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製造業の生産システムを高度化し普及させる
国際標準とその規格化にも貢献

写真:准教授・博士(工学) 田中 文基

システム情報科学部門 システム創成学分野・准教授

博士(工学)田中 文基

プロフィール

2003年、北海道大学大学院情報科学研究科 システム情報科学専攻 助教授。2007年より同大学院情報科学研究院 准教授。
日本工作機械工業会 制御規格専門委員会 副委員長。製造科学技術センター ISO/TC184/SC4 国内対策委員会委員。精密工学会 理事。ISO TC184/SC1/WG7 convener, ISO TC184/SC4 member。製造科学技術センター EQV規格開発委員会 副委員長。

生産システムに必要な知識やノウハウをデータとして記述

─システム環境情報学とはどのような学問ですか。

准教授・博士(工学) 田中 文基

田中 本研究室では、その名の通り「システム」「環境」「情報」の3つの言葉をキーワードにしています。私たちを取り巻く物理的な世界である「環境」と、コンピュータ内に作られる仮想世界の「情報」を「システム」技術によって結びつけ、これまでにない新しい技術の仕組みを創り出す、あるいは技術の発展から抜け落ちたり取り残されたりした領域をより高度化することを目指しています。 具体的には、製造業などの生産システムに必要な知識や情報を埋め込むことのできる「サイバーフィールド」、製品の設計から生産全般に関わるデータの規格化・標準化を目指した「製品モデルデータ」、災害時における救命活動を支援する「災害情報工学」などをターゲットとしています。

インターネットやデジタル技術の発展により、自動車をはじめとするさまざまな製造分野の生産システムは急速にデジタル化が進んでいます。近年はさらに産業界での「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の取り組みが推進され、「ものづくり」の現場における意識・技術・価値観の変革が求められています。

製造分野でのデジタルデータは、設計から加工・製造、検査、保守、廃棄に至るまですべてのプロセスに関わる情報(プロダクトモデルデータ)によって記述されています。一般的に使われているCAD(コンピュータ上で設計や製図を支援するソフトウェア)には、設計図以外にも、素材や部品の種類・形状、表面の質感などさまざまな情報が盛り込まれています。設計が完了すると、そのデータを製造側に渡し、実際の加工・製造に入るのですが、その際、データのやり取りがうまくいかないケースがあるのです。

昔は、熟練の技術者であればお互いの知識や経験でフォローし合えた部分もありました。しかし、昨今はベテラン技術者が減少し、海外企業への発注が増加するなど、人間同士のコミュニケーションに頼ることができなくなってきました。設計側が設計図に込めた「意図」や「目的」、技術者同士が共有していた「感覚」や「経験値」のようなあいまいな情報もデータとして詳細に記述し、誰でも間違いなく理解でき、正しく生産プロセスに反映させることが重要になっているのです。

私たちは、こうした課題に対応するため、生産システムに必要な情報をもれなくデータに埋め込み、異なるシステム間でも問題なく情報のやり取りができる技術の開発や、プロダクトモデルデータの品質保証に関する研究を行なっています。

システム間の不具合を解消するデータ交換技術の開発

─データのやり取りを適切に行うにはどのような技術開発が求められるのでしょうか。

田中 システム間で起こる不具合の一例として、アプリケーションのバージョンや工作機械の機種による誤差の問題があります。代表的なものがNCデータ(工作機械などを制御し加工動作を指示するコード)です。NCデータは、主に金属加工に使われる工作機械(NC旋盤)を数値制御するためのコードで、最近はコンピュータにより自動加工するCNC旋盤も普及しています。

NC/CNCデータは、製造全般に関わるデジタルデータの国際規格であるISO(International Organization for Standardization:国際標準化機構)により規格化されていますが、システム依存の部分が多数残されているなど、さまざまな問題点が指摘されています。

私たちは、2018年、CNC制御言語として広く普及しているISO6983と、次世代CNC制御言語として規格化されたISO14649の間で起こる問題を解決するために、ISO14649を拡張し、複合加工機のためのCNCデータモデルを提案。これにより、同期コードがCNCによって異なる、同期の意図が明示的ではない、NCデータ内にサブプログラムの詳細情報が含まれないといった問題を解消しました(解説1)。

また、2024年には多軸工作機械の誤差による影響を最小化するためのNCデータ修正手法を提案しました。多軸工作機械は高機能な部品を加工することができるため、近年特に需要が高まっています。しかし、工具機械誤差の発生や工具変形の加工面への影響など課題がありました。本研究では、工具のデジタルツインを用いてNCデータを修正することにより加工面の誤差を最小化することを実現しています(解説2)。

システム間でのデータ交換の仕組みを確立するだけでなく、プロダクトモデルデータの信頼性向上も重要です。私たちは、データ交換時に不具合が生じないことを保証するためのデータ品質情報を交換する仕組み(Product Data Quality)や、データ変換によって生じる新たなデータが元のデータと同一であるか検証した情報を交換する仕組み(Equivalence Validation)を提案して日本初の規格として開発してきました。

日本のものづくりを支える国際標準化活動

─田中准教授は国際標準化活動に参画していますが、どのような意義があるのでしょうか。

准教授・博士(工学) 田中 文基

田中 プロダクトモデルデータの標準化はすぐに利益を生み出す活動ではありませんが、日本が積極的に参画・提案することがとても重要だと考えています。日本企業の国際競争力を高めるには自動車や精密機械など製造業の裾野を広げ、ものづくりの現場が国内にきちんと維持されていることが必要です。ものづくりの現場を熟知しているからこそ、データの作り方や扱い方がわかる。自分たちが使う技術は、自分たちが握っていなければならないのです。国際標準を策定する場に自分たちが関わり続けることは、ものづくりの未来につがなる活動だと思います。

製造全般に関わるデジタルデータの規格ではISOが代表的ですが、その中にはTC(Technical Committee:専門委員会)やSC(Sub Committee:分科委員会)などの組織が多数存在し、多種多様な分野のデジタルデータについて国際的な標準化を行なっています。私は、1993年頃からISOの標準化活動に携わっており、ISO/TC184(オートメーションシステム及びインテグレーション)/SC1(機械及び装置の制御)およびISO/TC184/SC4(産業データ)に関し、日本提案の規格開発を行ってきました。これらの業績により、令和3年度産業標準化事業表彰経済産業大臣表彰を受賞しました。

解説

解説1:ISO14649に基づく個別複合加工機適応型CNCデータモデルの提案(第2報)

次世代CNC制御言語であるISO14649は、機種間でのデータ相互運用を目指している。しかし、複合加工機は機種により機械構成が異なるため機種依存データが必要となる。本研究は、機種非依存/依存情報を分離しモデル化を行うことで、ISO14649に基づく相互運用可能なデータモデルを提案している。

図
(論文URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/pscjspe/2018S/0/2018S_695/_article/-char/ja/

解説2:多軸工作機械のデジタルツインを用いた高精度加工のための工作機械誤差の影響の最小化(第3報)

多軸工作機械及び工具のデジタルツインを用いて工作機械誤差と工具変形の加工面への影響を導出し、最小化することを目的とする研究を行った。

図
(論文URL:https://cir.nii.ac.jp/crid/1390582783486957568