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自己集合を光でコントロールする手法の研究を通じ
光計測や生体応用の分野にも貢献

写真:博士(工学) 平井 健二

情報科学研究科 生命人間情報科学専攻
先端生命機能工学講座  バイオナノマテリアルズ研究室・准教授

博士(工学)平井 健二

プロフィール

2008年3月、京都大学工学部工業化学科卒業。2010年3月、京都大学大学院工学研究科 合成・生物化学化学専攻修士課程修了。2010年4月〜2013年3月、日本学術振興会 特別研究員。2013年3月、京都大学大学院工学研究科 合成・生物化学化学専攻 博士後期課程修了。2013年4月〜2014年10月、日本学術振興会 海外特別研究員。2014年11月〜2017年11月北海道大学大学院理学研究院特任助教。2017年12月〜現在、北海道大学 電子科学研究所准教授。2018年10月〜現在科学技術振興機構 さきがけ研究者(兼任)。

ナノワイヤにMOFを被覆させ、生体細胞内の現象を光計測

バイオナノマテリアルズ研究室はどのようなテーマを扱っているのですか。

平井 当研究室の扱うテーマは、特に幅広い分野にまたがっています。雲林院宏教授の専門分野である光計測(物理・化学)を中心に、計測に使われるナノワイヤなどを開発する材料合成(化学)、それらを使って細胞内の現象を観察する生体応用(生物学)の分野が互いに補完し合いながら多様な研究を行っているのです。

その中で私が取り組んでいるのは材料合成の分野で、分子の自己集合(self-assembly)(解説1)を利用した多孔性配位高分子(PCP)または金属有機構造体(MOF)と呼ばれる材料を研究しています。MOFとは、金属イオンと有機物を溶媒中で混ぜるとできる多孔性構造体で、内部の空間(細孔)に分子を取り込むことでガスの貯蔵・分離・分子配列・固体触媒・高分子合成などが可能になります(図1)。アセチレンなどの気体をMOFに取り込むと非常に安定するので、液化ガスなどの保存・保管に利用されている事例もあります。

当研究室では、ナノワイヤを使って細胞内の現象を観察する際に、ナノワイヤの表面にMOFを被覆させ、細胞内に存在する多種多様な分子の中から特定の分子だけを計測できるようにする手法を採用しています。そうした計測に役立つMOFを研究・開発することが、現在の私のテーマです。

光を使ってMOFの生成プロセスをコントロールする技術の開発

現在取り組んでいるのはどのような研究ですか。

博士(工学) 平井 健二

平井 前述のようにMOFはガスの貯蔵や分離に有効なため、化学工業の分野で盛んに利用されています。天然ガス自動車の燃料タンクにもMOFの技術が採用され、実用化を目指した研究開発が産学官共同で行われています。

しかし、私自身は自己集合のプロセスやMOFの特性により深く切り込んだ研究をしたいと思っています。MOFの研究は20年近い歴史があり、多くの知見が蓄積されていますが、金属と有機物の組み合わせや構造に関しては、いまだに一つひとつのケースを検証していくやり方が主流です。そこをもっと効率化して、目的や機能に適したMOFの開発につなげられないかと考えているのです。

そのために取り組んでいるのが、光を使って自己集合のプロセスをコントロールする技術の開発です。光を使って分子の特定部位の反応性を変える研究は最近注目されている分野です。光の現象に関する研究も近年急速に発展しつつあるので、私がこれまで扱ってきた材料分野の技術・知見と光の現象を用いて自己集合のプロセスをコントロールする技術が確立できれば、MOFに限らずさまざまなナノデバイスの開発に貢献できると思います。

当研究室では、光を当てることでナノワイヤの先端にだけ特殊なMOFを作る技術の開発を目指しています。それが実現すると、薬を投与した後の生体細胞内の分子の様子を詳しく観察することができ、薬の効果や反応を検証することができます。

私が手がけてきた研究領域と光を使った手法を組み合わせたナノワイヤの開発・応用は、本研究室のメンバーや研究環境ならではのアプローチだと思います。

また、共鳴する光と分子の相互作用を用いて、分子の反応性を変化させる方法の開発にも取り組んでおり、この研究テーマは科学技術振興機構の研究プログラム「さきがけ」に採択されています。

化学、物理、生物、情報の融合したユニークな研究環境

今後の研究の展望をお聞かせください。

博士(工学) 平井 健ニ

平井 当研究室は2015年に開設された新しい研究室であり、具体的な研究成果が出てくるのもこれからなのですが、MOFを用いたナノワイヤの開発、プラズモニクスを活用した単一分子分光、細胞用内視鏡を用いた生体細胞の観察までを、ひとつの研究室内でコラボレーションするというのは、珍しいことだと思います。

雲林院教授はベルギーのルーヴァン大学化学科に籍を置く光化学&分光法研究室(Laboratory for Photochemistry & Spectroscopy)の研究チームを率いるリサーチプロフェッサーでもあり、光化学の最先端を学ぶことができます。新しいことにチャレンジできる自由な環境があるので、私も自分の専門分野を深めると同時に、異なる分野との連携に多くの刺激を得ています。

化学、物理、生物といった異なる分野の研究者が同じ研究室内で活動できるのも、情報科学研究科という環境があったからかもしれません。自然科学や工学のみならず、そこからどんな情報を獲得するのか、知り得た情報をどのように活用するのかといったことに興味をもつ学生にとっても多くの可能性が広がる分野だと思います。MOFの分野でも、ビッグデータをAIで解析し、新たな知識を発見する試みが始まっています。興味のある学生はぜひチャレンジしてほしいですね。

解説

解説1:自己集合(self-assembly)

小さな分子が自律的に集まって高次構造を構築すること。自己組織化(self-organization)と呼ばれることもある。雪の結晶が六角形をしているのも水の分子が自己集合(自己組織化)するためである。金属イオンと有機物の自己集合によってケージ状の構造体が形成される現象についてはすでに20年以上研究が行われており、近年はナノデバイスの大量生産を可能とする技術になるものと期待されている。

図1:MOFの構造

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