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エレクトロニクスとフォトニクスの融合を目指した
光通信・光演算技術の研究開発

写真:准教授・博士(工学) 佐藤 孝憲

情報科学研究院
メディアネットワーク部門 情報通信システム学分野
インテリジェント情報通信研究室・准教授

博士(工学)佐藤 孝憲

プロフィール

2014年3月、北海道大学 工学部 情報エレクトロニクス学科卒業。2016年3月、同大学院 情報科学研究科 メディアネットワーク専攻 修士課程修了。2018年3月、同博士後期課程修了。2016年4月~2019年3月、北海学園大学 工学部 非常勤講師。2017年4月〜2018年3月、日本学術振興会 特別研究員(DC2)。2018年4月〜2019年3月、日本学術振興会 特別研究員(PD)。2019年4月~2020年3月、兵庫県立大学 大学院 工学研究科 助教。2020年4月より、北海道大学 大学院 情報科学研究院 准教授(アンビシャステニュアトラック)。

電子回路集積技術を光技術に転用する
シリコンフォトニクス技術

現在の研究の背景となっているのはどのような技術分野ですか。

博士(工学) 佐藤 孝憲

佐藤 20世紀から21世紀にかけて、電子情報の分野では超大規模集積回路技術が急速に進展し、より複雑な回路構成の電子デバイスを高性能化かつ安価に量産できるようになりました。当時の技術開発の方向性は、シリコンウエハに超小型の電子回路を作成し、配線も複雑化したものを大量生産することでした。その一方、2000年頃に、光回路もシリコン上で作製できる(シリコンと酸化層SiO2が全反射構造を形成できる)ことに注目が集まり、電子回路の集積技術を用いて光集積回路を実現しようという試みが徐々に活発になっていきました。

電子回路の集積技術を活用して光回路を実現する技術を総称して「シリコンフォトニクス」と呼ぶのですが、さまざまな研究領域があり、中でもCPU間での情報伝送を光に置き換える「光インターコネクト」の研究開発は海外の大手電子機器メーカーを中心に盛んに研究が進められている領域です。

また、10年ほど前から急速に開発が進んでいる技術領域として、半導体レーザ(光源)と波長・空間多重デバイス(シリコン光回路)を組み合わせた「異種材料光集積」や、光信号で演算を行う「光プロセッサ」、6Gなどの次世代通信技術にも採用が期待できる光MIMO信号処理デバイスの「光ユニタリ変換器」などがあり、これらが私の主な研究ターゲットとなっています。その中でも、近年のトレンドのひとつである異種材料光集積については、大手電子機器メーカーと共同研究を進めています(解説1)。

シリコン素材とⅢ-Ⅴ族半導体の相乗効果で
光源/受光素子と高密度・安定動作を実現

異種材料光集積について具体的に教えてください。

博士(工学) 佐藤 孝憲

佐藤 異種材料光集積とはシリコンとⅢ-Ⅴ族半導体を接合して光集積デバイスを形成する技術です。(Ⅲ-Ⅴ族半導体と比べて)シリコン結晶は比較的材料損失が小さく、集積化・小型化が容易という利点がありますが、レーザ光源として用いるには技術的に難しいです。特に、レーザ光源を集積するには、Ⅲ-Ⅴ族半導体が必要不可欠だと考えられます。このように、シリコンとⅢ-Ⅴ族半導体双方のメリットを生かした集積回路の開発が有望視されています。

例えば、シリコン基板の上にⅢ-Ⅴ族半導体による光源や増幅器といった光デバイスを作製します。電圧印加によりⅢ-Ⅴ材料中に生成された微弱な光がループ状のシリコン導波路(フィルタ)で多重干渉し、増幅された特定の波長の光が発振されるという仕組みです。通常の半導体レーザでは、基板の両端にⅢ-Ⅴ族材料のへき開を作製して反射させたり、グレーティング構造(回析格子)などを用いていましたが、異種材料光集積プラットフォームをベースとした半導体レーザでは、シリコン導波路でループ状の導波路を作製することで、低損失かつ高精度な光発振が可能となります。

