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モータの最適設計を効率化・高速化する技術の開発
トポロジー最適化とAIの共進化を目指す

写真:博士(工学) 五十嵐 一

情報科学研究科 システム情報科学専攻
システム融合講座  電磁工学研究室・教授

博士(工学)五十嵐 一

プロフィール

1984年、北海道大学大学院工学研究科修士課程電気工学専攻 修了。1984年、キヤノン株式会社。1989年、北海道大学工学部助手。1995年、ベルリン工科大学フンボルト財団研究員(兼務)。1999年、香川大学工学部助教授。2001年、北海道大学大学院工学研究科助教授。2004年より北海道大学大学院情報科学研究科教授。

遺伝アルゴリズムを用いたトポロジー最適化

電磁工学研究室ではどのような研究を行なっているのですか。

――電磁工学研究室ではどのような研究を行なっているのですか。

五十嵐 本研究室では、電磁界数値解析をキーテクノロジーとして、永久磁石埋め込み型モータやリラクタンスモータ、インダクタ、小型変圧器、超伝導機器、磁気シールド、アンテナなどの電気電子機器の最適設計に関する研究を行っています。

モータなどの設計・開発で主流となっているのは、サイズや形状、材料の種類などを対象とした設計パラメータを調整しながら最適化を図る手法です。モータにはさまざまな要求性能があり、トルク(モータの回転力)やトルクリップル(回転中のトルクの変動量)から発生する騒音・振動などを考慮した上で設計しなければなりません。パラメータの設定は設計者の経験値に頼る部分が大きく、また試作や検証のコストも負担になっています。

そこで、近年注目されているのがトポロジー最適化手法(解説1)を用いた設計です。トポロジー最適化とは、コンピュータでシミュレーションを繰り返しながら機器形状を柔軟に変化させて、要求される性能を持つ機器形状を見出す方法です。このために様々な形状からなる集団をコンピュータ内で進化させます。最適化により完成度の高い設計がコンピュータ上でできるため、試作に要する時間を削減でき、開発プロセスを効率化できると期待されています。このため本研究室は企業や大学の多くの研究者の方々と共同研究を行っています。

トポロジー最適化は既存概念にこだわらない斬新な形状を生み出すことができる画期的な手法ですが、10万~100万もの未知数がある連立方程式を解かなくてはなりません。例えば100個体を100世代にわたって進化させるには高速な計算サーバーで並列処理をしても1週間程度かかり、計算時間の短縮が重要な課題となっています。

この課題を解決するため、本研究室ではAI(深層学習)を用いて最適化を高速化する方法を開発しました。

シミュレーションのプロセスと計算時間を大幅に短縮

画像を使った深層学習で計算時間を大幅に短縮

博士(工学) 五十嵐 一

五十嵐 深層学習は従来の機械学習よりも優れた画像・音声認識を可能とします。本研究では、トポロジー最適化の過程で得た様々な形状の機器画像を畳み込みニューラルネットワーク(CNN)に学習させ、未知の形状の機器特性を高速で予測することを目指しています(解説2)。

まず、過去のトポロジー最適化の中で得たモータ回転子の形状画像と、その個体の平均トルクやトルクリップルなどの解析結果を教師データとして学習させます。さらに機器の最適化において、ランダムに生成した数百の個体の画像を学習済みのCNNに入力してトルク性能を予測し、その評価値が高い個体は多くの子孫を残し、低い個体は淘汰されるようにすることで、機器を進化させます。モータの見た目の違いだけで個体を評価・分類し、有効と思われる個体についてのみ時間をかけて解析すればよいので計算時間を飛躍的に短縮することができます。

CNNの性能をテストするための実験では、トポロジー最適化による解析結果とCNNの分類結果がほぼ一致し、CNNの手法が有効であることが認められました(図1)。

この手法では最初にAIに過去のデータを学習させることが必要ですが、一度学習すれば新たな計算は必要なくなり、設定や条件を変えた分類・評価も容易になります。本研究室には過去のデータが蓄積されており、教師データが豊富に用意されていることも大きなメリットの一つです。

トポロジー最適化と深層学習の共進化を目指して

AIを用いた最適設計は今後どのような展開が予想されるのでしょうか。

博士(工学) 五十嵐 一

五十嵐 様々なモータの性能予測ができるよう、CNNの汎化に取り組んでいます。モータは多種多様な電気電子機器に使われています。電気自動車やハイブリッド車、エアコン、冷蔵庫、ロボットなどモータを使う製品は世の中にたくさんあり、開発期間やコストを抑えるための最適設計の重要性はますます高まっています。そのためにも、開発したトポロジー最適化とAI技術を活用してさまざまな種類・用途に応じたモータの開発を効率的にできるような設計手法を創りたいと思います。

AIの導入によりトポロジー最適化の計算時間を短縮できるようになりましたが、まだ適用できる範囲が狭いです。様々な対象に対してトポロジー最適化を行うことでデータを集めてAIの学習素材を増やすことが重要です。素材が増えるほどAIは賢くなり、その結果を再びトポロジー最適化にフィードバックすることでトポロジー最適化自体を高速化・高度化することもできます。 トポロジー最適化とAI(深層学習)の両方が補い合い、ともに進化する「共進化」を深めることが今の目標です。

また、モータ以外にもエネルギーハーベスタ用の小型アンテナや非接触給電装置などの最適設計にもトポロジー最適化や深層学習を利用した設計が有効です。今後も国内・海外の大学や企業の研究者と共同研究を進めて行きたいと思います。

解説

解説1:トポロジー最適化手法によるモータの形状の最適化

永久磁石モーターの回転子形状をトポロジー最適化によって求める。ランダムに生成した約500の個体を遺伝的アルゴリズムで進化させ,トルク特性などの適応度の評価や選択を行い最適な個体の形状を求める。

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解説2:深層学習を用いたトポロジー最適化

学習フェーズでは、通常のトポロジー最適化の過程で得たデータをコンピュータに学習させ、最適化フェーズでは画像を基に深層ニューラルネットワークで個体の性能を高速に評価する。進化に寄与する有望な個体群のみを有限要素法(FEM)により時間をかけて精密に評価することで、全体の計算時間を短縮する。

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図1:平均トルクの分類結果

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