開発すること、もうひとつはそれを応用して神経科学を中心とした生命科学、あるいは基礎的な医療への応用です。それは車輪の両輪のようでもあり、織物でいえば縦糸と横糸のようなもので、技術開発を縦糸とすれば、神経・分泌関連の生命科学や医療応用までを扱うのが横糸です。私自身はその中心に立っている感じですが、研究スタッフは縦糸と横糸で張られるすべての空間で新しい生命科学の探究に取り組んでいます。

これまでの生物科学や生命科学は新しい観察技術の開発を契機として新たな発見や謎の解明が成されてきました。私たちの研究も同様に光学顕微鏡などの技術を発展させることで、今まで見えなかったものが観察できるようになり、生体や臓器、細胞の機能とその仕組みを明らかにすることを目指しています。

特に私たちは“in vivo(生体内での)”でのイメージング法の高度化に取り組んでいます。これまでの分子生物学はin vivoではない状態、つまり細胞が死んだ状態を見ているため、細胞がどのような構造や機能を持っているかを知ることはできるのですが、細胞同士の相互作用や臓器の中での細胞のメカニズムを観察することはできません。in vivoで観察するということは、細胞が生きている状態のまま観察できるので、ある刺激に対してどのように反応するか、どのようなメカニズムで機能が発揮されるかを解明する有効な観察手段だと考えています。

生態内部を高分解能で観察できる2光子顕微鏡

具体的にどのような観察技術を用いているのですか。

博士(理学)根本 知巳

根本 in vivoでの観察技術にはいくつかの種類がありますが、その中でも私たちは「2光子顕微鏡(解説1)」を採用しています。2光子顕微鏡のメリットは生きたままの臓器やモデル動物を対象とする場合に、一番深いところまで見える点にあります。深い部分の画像を得るにはX線CTやファンクショナルMRI(fMRI)などすでに実用化されていますが、2光子顕微鏡は空間分解能がサブマイクロメータ(μm未満)と非常に高く、細胞や細胞に含まれている生体分子の形や動きを生きたままの状態で観察するのに適しています。

例えば、音楽を聴いているときに脳が活性化される状態を観察する場合、fMRIではミリやセンチのオーダーなので活性化されている脳の部位を示すことはできますが、その中に存在する数千の神経細胞の動きまでも捉えることはできません。2光子顕微鏡は、細胞レベルあるいは神経のネットワークレベルで捉えることができ、しかも細胞が生きたままの状態で時々刻々と変化する神経細胞の動きを長時間観察することも可能です。

私たちの研究室では、①半導体レーザー研究者との共同研究により新しい生体in vivoイメージングに適したレーザーの開発、②蛍光の検出器の特殊な工夫、③観察対象であるマウスの固定技術の高度化という3点に注力した結果、麻酔下でのマウスの大脳新皮質において、世界最深部の断層蛍光観察に成功しました(解説2)。この成果は新聞等のメディアに報道されるとともに、Nature Asiaの「注目論文」にも選ばれています。

今回観察したものはとても美しい写真や動画として記録することができました。このように美しい写真が撮れるのは研究者として大きな喜びになりますね。そこに映っているものの学術的な価値とは別に、教科書で見るような美しい現象に触れたときの感動は、学生にとっても私たち教員にとっても素晴らしい経験となります。

オールジャパンの技術を結集した新しい超解像顕微鏡の開発

他にはどのような研究開発が行われているのですか。

博士(理学)根本 知巳

根本 2014年、アメリカの研究者であるエリック・ベッチグ氏らが「超解像顕微鏡(解説3)」の開発によりノーベル化学賞を受賞しましたが、私たちもそれと同じような顕微鏡の開発に取り組んでいます。超解像顕微鏡にもさまざまな方法論があるのですが、私たちは東北大学をはじめとするオールジャパンの研究者たちと共同で、特殊な光を使って空間分解能をあげる研究を行っています。「ベクトルビーム」と呼ばれる新しいレーザー光を用いることで、古典的な光の回折限界を乗り越えることに成功しました。今までは観察不可能だった生きた細胞内の微細構造や生体分子を電子顕微鏡に迫る空間分解能で観察することができ、さらにそれを応用すると2光子顕微鏡の空間解像度も向上させることにもつながります。

特殊なレーザー光を用いると、予想を超える現象を観察できることがあり意外な発見に驚かされます。光の技術を研究することは今まで誰も見たことがないものの観察につながることであり、それがこの研究の面白さであると思います。

これらの研究は今後どのような分野に活用されるのでしょうか。

根本 まずは私たちの研究の目的でもある神経回路の機能の解明です。学習や記憶という脳の機能がどのような神経の活動によって実現されているのか分かってくるだろうと思います。例えば、私たちは練習をすれば自転車に乗れるようになることを知っています。しかし、脳の神経がどのように機能することで学習や記憶が行われていくのかは明らかにされていません。私たちの研究は、そのような疑問に答えられるようになる大きなブレイクスルーになるのではないかと期待しています。

もっと広い学際領域を見ていくと、この技術は生体の深い部分の細かい構造を観察することができるので、がんや分泌機能の研究など医療分野への応用が考えられます。実際にすい臓や糖尿病、骨粗しょう症など分泌機能の破綻による疾患発症の仕組み解明にも取り組んでいます。そういう点では、社会のニーズに直結した研究分野であり、今後の展開には大きな期待が寄せられています。

解説

解説1:2光子励起顕微鏡

1つの蛍光分子が2つの光子を同時に吸収して励起状態となる非線形光学現象を利用した光学顕微鏡。通常の蛍光顕微鏡が不得意とする不透明標本の深部も観察できる分解能を持ち、生体組織の内部を非侵襲のまま傾向観察できる。自然界で1個の分子に2個の光子が同時に当たる確率は非常に小さいため、2光子顕微鏡では巨大なパワーを持つレーザーの光源と特殊な検出器が必要になり、そこが2光子顕微鏡の技術開発の核となる。

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解説2:海馬CA1・歯状回のニューロンの観察

新たに開発した“in vivo” 2光子顕微鏡法でマウス個体を生かしたままの状態で、大脳表面からおよそ1.6mm程度までの深部の断層像を取得することに成功。

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解説3:超解像顕微鏡の開発

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