また、私たちが提案する共振器は、ミラーの役割をする2つの3dB分配器の間で起きる多重反射構造を形成することで、共振器の共振特性をモニタリングすることができる新しいタイプの共振器を開発しました(解説2)。これを用いることで、波長可変動作などの制御性の向上に役立てられると期待されています。

光の速度で電子回路のような計算を行う
光演算用集積回路の開発

その他にはどのような開発を行っているのでしょうか。

博士(工学) 佐藤 孝憲

佐藤 光演算用集積回路(光プロセッサ)の開発を行っています。従来の電子デバイスの計算速度を飛躍的に上げ、かつ消費電力を低減するための演算技術です(解説3)。光プロセッサには、光の速度で電子回路のような演算を行う「光デジタル演算器」と、光の複素振幅を被演算数とする「光アナログ演算器」があります。特に、光アナログ演算器の一形態である光ユニタリ変換器は、大手通信企業や海外の大学などの共同研究によって実証実験された成果がScienceに掲載されたことで、近年注目を集めています。

私たちが手がけているのは、アナログ演算器のさらなる小型化を目指したもので、リング共振器と呼ばれる小型の構造で多数の位相シフト(PS)やマッハツェンダ干渉計(MZ)を構成できる光行列演算回路を提案しました。従来の光行列演算回路は、構成回路の素子サイズが大きく、演算次数の拡大が難しいという問題がありましたが、私たちの提案ではリング共振器を用いることで、n=10〜100程度まで次数を増やせると見込んでいます。

今後の研究計画としては、これらの研究成果をもとに光無線技術への応用を考えています。現在導入されている5Gの次の無線通信技術として「Beyond 5G」または「6G」などと呼ばれるものが開発されているのですが、その中でアナログ光無線(アナログRoF)という通信技術が検討されています。
既存の無線基地局では、電気信号である電波をデジタル信号に復調し、それを光ファイバに伝送するデジタルRoFという技術が使われていますが、Beyond 5Gや6Gでは、電波の波形をそのままアナログ信号として光ファイバ伝送するアナログRoFという技術が採用されると考えられています。その際、アンテナ技術のひとつであるビームフォーミングやビームステアリングと呼ばれるビームの位相制御の精度を確保する必要があり、そのプロセスに私たちの提案している光演算回路が応用できるのではないかと考え、さまざまな検討を進めているところです。

解説

解説1:異種材料集積光エレクトロニクスを用いた高効率・高速処理分散コンピューティングシステム技術開発

シリコンと化合物半導体の両方の利点を活かせる異種材料接合を利用した光集積回路技術。Ⅲ-Ⅴ族半導体の光源/受光素子とシリコンの高集積度・安定動作による相乗効果が得られる。

図

解説2:波長可変レーザ用シリコン波長フィルタ

下側のアクセスポートはレーザ発振用の経路とし、上側のアクセスポートはモニタリング用の経路とすることが可能。発振側に影響を与えることなく、モニタ側の入出射で共振特性(共振波長/FSR)を観測可能となり、波長可変動作の制御性の向上が期待される。

図
(出典: 佐藤 孝憲, 藤澤 剛, 御手洗 拓矢, 平谷 拓生, 沖本 拓也, 石川 務, 河野 直哉, 藤原 直樹, 八木 英樹, 齊藤 晋聖,
「異種材料集積波長可変レーザのための対向ループミラーを用いた共振特性をモニタリング可能なSi波長フィルタ」 ,
2021年電子情報通信学会ソサイエティ大会論文集, C-3/4-37 (光エレクトロニクス/レーザ・量子エレクトロニクス), 2021年9月)

解説3:光演算用集積回路の開発

リング共振器と呼ばれる小型な構造でPSやMZを構成できることに着目し、光行列積演算回路を提案。リング共振器を用いることで n = 10~100 程度まで次数を増やせることが見込まれる。

図