language
注意事項
当サイトの中国語、韓国語ページは、機械的な自動翻訳サービスを使用しています。
翻訳結果は自動翻訳を行う翻訳システムに依存します。場合によっては、不正確または意図しない翻訳となる可能性があります。
翻訳サービスを利用した結果について、一切を保証することはできません。
翻訳サービスを利用される場合は、自動翻訳が100%正確ではないことを理解の上で利用してください。

再生可能エネルギーの導入拡大に貢献する
パワーエレクトロニクスの進化系

写真:博士(工学) 萩原 誠

システム情報科学部門  システム融合学分野
電磁工学研究室・教授

博士(工学)萩原 誠

プロフィール

2006年4月〜2015年3月、東京工業大学 大学院理工学研究科 助教。2015年4月〜2016年3月 東京工業大学 大学院理工学研究科 准教授。2016年4月〜2024年9月 東京工業大学 工学院 電気電子系 准教授。2024年10月〜2025年6月 東京科学大学 工学院 電気電子系 准教授。2025年7月〜現在、北海道大学 大学院情報科学研究院 システム情報科学部門 教授。

電気エネルギーを高速・高精度に制御する
半導体電力変換器の開発

─電磁工学研究室の主なテーマを教えてください。

萩原 高校時代から物理現象に興味があり、特に電気電子の分野は我々の日常生活で最も身近かつ必要不可欠な分野だと感じていました。そのような動機から東京工業大学(現:東京科学大学)で電気電子・情報・制御の分野を学び、以後、一貫して半導体電力変換技術であるパワーエレクトロニクスの研究に携わっています。

2025年7月に電磁工学研究室の教授として着任し、本研究室でもパワーエレクトロニクスを主な研究領域としています。北海道は風力・太陽光等の自然エネルギーの導入量が多く、特に風力エネルギーは日本一の導入量となっています。これらの電力を効率的に活用するため、半導体関連企業・研究機関・大学が集積する「北海道バレー化構想」が推進されており、最新の半導体製造工場であるラピダス株式会社の誘致をはじめ半導体関連研究のさらなる活性化が期待されています。また、寒冷な気候は近年需要が急速に高まっているAI用データセンターの設置にも適していますが、データセンターは大量の電力を消費するため、そこで用いられる半導体電力変換器の高効率化が重要な課題となります。 こうした北海道の地域特性と産業動向を踏まえ、本研究分野は再生可能エネルギーの活用拡大や次世代半導体産業の発展に大きく貢献できると考えており、産学官連携のもとで大規模プロジェクトが推進されることを期待しています。

現在、本研究室では、(1)移動体用小型・軽量直流変換器、(2)交流架線式蓄電池電車における蓄電池制御、(3)次世代パワーデバイスの駆動法・特性改善、(4)疑似慣性機能を有する電力システム用半導体電力変換機器の4つを主な研究テーマとしています。

太陽光発電や風力発電などで発生する電気エネルギーは「直流」という形態をとり、そのままの形で電力システムに送電することはできないため、半導体電力変換器を通して「交流」へと変換し電力会社へ供給されます。太陽光パネルなどからの発電電力を最大限活用するためには、仲介をする半導体電力変換器の役割が大変重要であり、適切な制御を実装する必要があります。このような制御は「最大電力追従制御(MPPT)」と呼ばれています。

また、移動体分野では近年導入が急速に進む電気自動車・燃料電池車などにも、直流を交流に変換する半導体電力変換器が必要です。これらの技術は直接目に見えるものではありませんが、人々の日常生活を支える「縁の下の力持ち」となる基盤技術なのです。

自然エネルギーや蓄電池の高効率化を実現するマルチレベル変換技術

─具体的にはどのような研究が行われているのですか。

博士(工学)萩原 誠

萩原 まず、疑似慣性機能を有する電力システム用半導体電力変換機器の研究についてご説明します。現在、日本の発電方法の多くを占めている火力や水力、原子力などの発電方法は、発電機の中の磁石を回転させて発電しています。これを「同期電源」と呼びます。例えば発電所や送電線で事故が起こり電気を送れない状態になっても、送電線でつながっている他の同期電源に「同期化力」が働き、周波数の急激な変化を防ぐことができます。

一方、太陽光や風力による発電は「インバータ電源」と呼ばれ、同期電源のような同期化力や慣性を持ちません。再生可能エネルギーを中心とした電力システムでは慣性力を相対的に減少させるという問題を引き起こし、慣性力が不足すると電力系統で事故が起きた際に周波数の変動量が大きくなり系統が不安定になります。

