新しい大学院生に贈る言葉
2025年4月3日
情報科学院長 近野 敦
新入生の皆さん、入学・進学おめでとうございます。
令和7年4月、私たちの大学院情報科学院に、修士課程209名、博士後期課程31名の皆さんを迎えることになりました。
本学院には、情報科学に関する五つのコース、情報理工学コース、情報エレクトロニクスコース、生体情報工学コース、メディアネットワークコース、システム情報科学コースが配置されています。本学院で学ぶ皆さんは、所属するコースでその専門を深く学び(主専修)、他のコースで異なる分野を学ぶ(副専修)双峰型教育カリキュラムで、情報科学に関する幅広い知識を身に付けることができます。どのコースに所属しても、プロジェクトマネジメント技術を学べる実践型科目や、本学院と連携するマサチューセッツ大学アマースト校およびシドニー工科大学の教員が英語で講義する国際連携科目を履修することができます。ぜひ、このような科目を受講し、国際的な視野と実践力を身につけてください。
さらに、本学院には五つの連携分野が設置され、産業技術総合研究所、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、物質・材料研究機構(NIMS)、NTT、NTTドコモなどに所属する研究者が、本学院での講義と研究指導を行っています。このように、本学院は基礎研究から社会実装までを学べる学習・研究環境を提供します。
本日入学する皆さんには、本学院で多くの知識を身に付けてもらいたいと思います。かつて日本では詰込み教育が批判され、創造性教育の必要性が声高に叫ばれた時代がありました。創造性教育の重要性自体は間違いではありません。しかし創造性教育を行えば、知識が無くても創造が生まれるとの誤解を与えてしまいました。知識を持った人が必死に考えた時に良いアイデアが生まれるのであって、知識を持っていない人がどんなに考えても良いアイデアは生まれません。ですので、学生時代に知識を詰め込むということは必要なことだと私は思います。
いまは、「何々に関するレポートを作って」というと、生成AIが人間にも劣らない良質のレポートを作ってくれる時代になりました。「知らないことはAIに聞けばよいのだから、知識を詰め込む必要はあるのか」と皆さんは思うかもしれません。確かに細かい知識はAIに問い合わせるのが効率的です。では、AIの発達により、皆さんが勉強しなくても良い素晴らしい時代が到来したのでしょうか?
私はそうは思いません。基礎的な知識を身に付けていないと、自分が何をわかっていないのかがわかりません。いったいAIに何を聞けば良いのかがわかりません。
AIが適切に回答しても、その回答が理解できないかもしれません。AIが間違った回答をした場合は、それを鵜呑みにしてしまうかもしれません。大学院では、自分の研究を他人に説明し、理解してもらう必要があります。どんなに生成AIが素晴らしいスライドを作ってくれても、知識が無ければ、他人に理解してもらえるような説明をすることはできないでしょう。ですので、どんなにAIが発達しても、皆さんが勉強しなくても良い時代は来ないと、私は思います。
しかし、知識を身に付けた人にとっては、AIは、さらなる学習や研究を進める上で最高の道具となることでしょう。AIは皆さんの学習や研究の効率を飛躍的に高めてくれるはずです。本学院において、皆さんがAIの利点と欠点を良く理解し、学習や研究に上手に利用することを期待しています。
本日、入学する皆さんは、是非、本学院で最先端の情報科学を学び、その基礎を基に新しい理論や技術を生み出してください。そして本学院の課程を修了した後は、皆さんが本学で学んだことを社会の発展に役立て、私の想像を超える未来を創造してくれることを、今から楽しみにしています。
また、大学や大学院は学問や研究を行う場であると同時に、人と人とが出会う場でもあります。先輩や同級生、後輩との出会い、共同研究先の企業の方との出会い、学会での他機関研究者との出会い、それらの一つ一つの出会いを大事にしてください。そのような出会いが、皆さんの生涯の財産となります。
皆さんが本学院において、学問と研究の楽しさを学び、多くの人と出会い、自身の可能性を広げる素晴らしい経験ができることを強く願い、私からのお祝いの言葉とさせていただきます。
