language
注意事項
当サイトの中国語、韓国語ページは、機械的な自動翻訳サービスを使用しています。
翻訳結果は自動翻訳を行う翻訳システムに依存します。場合によっては、不正確または意図しない翻訳となる可能性があります。
翻訳サービスを利用した結果について、一切を保証することはできません。
翻訳サービスを利用される場合は、自動翻訳が100%正確ではないことを理解の上で利用してください。

景観や構造物を3次元ディジタルデータで表現
高性能な幾何処理ソフトウェアの研究開発

写真:博士(工学) 伊達 宏昭

情報科学研究院
システム情報科学部門  システム創成学分野
ディジタル幾何処理工学研究室・准教授

博士(工学)伊達 宏昭

プロフィール

2000年3月、北海道大学大学院工学研究科修士課程終了。2003年3月同大学院工学研究科博士課程修了。2005年より同大学院情報科学研究科(現・情報科学研究院)助手、2010年より同准教授。所属学協会は精密工学会、情報処理学会など。

3次元計測データによるモデリング技術の研究

ディジタル幾何処理工学研究室ではどのような研究を行っているのですか。

伊達 本研究室では3次元幾何モデリングを核に、線形代数・統計学・最適化・計算幾何学などの基礎技術、ならびにデータモデリング・データ構造・プログラミングによる実装技術を統合し、ミクロからマクロまで様々なスケールの対象物の3次元ディジタルデータの高性能な幾何処理ソフトウエアの研究・開発を行っています。

その中でも、近年は、3次元計測データの高度解析による、設備の設計・保守・管理プロセスの革新に向けた研究に力を入れています。具体的には、私たちの身の回りにあるさまざまな物体や環境を、レーザスキャナなどを用いて3次元計測し、得られた計測データ(点群と呼ばれる3次元点の集合)から、計測対象の形状情報を利用しやすい3次元のディジタルモデルで表現する技術の開発・高度化に取り組んでいます(解説1)。

近年、この技術はプラント、土木、建築、測量をはじめとする幅広い分野で注目されています。その背景の一つには、プラント、トンネルや橋といった社会インフラの老朽化問題があります。私たちの研究では、図面のないプラントや橋梁等の大型構造物を3次元レーザ計測システムで計測し、得られた点群データから計測対象物の詳細な3Dモデルを生成することで、メンテナンスや各種シミュレーション、改善計画などに役立てます。同様の応用目的で、大型構造物以外にも、点群データからの室内環境の自動モデル化や、点群データを使った市街地環境中の道路や建物、街路樹、電柱等設備の認識技術の開発も行っています。また、精度の高い3次元モデル生成のために必要となる高品質な計測データを効率よく得るための最適計測方式の研究も行っています。

計測手法や精度の異なる複数のデータを統合するアルゴリズムの開発

現在取り組んでいるのはどのような研究ですか。

博士(工学) 伊達 宏昭

伊達 現在は主に(1)市街地・建物の3次元モデル生成、(2)高速・高精度レジストレーション、(3)計測点の品質を考慮した点群処理手法群開発の3つのテーマに取り組んでいます。中でも高速・高精度レジストレーションの研究は、計測データを様々な場面で活用していく上で非常に重要な基礎技術の一つです(解説2)。

レジストレーションとは、さまざまな計測位置や計測器から得られた計測データを位置合わせ・統合する処理で、計測データをモデリングなどに利用するためには必須となります。例えば、橋梁などの大きな構造物を計測する場合、レーザ計測では、計測器から可視の部分しか計測できないため、複数箇所から計測します。この時、各箇所から得られた点群の対応する場所を見つけ、座標系を合わせる技術がレジストレーション(位置合わせ)です。大規模な点群データに対して高速にレジストレーションできる技術が、計測点群を円滑に活用するために必要となり、このためのいくつかのアルゴリズム開発を行ってきました。例えば、室蘭市の白鳥大橋を対象として私たちの開発手法を適用した例では、三脚上に設置した固定式レーザスキャナを使って11箇所から計測して得られた約1億点の点群を、普通の性能の計算機上で、2分半程で高速にレジストレーションできています(解説3)。開発手法は、橋梁の下部構造(橋脚など)や上部構造(桁、床版など)の境界に多く見られる直線エッジを点群から高速に検出し、検出エッジを頼りに確率的手法などを用いて計測データ間の対応検出を高速に行っています。

