価値を人に伝えること
情報理工学専攻 数理科学講座
情報認識学研究室 修士課程2年
三上 絢子 (北海道札幌市出身、2014年度入学)
私の研究室では機械学習の研究をしています。機械学習とは、我々が当たり前に行っているルールの発見、例えば「この手書き文字は『北大』と書いてある」「あの人は今『こんにちは』と挨拶した」
「雨雲が多いからもうすぐ雨が降る」等、をコンピュータに行わせようという手法です。機械学習は非常に広範に及ぶ概念で、私の研究室の過去の研究だけでも歩行者の追跡、睡眠検出、転倒検出、毒キノコの識別など様々な応用がありました。
このように、機械学習の応用の範囲は様々ですが、私自身はそういった特定の目的のための研究ではなく、どのような条件で機械学習が上手く働くのか、といった仕組みの解析を主に行っています。
もっぱら紙と鉛筆で考える数学的な問題で、上のような身近な例で例えることは中々難しく、他専攻の友人に研究内容を伝えることにいつも苦労しています。ただ、このような基礎研究に限らず、大学院の研究で「誰の目から見ても凄いとわかる」というものは殆ど無いだろうと思います。
例え話ですが、研究の成果がもしも「明らかに立派な箱」のようなものだとすれば、自分と専門分野の違う人に対しても、はい、と渡しただけで「おお、これは確かに凄い」と言ってくれるかもしれません。しかし研究はそうとは限らず、見た目にはただの「無骨な箱」や「質素な箱」かもしれません。ただ渡してもきっと価値がわかってもらえないでしょう。でも、それは実は「無骨だが丈夫な箱」「質素だが保温性の良い箱」で、ある目的の上では確かな価値を持ったものである。私が研究に対して抱いているイメージはこれです。
ただし、その価値は黙っているだけではわかってもらえず、自分できちんと説明する必要があります。私の研究室のゼミでは、自分が読んだ論文または自分自身の研究をまとめ、他の人に説明する練習を行っています。また、国内外の学会発表にも積極的であり、私も昨年函館で行われた学会に参加した他、今夏、ドイツでも発表をする予定です。こういった、自分の発見した価値をアウトプットする方法を学ぶことが、大学院では大切なのだと思います。