ナノテクノロジーが拓くエコ社会
生命人間情報科学専攻 生体機能工学講座 バイオフォトニクス研究室
修士課程2年
小竹 勇己(北海道旭川市出身、2012年度入学)
「バイオフォトニクス研究室」は、北キャンパスの電子科学研究所附属グリーンナノテクノロジー研究センターにあります。ここは、窓から牛が牧草を食べている姿を見ることができる長閑な場所にありますが、センターでは最先端の研究が繰り広げられています。当研究室では、ナノテクノロジーを駆使して光を有効に利用する化学反応場の創成を目指して研究を行っています。サイズが数10~数100 nmの金属のナノ構造体は光アンテナ効果を示し、光電場をナノメートルの領域まで局在化させ、光と物質の相互作用の確率を著しく高めることが可能になります。当研究室では、金属ナノ構造が示す光アンテナ効果を利用して、高分解能光リソグラフィー技術の開発や光エネルギー変換系の創出に関する研究を進めています。
私は、「光アンテナ搭載赤外太陽電池の開発」に関する研究を行っています。地表に到達する太陽光エネルギーの44%は、波長800 nm以上の赤外光により構成されていますが、従来の太陽電池では赤外光は光電変換に有効に利用されてきませんでした。私は、光アンテナ機能を有する金属ナノ構造体を半導体基板上に精緻に作製し、赤外光を効率的に電気エネルギーに変換する方法論を検討しています。しかし、言葉で書くのは簡単ですが、日々の研究はうまくいかないことの方が多いです。それでも、最先端の研究設備で行える実験は興味深く、日々の研究生活は刺激的です。
現在の研究室には、海外からの留学生や博士研究員が多く、常に外国語で議論が飛び交っています。まるで外国にいるような雰囲気です。研究室に分属した当初は、英会話が苦手で外国人と意思疎通ができず苦労しましたが、今では冗談を言い合えるようにまでなりました。
私は、来年度就職予定なので、現在は大学院博士前期課程の修了に向けて、修士論文を執筆している最中です。内定先は、メーカーの開発職ですので、研究の世界からは離れる予定です。しかし、研究の中で得られたものは専門知識だけではありません。うまくいかない時でもあきらめず高いモチベーションを保ち続けること、そして問題解決への道筋を立てる方法をどのように模索するかなど多くのことを学んできました。私は、これらを社会に出ても役立てたいと考えています。