この問題をクリアするため、インバータの制御を工夫して発電機の慣性力を模擬する「疑似慣性変換器」という技術が取り入れられています。現在は主に配電系統用に使われ、小容量の蓄電池と擬似完成変換器のユニットを複数繋ぐことで機能させています。同期電源と同等の慣性を持たせる基幹系統用疑似慣性変換器には、大容量の蓄電池と擬似完成変換器を一つのユニットに集約させることが必要なのですが、大容量化や多数の変換器を導入すると、制御系の不安定化(干渉)という課題が出てきます。

本研究では、マルチレベル変換器という回路技術を用いたモジュラー・マルチレベル・カスケード変換器(MMCC)と呼ばれる変換器技術を適用することで、基幹系統用疑似慣性変換器の実現を目指しています(解説1)。

もう一つは、移動体用小型・軽量直流変換器に関する研究です。電気自動車や燃料電池車は既に実用化が進み、2030年代には航空機の一部電動化も検討されています。航空機の電力変換器には地上設置の変換器と比較にならないほど小型・軽量化の要求が高くなります。その結果、従来技術の延長だけでは実現は困難であると指摘されています。本研究では、マルチレベル変換技術を用いたDC-DCコンバータを開発。従来の10分の1以下の体積・重量のインダクタ(空芯インダクタ)を実現できると予想しています(解説2)。

マルチレベル変換器は、再生可能エネルギーの拡大・普及に寄与する技術だと捉え、北大だけでなく他の大学や研究機関と協力しながら研究を進めているところです。

社会貢献度の高い分野でオリジナルな研究を追求

─今後の研究計画や実用化への道筋についてどのようにお考えですか。

博士(学術) 萩原 誠

萩原 現在研究している変換器の有効性・妥当性についてはミニモデルを用いて検証しています。疑似慣性変換器については、関連する問題が顕在化するのは少なくとも10年先ではないかと考えており、その時期を目指して実用化の可能性を探っていく形になると思います。一方、移動体向けの回路方式は比較的単純なため、実際に使用したい企業などと連携して実用化を目指したいと考えています。

昨今はAIや情報系の分野が注目され、AIによって仕事がなくなるという議論もあります。そんな中でも半導体電力変換の分野は制御やハードウェア的な要素が非常に重要であり、AIに奪われない分野であるといえます。さらに、電気電子分野だけでなく、プログラミングや情報処理的な知識も必要とする複合的な学問である点が特徴であり、エネルギー問題をはじめ現代社会が直面しているさまざまな課題を解決する社会貢献度の高い分野であることが大きな魅力だと思います。

研究者としての私の信条は、「人と同じ研究はしない」「後追い研究はしない」ということです。流行を取り入れることも必要ですが、その上で「自分は何をやりたいのか」を見つけることが大切だと思います。研究者を目指す学生の皆さんも、自分だけの「オリジナルな研究」を追求することで、流行に左右されないしっかりした基盤を築いてほしいと思います。

解説

解説1:基幹系統用疑似慣性変換器の研究開発

配電系統(6.6kVレベル)に複数の疑似慣性変換器を導入する既存の試みで生じる干渉の問題に対し、巨大な疑似慣性変換器を1台準備し、一括して慣性力を供給する研究を行っている。研究室独自のマルチレベル変換器という回路技術を適用し、高圧対応化の実現を目指している。この最新の回路技術を用いることで、将来の再生可能エネルギーの割合が増えた電力系統に適用可能な変換器の開発を目指す。

図:パワーアカデミー研究助成採択式にて使用した発表資料より
図:パワーアカデミー研究助成採択式にて使用した発表資料より
図:パワーアカデミー研究助成採択式にて使用した発表資料より

解説2:直流架線式蓄電池電車用小型・軽量直流変換器の研究

直流-直流変換器(双方向チョッパ)にはインダクタと呼ばれる非常に重い部品が必要であり、現在でも1台あたり数十kgから数百kgになる場合がある。本研究ではマルチレベル電力変換技術を応用し、インダクタの小型軽量化を目指している。マルチレベル変換器は多段階で出力を調節できる技術であり、これを使用することでインダクタの小型化を実現。具体的には従来の10分の1以下の体積・重量のインダクタ(空芯インダクタ)を実現できる見込みであり、これにより移動体への搭載スペースや重量の制限が厳しくても対応可能となる。

図:前職時の研究紹介資料より
図:前職時の研究紹介資料より
図:前職時の研究紹介資料より