また、最近では固定式の計測器以外にもハンディタイプのスキャナやドローン搭載型など数種類の計測器を併用し、計測方法やデータ精度が異なる点群データを統合・併用するケースも増えています。この時に、様々なスキャナから得られたデータを統合して利用するために、データ密度や計測ノイズレベルの差異などに頑健なレジストレーションが重要となり、私たちは、固定式レーザスキャナのみならず、ハンディタイプスキャナ、車載型レーザスキャナやディジタル画像集合から生成した点群などをレジストレーションする技術を開発してきました。

3次元モデル生成の研究では、これらの技術を使って得られた計測点群から、CGや画像処理の手法も応用しながら、利用上求められる精度に合わせた情報を頑健かつ効率的に抽出するための理論とアルゴリズムの構築に取り組んでいます。

社会のさまざまな場面で活用できる汎用的な技術を目指して

これからの3次元計測データの活用には何が求められますか。

博士(工学) 伊達 宏昭

伊達 プラントや大型構造物の他、商業施設やオフィスビルなどの建物内部のモデル化もニーズが高くなってきています。モデル化や環境の認識は、応用によってミリメートル単位の精度が要求されることもあれば、数十ミリの精度でも十分な場合もあります。また、複雑・雑多な環境を計測するために、異なる種類のレーザスキャナやディジタル画像に基づく3次元計測を使って、計測データを補完しあうことも行われてきています。このような現状において、様々な対象の様々な質の点群データを確実に処理できるアルゴリズムが必要です。現在、計測の密度や精度が異なる点群に対して安定して信頼性の高いデータ処理が可能になる汎用的な仕組みの開発を進めています。具体的には、レーザの反射特性などの計測原理も考慮して計測点群の各点に品質(信頼性)の情報を付与し、これを点群データ処理に活用することで、処理の安定性や精度の向上を目指す研究も行っています。

現在、精密工学会の3次元計測とモデリングに関する委員会の運営に携わっているのですが、この委員会にはプラント、土木、建築、測量に加え、森林、防災、海洋関係などさまざまな分野の専門家が参画し、有意義なディスカッションが行われています。今後、より広い分野で3次元計測やモデル化技術が活用されていくことは明らかで、そこで必要とされる計測方法、レジストレーションを含む3次元モデル生成むけの計測データ処理技術にはさらなる発展が不可欠です。レーザスキャナ等の計測装置をはじめ、点群処理のアルゴリズム、使用目的に合わせたモデル化など、さまざまな角度からのアプローチが必要になりますので、これらの技術開発とともに社会で役立つ新たな応用についても検討を進めていきたいと思います。

解説

解説1:点群からの建物モデリング

自動車に搭載したレーザスキャナで取得した点群からの建物セグメンテーション(建物の点群の抽出)とモデリングのアルゴリズムを開発した。セグメンテーションは、機械学習や鉛直方向の点群重複度を利用した高精度な処理を実現している。モデリングは、平面や直線などのフィッティング、画像処理、規則性認識技術を利用し、建物の詳細度(Level-of-Detail)を考慮して完全自動処理を実現している。

図

解説2:高速・高精度レジストレーション

さまざまな計測位置や、異なる計測システムから得られたデータの位置合わせ・統合により、計測データの確認や点群からのモデリングを可能にする。各計測データ内で対応する箇所を検出し、それらを合わせるための座標変換行列の導出と適用を行う。

図

解説3:橋梁レーザ計測点群のレジストレーション

11箇所から計測した約1億1千万点の点群を独自に開発したアルゴリズムで高速処理。高速化のために点群の2次元構造化、ハッシング、RANSACといった技術を利用している。特徴線抽出処理には約9秒、特徴線ペアによる位置合わせ処理は約30秒となっている。(本研究の一部は、SIP「インフラ維持管理・更新・マネジメント技術」(NEDO)によって実施されました)